
キャンプ場で目覚めたとある休日の朝.テントが朝日で乾くまで,まだ時間はたくさんある.まだ薄暗いうちからオートバイに跨って,キャンプ場からほど近くにある布引の滝を目指すことにした.雲の垂れ下がった山の中に滝はある.

布引の滝へは,熊野川紀和線という三重県の一般県道から,特に名称のない舗装林道を進んで行く.霧の立ち込めた険しい山道を登って行かなければならない.オートバイは夜露によって,スクリーンやヘッドライトは結露したままだ.湿った雰囲気の早朝の山は,タイヤが滑って怖いけれども,静かで幻想的なところがいい.

そして,大きな柱状節理が至るところにある.この辺りは三重県の熊野市紀和町という所で,少し山を登っただけで,このようなダイナミックな自然が随所に見受けられる.まさに紀伊半島,という気がした.

険しい山道をオートバイのエンジンを唸らせながら進んで暫くすると,道路を隔てた対岸に白く,そして落差の大きい滝―布引の滝―が現われた.日本の滝百選にもノミネートされている名瀑だ.そして,滝付近一帯は「切らずの森」として指定されており,自然保護の対象になっているそうだ.

布引の滝は四段の滝から構成されているそうだが,道路からはカメラをズームさせてみても,三段までしか確認することができなかった.それにしても,各段にきれいな滝壺があって,神秘的な感じがした.

布引の滝はその名前通り,白い布巾を垂らしたような一筋の滝だ.あまり他に類を見ない,飛沫も立てずに静かに流れ落ちる瀑布だった.そして,ここは修験道の場所でもあったという.そう言われてみると,仙人や山伏が出てきそうな雰囲気があった.
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