背景
制御性T細胞(Treg)は免疫抑制機能を持つT細胞で、Tregを誘導することで自己免疫疾患や炎症性疾患を治療するという試みは世界的に興味を集めています。一方で、Tregを人工的に誘導するための手法はいまだ不十分な点が多く、様々な課題も残されています。特に病気の原因となる活性化T細胞からTregを誘導するのが難しいことや、炎症性疾患の患者で増加している炎症性サイトカイン (サイトカインは細胞から分泌される生理活性タンパク質)の存在下でTregが誘導されにくいことは、Treg誘導による治療の有効性を高めていく上で解決すべき課題です。
本研究ではその課題を克服し得る方法を見出すために、Tregを高効率に誘導する化合物のスクリーニングを試みました。スクリーニングによって課題の解決に必要な作用を持つ化合物を取得することができ、さらに、その機序解析によって新たなTreg誘導制御メカニズムが解明されました。
これからの化合物だから、すぐに薬になるわけではない。
<論文タイトルと著者>
タイトル:
Conversion of antigen-specific effector/memory T cells into Foxp3-expressing Treg cells by inhibition of CDK8/19
(CDK8/19阻害による抗原特異的エフェクターメモリーT細胞のFoxp3発現Treg細胞への変換)
著者:
Masahiko Akamatsu†, Norihisa Mikami†, Naganari Ohkura, Ryoji Kawakami, Yohko Kitagawa, Atsushi Sugimoto, Keiji Hirota, Naoto Nakamura, Satoru Ujihara, Toshio Kurosaki, Hisao Hamaguchi, Hironori Harada, Guliang Xia, Yoshiaki Morita, Ichiro Aramori, Shuh Narumiya, Shimon Sakaguchi
†These authors contributed equally to this work.
掲載誌:
Science Immunology