尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

無意味

2007年05月02日 23時38分08秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「無意味」


生きることが
無意味だって?

君はとうとう
あまりに大きすぎる意味に
捕まったんだよ
空に捕まった
鳥だよ

飛ぶんだよ
それだけが
意味だよ



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マチスのように

2007年05月02日 23時29分39秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「マチスのように」


ちゃんと
あなたの褐色の裸を
見ておこう
マチスのように

ひつこく 
あなたの青銅色の裸を
こねておこう
ロダンのように

上からも下からも
右からも左からも
裏からも
ピカソのように


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パン屋の夕焼け

2007年05月02日 23時24分44秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「パン屋の夕焼け」


帰宅の客を
目当てにしているのだろう
かまどから出たばかりのパンが
南太平洋のように
照明の行き届いた
ショーウインドウに整列すると
パン屋さんだけの
小麦色の夕焼けが来るのだ

腰をかがめ
選んでいるお客の顔まで
丸いパンにそっくり
おいしく焼けている


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

枯葉

2007年05月02日 23時16分23秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「枯葉」


枯葉
降る音
枯葉
踏む音
枯葉
風に
運ばれる音
シャララ

枯葉は
ゆっくり
燃えた
木々の
小骨

冷たい石畳を
這いながら
明るく
軽く
楽しく
小骨達の
自分を
弔う歌
シャララ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2007年05月02日 23時10分12秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「影」



今日 あなたへ
伝わらなかった一言が
夜のわたしを
悲しくしている
 
今日 あなたへ
伝えたくなかった一言が
夜のわたしを
厳しくしている

明日 あなたへ
伝えたい一言が
夜のわたしを
熱くしている

だからわたしの体は
たまらなく独り
ほら
闇の中でも
こんなにくっきり
黙っている影


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PI,PO,PA

2007年05月02日 23時05分11秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集

「PI,PO,PA」


太陽の黒点のせいかもしれない
最近の電波環境は悪いな

しかし僕らは
一そうの宇宙観測艇だ
打ちあがったからには
この虚空に
高感度のアンテナを
せいいっぱい拡げよう

宇宙の全質量を測ってみよう
(この体が押しつぶされはしまいか)
宇宙の膨張を測ってみよう
(この心がパンクしまいか)

pi,po,pa
今、ここで測りえたすべてを
君に送信しよう

pi,po,pa‥‥
応答はなくても送信続けよう
僕らは勇敢な宇宙観測艇であり続けよう

今、ここに受信しております
今、ここから発信しております
必ず、君を見つけ出します
僕の位置をお知らせください
最後の最後まで、通信をあきらめません

Pi,Po,Pa,pi,po,pa

……




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目蓋(まぶた)

2007年05月02日 22時50分02秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「目蓋」


冬の空からバス停の列へ
たくさんの風がおりてきて
僕の耳元で
灰色の唇を尖らせて
びょうびょうと
証言してゆきました

愛しているとは
愛してしまったということ
愛してしまった、とは
生きている限り愛してしまうこと
つまり
この世には二種類の人間しか
いない、ということ
一生愛してしまう人間と
一生愛さない人間と

風が去ると
妙な沈黙のなかに
バスを待つ列は置かれました
白い目蓋をした雪が
次から次へと
降ってきました
そうです 
雪は
瞳ではありません
やさしく閉ざされた
目蓋です
彼女たちは
もうなにも言いませんでした

あの人を
もう愛していないとは
はじめっから愛していなかったということ
たった一度も愛さなかったということ

僕は自分で言って
自分で泣きました
その夜
世界が白い目蓋になりました


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

それから?

2007年05月02日 00時48分43秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「それから」


それから?

うん、あの人は
壊れろ!
と私に言ったよ
生まれて始めてみる
こわい目だった

それから?

うん
わたし花火になって
はじけてやったよ
ポン、ポン
ポ、ポン、ポンって
そしたらあの人
おれの名を叫べ!
と言ったよ
もう人間の目ではなかった

それから?

うん、わたし
ばらけながら
あの人の名前を呼んであげた
あなただってそうしたわ
あの人は一瞬
赤ん坊のように笑ってから―

いいな

ひとつ息を吸うと
神のように目を閉じたの

それから?

後は、つまらないよ

それから、それから?

あの人は
落ちてきたんだ
土偶のように









  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「!」

2007年05月02日 00時32分35秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「!」 


通勤バスを待つ列に
朝日は注ぎ
人々は
微風にそよぐ
麦穂のように
揺らめいている

めいめいの頭頂から
マンガの吹き出しのような
空白に暗号が
吹き出しては消えている

バスが見えると
一斉に


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

めくる男

2007年05月02日 00時12分12秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
 「めくる男」


一枚の布を
ぱっとめくって
ご婦人のお尻が現れば
彼は痴漢です

一枚の布を
ぱっとめくって
鳩が現れれば
彼は奇術師です

一枚の布を
ぱっとめくって
象が現れれば
彼は魔術師です

一枚の布を
ぱっとめくって
地球が現れれば
彼は神様か
悪魔か
どちらかです


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ケーキの意味

2007年05月02日 00時03分48秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集

「ケーキの意味」


ケーキの意味ってなんだろう
値段だろうか
メニューだろうか
レシピだろうか

甘いか
酸っぱいかだろう
もっと食べたいか
もう食べたくないかだろう

明日は
ケーキじゃないだろう
昨日も
ケーキじゃないだろう

今日だけが
ケーキだよ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする