一本の花というものが
わからないとき
かならず
自分というものがわからない
くねくね蛇になって
地球に巻きついている
すべての花というものが
わかるとき
自分というものが
地球という木を
留守にしているとき
愛というものが
人の歩むべき到達点と見なされ
しかもしばしば
不可能と結論してしまうところの
私たち共有のシニシズムは
愛がこの二一世紀において
人の到達する目標ではなくて
私たちを出発へと強いる
パワーのそのもであるからだ
二一世紀の私たちに
愛が無いのではない
私たちは
愛したくないのだ
この場に及んで
出発を拒んでいるのだ
昨日
この道を
行っては帰り
今日
この道を
行っては帰り
明日
この道を
行っては帰り
毎日という道が
振り子のような
往復運動に見えるが
その行程の見かけに
ほとほと疲れ果てていると
ふいに風が起こり
雲のようなもの
星のようなもの
良い幽霊のようなものと
擦れ違うので
ほんとうは
夢で見たことのある
あの山の峠を越え
空を駈け登ってゆく
飛行機雲のような
一本道に見えてきた
この道は
いつも新しい