公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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HPCと量子コンピュータのハイブリッド化

2024-07-19 08:14:00 | 経済指標(製造業)

理研で現在進められているのが、同研究機関の最先端の研究プラットフォーム群(富岳、叡、大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」など)を有機的に連携させ、研究分野を超えた、革新的な研究プラットフォームを創り出す挑戦的なプロジェクトのTRIP。その中の研究開発課題の1つとして、R-CCSとRQCが取り組んでいるのが、HPCと量子コンピュータのハイブリッド化により計算可能領域の拡張を可能とするシステムを目指した、富岳と叡を連携させるハイブリッドプラットフォーム基盤(量子HPC連携プラットフォーム)の構築である。

量子コンピュータは、すべてにおいてHPCに代表される既存のコンピュータを上回るイメージがあるが、実はそうではない。量子コンピュータは、組み合わせ最適化問題のような、HPCでは解を得るまでに膨大な時間を要してしまう計算には強い一方で、HPCが得意とする厳密な解が要求されるような問題や、同じアルゴリズムを繰り返した場合に、まったく同一の解を出力する必要のある再現性が求められる問題などには向いていない。つまり、HPCと量子コンピュータはそれぞれ得手不得手が異なるのである。

HPCにおける重要な技術の1つに、異なる種類のプロセッサを組み合わせて構築したコンピュータシステム上で演算を行う「ヘテロジニアス・コンピューティング」がある。代表的なものに、汎用CPUと特定の計算に能力を発揮する演算加速機構であるGPUの組み合わせが知られている。CPUから計算の一部をGPUに送って実行させることを「オフロード」というが、量子HPC連携計算においては、HPCでは解くのが困難であったり、時間の要する計算を量子コンピュータにオフロードすることで、プログラム全体の実行時間の短縮が期待されている。


量子コンピュータによるオフロードによって、どの程度の問題が解決されているかについては、現時点で完全に解決されているとは言い難い状況です。量子コンピュータはまだ実用化段階にあり、実世界の問題に対してもっと広範な適用を見据えて研究が進められています。
ただし、いくつかの先端的な成果や応用例があります。例えば、以下のような分野で進展が見られています:
  1. 量子化学計算: 化学反応の理解や新しい物質の開発において、量子コンピュータが従来の計算手法よりも効率的に解を出す可能性が示されています。IBMやGoogleなどの企業や、大学の研究チームがこの分野で活発な研究を行っています。
  2. 最適化問題: 交通ルートの最適化やスケジュール最適化など、多岐にわたる最適化問題において、量子アルゴリズムが従来の手法よりも高速で解を見つける可能性があります。D-Wave Systemsなどの企業が量子アニーリングを用いた最適化問題の解決に取り組んでいます。
  3. 暗号解読: 量子コンピュータの特性を利用して、従来の暗号化手法を破る可能性があります。この分野では、安全な通信手段の確保が課題とされていますが、同時に量子コンピュータの能力を活用することで新たなセキュリティ手法の開発も進められています。
これらの分野において、量子コンピュータが従来の計算手法よりも優れた性能を発揮する可能性が示されていますが、実用化段階においてはまだ多くの課題が残されています。将来的には、量子コンピュータの技術がさらに成熟し、広範な問題に対する解決が実現されることが期待されています。


日本においても量子コンピュータに関する研究が進められており、複数の研究機関や企業が関与しています。具体的には以下のような主要な取り組みがあります:
  1. 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 (QST): QSTは日本の量子科学技術の研究開発を担う機関であり、量子コンピュータの基礎研究や応用研究を行っています。特に、量子ビットの実装技術や量子アルゴリズムの開発に力を入れています。
  2. 東京大学 量子情報科学研究センター: 東京大学は量子情報科学研究センターを中心に、量子コンピュータに関する基礎的な研究を進めています。量子アルゴリズムの開発や、量子ビットの物理的実現に関する研究が行われています。
  3. 産業技術総合研究所 (AIST): AISTは産業界との連携を重視し、量子コンピューティング技術の実用化に向けた研究を行っています。量子ビットの信頼性向上や、量子アルゴリズムを応用した実世界問題への適用研究が進められています。
  4. 企業研究所: 日本の大手企業も量子コンピューティングに注力しており、例えば富士通やNEC、日立などが量子コンピュータの研究開発に取り組んでいます。これらの企業は、量子ビットの製造技術や量子アルゴリズムの商業化を目指しています。
これらの研究機関や企業が、日本における量子コンピュータの研究と発展に重要な役割を果たしています。量子コンピューティング技術の進展が、将来的には科学や産業分野において大きな革新をもたらすことが期待されています。

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