2年前「異常なし」の8人が甲状腺がん~福島県全体で117人
投稿者: ourplanet 投稿日時: 火, 02/10/2015 - 22:22
東京電力福島第1原発事故に伴い福島県内で実施している「県民健康調査」の検討委員会が12日、福島市で開催された。事故当時18才未満だった子ども38万人を対象に実施している甲状腺検査で計117人の子どもが甲状腺がんの「悪性・悪性疑い」と診断され、そのうち87人が甲状腺がんと確定した。また、1巡目の検査では「異常なし」とされた子ども8人が、2巡目で新たに甲状腺がん悪性・悪性疑いと診断され、うち1人が手術を終え、甲状腺がんと確定した。
1巡目は悪性・悪性疑い110人、2巡目は悪性・悪性疑い8人
2011年から2013年度まで実施された1巡目の「先行検査」では、昨年末までの約30万人が受診し、「悪性・悪性疑い」と診断された子どもは110人。そのうち87人が手術を行い、術後の組織検査の結果、1人を除く86人が甲状腺がんであると確定した。86人のうち、86人が乳頭がん、3人が低分化がんで、一番小さい子どもは事故当時6才。穿刺細胞診の診断時は8才だった。男女比は1:2。経過観察をしながら、残り23人も順次手術を行う見通しだ。2巡目で甲状腺がんが確定したのは初めてとなる。
2014年から2015年度に実施している2巡目の本格検査では、昨年末までに約10万人が受診。結果が判明した7万5000人のうち、穿刺細胞診によって8人が「悪性・悪性疑い」と診断された。そのうち1人は手術を終え、術後の組織検査にて乳頭がんであると確定した。2巡目の診断で、悪性・悪性疑いと診断された8人のうち、1巡目でA1判定だった子どもは5人、A2判定だった子は3人だった。腫瘍径が17.3ミリの子もいたが、1巡目の先行検査ではA1判定だったという。検査を担当する福島県立医大の鈴木眞一教授は、今回の8人に関し、1巡目と2巡目の検査の間隔は最大2年と説明した。甲状腺がんと確定した子どもの年齢や性別は明かさなかった。
平成23~25年度実施対象市町村細胞診結果(先行検査)
検査結果判明人数:297,046 人(受診者の 99.5%)のうち
・B、C判定(要2次検査):2,251 人(0.8%)
・悪性ないし悪性疑い:110人
・手術実施済み:87人
・手術後の病理診断結果:良性結節1人、乳頭癌83人、低分化癌3人
・性別:男性:女性:38 人:72 人
・平均年齢 17.2±2.7 歳 (8-21 歳)、震災当時 14.8±2.6 歳(6-18 歳)
・平均腫瘍径 14.0±7.3 mm(5.1-40.5 mm)
平成 26 年度実施対象市町村細胞診結果
検査結果判明人数:75,311 人(受診者の71.0%)のうち
・悪性ないし悪性疑い 8 人
・手術実施済み:1 人
・手術後の病理診断結果:乳頭癌 1 人
・男性:女性 4 人:4 人
・平均年齢 15.6±3.4 歳(10-20 歳)、震災当時 12.1±3.4 歳(6-17 歳) ・平均腫瘍径 10.2±3.9 mm(6.0-17.3 mm)
先行検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101599.pdf
本格検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101600.pdf
同委員会では、この日、2巡目の検査で、1名が甲状腺がんと確定したことについて、被曝影響かどうかについての議論は全く行われなかった。終了後の記者会見で、星北斗座長は「原発事故との因果関係はないとは言えないが、あたらな患者を見つかったことで、これまでの評価を変えるものではない」「内部被曝との関係を追及して行く必要がある」と回答した。
なお、今回の検討委員会では、県民健康調査のスクリーング検査以外で、甲状腺がんが見つかっている可能性を示唆する発言があった。県の健康調査課が作成した「県民声」の中に「県民健康調査以外の検査で甲状腺がんになっても調査の統計に含まれていないのはおかしい」との意見が掲載されていたことに対し、清水修二副座長が事実かどうかを確認。福島県立医大県民健康調査センターの安村誠司副センター長が、現在のデータには含まれていないと回答。また、記者会見の中で、鈴木眞一教授は「患者の診断情報なので回答できない。検討委員会で開示するかは決めることだ」との認識を示した。
線量評価にかかる年数は?
線量評価を実施し、疫学的な結論を得るまでにはどの程度の年月が必要なのか。記者会見の中で長崎大学の高村昇教授は、「チェルノブイリにおける、ヨウ素のよる甲状腺内部被曝線量評価は、事故後10年後からずっと検討が続けられ、信頼できる線量評価が出たのはそんな昔ではない」として、20年以上の年月がかかったことを説明した。その上で、チェルノブイリにおいては、必ずしも線量と甲状腺がんの関係だけではなく、事故前に生まれた子どもと事故後に生まれた子どもの比較や、発症した子どもの年齢などから、事故後10年程度で、国連機関が小児甲状腺がんの事故影響について認めたとした上で、「様々なデータが集まることが重要だ」と述べた。
なお線量評価をめぐっては、ヒロシマ・ナガサキの原爆症に関する外部被曝線量の推計モデルが確立したのは、原爆投下から30年以上経った1986年。更に改良が加えられ、現在のモデルとなったのは2002年である。しかもそのモデルをめぐって、原爆棟から70年になる今も、原爆症認定をめぐって裁判が続いている。
先行検査と本格検査の合計
・対象人数:約38万人
・悪性ないし悪性疑い 118 人
・手術実施済み:88 人
・手術後の病理診断結果:良性結節1人、乳頭癌84人、低分化癌3人
先行検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101599.pdf
本格検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101600.pdf
岡山大学津田敏秀教授の分析
今回、公表されたデータをもとに、疫学を専門とする岡山大学の津田敏秀教授が福島県を9つの地域に分けて甲状腺がん悪性の子どもの割合を分析。内部比較は、相馬地方を対照地域に設定。外部比較は平均有病期間4年に設定して比較した。津田教授は、人口密度が福島県より高い県外の症例把握を急ぐべきだとコメントしている。
参考資料
※UNSCEAR2013報告書のデータと福島県民健康調査データをもとにOurPlanetTVが作成
原発事故に伴う健康診断に関するご意見を募集します
◎福島県民の方:福島県民健康調査に関しての検査結果に関する不安、悩み、お困りなこと、お考え、県、国、検討委員会への要望、OurPlanetTVに取材して欲しいこと、ご自身の家族やご自身の体調に関するご心配など募集します。
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投稿者: ourplanet 投稿日時: 火, 02/10/2015 - 22:22
東京電力福島第1原発事故に伴い福島県内で実施している「県民健康調査」の検討委員会が12日、福島市で開催された。事故当時18才未満だった子ども38万人を対象に実施している甲状腺検査で計117人の子どもが甲状腺がんの「悪性・悪性疑い」と診断され、そのうち87人が甲状腺がんと確定した。また、1巡目の検査では「異常なし」とされた子ども8人が、2巡目で新たに甲状腺がん悪性・悪性疑いと診断され、うち1人が手術を終え、甲状腺がんと確定した。
1巡目は悪性・悪性疑い110人、2巡目は悪性・悪性疑い8人
2011年から2013年度まで実施された1巡目の「先行検査」では、昨年末までの約30万人が受診し、「悪性・悪性疑い」と診断された子どもは110人。そのうち87人が手術を行い、術後の組織検査の結果、1人を除く86人が甲状腺がんであると確定した。86人のうち、86人が乳頭がん、3人が低分化がんで、一番小さい子どもは事故当時6才。穿刺細胞診の診断時は8才だった。男女比は1:2。経過観察をしながら、残り23人も順次手術を行う見通しだ。2巡目で甲状腺がんが確定したのは初めてとなる。
2014年から2015年度に実施している2巡目の本格検査では、昨年末までに約10万人が受診。結果が判明した7万5000人のうち、穿刺細胞診によって8人が「悪性・悪性疑い」と診断された。そのうち1人は手術を終え、術後の組織検査にて乳頭がんであると確定した。2巡目の診断で、悪性・悪性疑いと診断された8人のうち、1巡目でA1判定だった子どもは5人、A2判定だった子は3人だった。腫瘍径が17.3ミリの子もいたが、1巡目の先行検査ではA1判定だったという。検査を担当する福島県立医大の鈴木眞一教授は、今回の8人に関し、1巡目と2巡目の検査の間隔は最大2年と説明した。甲状腺がんと確定した子どもの年齢や性別は明かさなかった。
平成23~25年度実施対象市町村細胞診結果(先行検査)
検査結果判明人数:297,046 人(受診者の 99.5%)のうち
・B、C判定(要2次検査):2,251 人(0.8%)
・悪性ないし悪性疑い:110人
・手術実施済み:87人
・手術後の病理診断結果:良性結節1人、乳頭癌83人、低分化癌3人
・性別:男性:女性:38 人:72 人
・平均年齢 17.2±2.7 歳 (8-21 歳)、震災当時 14.8±2.6 歳(6-18 歳)
・平均腫瘍径 14.0±7.3 mm(5.1-40.5 mm)
平成 26 年度実施対象市町村細胞診結果
検査結果判明人数:75,311 人(受診者の71.0%)のうち
・悪性ないし悪性疑い 8 人
・手術実施済み:1 人
・手術後の病理診断結果:乳頭癌 1 人
・男性:女性 4 人:4 人
・平均年齢 15.6±3.4 歳(10-20 歳)、震災当時 12.1±3.4 歳(6-17 歳) ・平均腫瘍径 10.2±3.9 mm(6.0-17.3 mm)
先行検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101599.pdf
本格検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101600.pdf
同委員会では、この日、2巡目の検査で、1名が甲状腺がんと確定したことについて、被曝影響かどうかについての議論は全く行われなかった。終了後の記者会見で、星北斗座長は「原発事故との因果関係はないとは言えないが、あたらな患者を見つかったことで、これまでの評価を変えるものではない」「内部被曝との関係を追及して行く必要がある」と回答した。
なお、今回の検討委員会では、県民健康調査のスクリーング検査以外で、甲状腺がんが見つかっている可能性を示唆する発言があった。県の健康調査課が作成した「県民声」の中に「県民健康調査以外の検査で甲状腺がんになっても調査の統計に含まれていないのはおかしい」との意見が掲載されていたことに対し、清水修二副座長が事実かどうかを確認。福島県立医大県民健康調査センターの安村誠司副センター長が、現在のデータには含まれていないと回答。また、記者会見の中で、鈴木眞一教授は「患者の診断情報なので回答できない。検討委員会で開示するかは決めることだ」との認識を示した。
線量評価にかかる年数は?
線量評価を実施し、疫学的な結論を得るまでにはどの程度の年月が必要なのか。記者会見の中で長崎大学の高村昇教授は、「チェルノブイリにおける、ヨウ素のよる甲状腺内部被曝線量評価は、事故後10年後からずっと検討が続けられ、信頼できる線量評価が出たのはそんな昔ではない」として、20年以上の年月がかかったことを説明した。その上で、チェルノブイリにおいては、必ずしも線量と甲状腺がんの関係だけではなく、事故前に生まれた子どもと事故後に生まれた子どもの比較や、発症した子どもの年齢などから、事故後10年程度で、国連機関が小児甲状腺がんの事故影響について認めたとした上で、「様々なデータが集まることが重要だ」と述べた。
なお線量評価をめぐっては、ヒロシマ・ナガサキの原爆症に関する外部被曝線量の推計モデルが確立したのは、原爆投下から30年以上経った1986年。更に改良が加えられ、現在のモデルとなったのは2002年である。しかもそのモデルをめぐって、原爆棟から70年になる今も、原爆症認定をめぐって裁判が続いている。
先行検査と本格検査の合計
・対象人数:約38万人
・悪性ないし悪性疑い 118 人
・手術実施済み:88 人
・手術後の病理診断結果:良性結節1人、乳頭癌84人、低分化癌3人
先行検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101599.pdf
本格検査資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/101600.pdf
岡山大学津田敏秀教授の分析
今回、公表されたデータをもとに、疫学を専門とする岡山大学の津田敏秀教授が福島県を9つの地域に分けて甲状腺がん悪性の子どもの割合を分析。内部比較は、相馬地方を対照地域に設定。外部比較は平均有病期間4年に設定して比較した。津田教授は、人口密度が福島県より高い県外の症例把握を急ぐべきだとコメントしている。
参考資料
※UNSCEAR2013報告書のデータと福島県民健康調査データをもとにOurPlanetTVが作成
原発事故に伴う健康診断に関するご意見を募集します
◎福島県民の方:福島県民健康調査に関しての検査結果に関する不安、悩み、お困りなこと、お考え、県、国、検討委員会への要望、OurPlanetTVに取材して欲しいこと、ご自身の家族やご自身の体調に関するご心配など募集します。
◎福島県外の方:健診に関してのお考えやご要望、OurPlanetTVに取材して欲しいこと、ご自身の家族やご自身の体調に関するご心配など募集します。
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