年の瀬となりふたたび時間論を掲載する。
ループ量子重力理論*によれば、時空の量子化が矛盾なく成立する。一般相対性理論とも量子力学とも異なる「飛び飛びの時空」という新たな時空モデルが提案されている。このようにこれからの時空は論理が先行する。
*ループ量子重力理論が予言する時空のネットワークでは、「スピン」と呼ばれる素粒子の回転の方向が重要な意味をもちます。そこで、このネットワークはしばしば「スピンネットワーク」とも呼ばれます。ロヴェッリは時空を量子化すると、空間はプランク長に、時間はプランク時間になると主張します。また時間とは、あらかじめ決められた特別な何かではない。時間は方向づけられてなどいないし、「現在」もなければ、「過去」も「未来」もない。だとするなら、あるのはただ、観測されたときに決まる事象どうしの関係だけということになる。ブルーバックス 『時間は逆戻りするのか』
時間が『ある』というのは、何か。一般的にはあらゆる要素が時間に変換でき、かつあらゆる変換を経た要素元がモトの集合に含まれるということ。時間を表す演算操作について対称群を形成しているということ。
敢えてロヴェッリのループ量子重力理論を私の好きなライプニッツに寄せて哲学的に表現するならば、『時間とは事象時刻の集合』ということになる。変化に依存して時間を定義できないことはライプニッツの思弁から明らかだった。
すなわち、永遠なものには原因はないにしても、理由は理解されねばならない。その理由とは、変わらないものにおいては必然性または本質自体である。ところが、変化するものの系列においては、この系列が永遠なものだとはじめから仮定するなら、やがて明らかにされるように、傾向の優位ということ自体が生じてくる。その場合、理由は〔反対が(矛盾を)ふくむような絶対的な、形而上学的な必然性によって〕強制することなく、(一定の)傾向をもつだけのことになる。こういうことから、世界の永遠性を仮定すると、事物の超世界的な究極理由、つまり神を認めざるをえなくなる。「ライプニッツ モナドロジー」
ライプニッツが生きた元禄の頃までは思弁が科学に対して優位だった。
20世紀の物理学は時間の運動定義から熱力学定義を経て時空定義へと時の捉え方を変えたが、それは人類の世界認識の深化の結果だったが、思弁哲学による世界を失った。
(以下オリジナル)私は時空の生成は論理の成立から始まると考える。故に時間が「ある」という保証は全く時空を措定する論理の完全性(対をなす適用極限)に依存すると考える。(以上オリジナル)なぜそのように考えるかと言うと、認識主体と世界との関係を人間だけに限定しない哲学《思考を観測する論理思考》が新しいモナド論においてライプニッツの単子論の現代的再構成が必要とされていると考えるからだ。これはこれまで哲学で解決できなかった無限後退問題や神を含む目的論的宇宙による哲学補完問題を離散化数学によって見通しよく解決できそうであるという理由による。
この場合の目的論は次の三番目のことである。
目的には次の三段階があります。下層から順に、
①原始的目的 個別の意図からなる目的 主観的
②構成的目的 手段との組合せからなる目的 客観的
③存在論的目的 目的が存在及び生成と一致する目的 概念的 目的=存在
さらに位置と時間の情報の離散化ばかりでなく従属変数の超離散化を進めて行くならば宇宙内の自発構造をその必然発生から記述できるかもしれない。
哲学といっても、私の扱いたい哲学は科学である。それらは思考の一種、演算である。しかしこの宇宙にかつて人間以外の思考・演算があったかどうかという探検ほど重要であるにもかかわらず科学的に無視されている分野はない。部分と区別作用は一対のものである。この思弁にしっかりついてきてもらいたい。演算により誘導される時間は世界の部分であるが、演算と対にする場合にのみ成り立つ。故に一般に部分と区別作用は一対のもの、物理的にこれを言い換えると空間と運動、エントロピー、相対論は一対のものである。しかしその根源的始まりは区別作用だけが残る区別のない世界、演算が運動、熱拡散、質量に先立つ始原世界。現在最も有望な宇宙モデル、ブレーン理論は高次元空間では、ソリトンはいくつも存在しています。そこからブレーンがいくつも生まれています。ブレーン(部分)とソリトン(区別作用)はここでも一対のものです。高次元ではソリトンだけが残る。根源的宇宙の始まりは区別作用だけが残る区別のない世界(岡山流思弁では非存在の連結と表現する)であることと符合する。あくまでも数式の世界。
宇宙に比べれば一瞬に等しい人の一生。人生の主観的厚みというのは変換された虚構《一種類の絶対時間》ではなくこの変換の多様性である。目的が一段目にとどまる人間同士の場合、心理的関係の数だけ変換できる時間が『ある』。
ロシアの報告だから確証はないが、
量子コンピュータにおける基本情報単位を「キュービット」といい、0、1、「その重ね合わせ」の3つの状態を表現する。実験では進化プログラムが立ち上がると、キュービットの変化パターンはどんどん複雑になり、規則正しく寄せ集めたビリヤードの玉が散乱するように乱雑になる
ところが、実験ではその状態が修正され、カオスから秩序へと「逆方向」にキュービットが巻き戻り、元の状態になった。それは、テーブル上に散乱したビリヤードの玉が、完全な計算にしたがって完璧な秩序をもつ正三角形に戻るのと同じである。すなわち時間が逆転したのだ。
という現象の報告は時間を熱力学で説明した変換が量子現象のレベルで説明できないという結果を示している。新しい関係の想定が必要ということだろう。時間に方向が『ある』と明示できるほどに絶対的時間のないことの傍証になる。全世界に追試を求める。ロシアの追試が成功した時には事象時刻の集合という私の時間論も支持されることになるだろう。