尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

2008年11月22日 23時17分10秒 | フォトポエム

今年初めての雪が降ると
私たちは湧いてくるその真っ白な源を
私たちの思想の及ばない怖ろしいところを
私たちが一秒も生きていけないところを
あこがれて見あげてしまう

地球そっくりな
私たちそれぞれの顔をしながら
見あげてしまう

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2008年11月22日 22時48分24秒 | フォトポエム

こんなに青く
磨かれているのに
不思議だね
森や街や僕たちが
映っていないなんて

だから「空」って書くんだよ
磨きすぎると
こうなるんだ
ほら 一切れ
雲が生まれたよ

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2008年11月21日 21時32分05秒 | 五行歌・自由律俳句
よく見ろ
空がたわんでいる
全体
ふりしぼった
青い弓のようだ

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すれ違い

2008年11月21日 21時27分47秒 | 詩の習作
犬と擦れ違った
振りかえると
犬もふり返った
そのとき
犬の中に人がいた

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葦の地方

2008年11月21日 01時04分34秒 | 詩の習作
あなたは
いつ死んでもよいと
思っているのでしょう
と呼びかける声がした

京都の古本屋さんで全集を買い
小野十三郎の『大阪』『風景詩抄』『大海辺』
を読み返していたのだ

小野の「葦」とはなにか
近代西洋に陵辱される
母としての「日本」である

小野のことをアナーキストだと
今なお詩壇は思いたがっているが
正確な意味でリアリストであった小野は
その身振りで詩壇を渡るよすがとしたのではなかろうか
そのことを見抜いた秋山清は
彼のことをニヒリストと呼んだ
彼の反戦反権力思想を疑うことはできないが
天皇と浪花節と富士山のきらいな
変わり者の愛国者ではなかったか

 私はかぎりなくこの荒漠を愛し
 水の中や大気の中に
 それとなくゐる
 ふしぎな妖精のやうなものを見た。
 日本の重工業はそれでも五十年は―
  (いゐんですよ。
   お父さん。つづけて下さい。)
 五十年、少なくとも五十年はね。お前。
 おくれてゐたんだよ。    (『大海辺』より「夕暮れの芦原で」)

小野さんの本音、つまり多くの日本人の本音であったものを
ついに探り当てた気がした
小野さんの詩ではじめて泣けた

あなたは
いつ死んでもよいと
思っているのでしょう
と呼びかける声がした

顔をあげてもなお
葦の地方であった
首をぐるぐるまわした
五十年、少なくとも五十年はね。お前。
おくれてゐたんだよ。
と妻と呼ぶと恥ずかしいひとにおどけてみた
分厚い本から顔をあげては
首をぐるぐるまわしている 
顔をあげてもあげても
葦の地方である 

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すきま

2008年11月20日 22時49分55秒 | 詩の習作
あなたは
あなたとあなたである
あなたのすきまは
見えない
見えないすきまに
わたしのすきまを
そっと入れる

あなたは
泣いているのか
笑っているのか
まったく分からない
すきまだから

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水槽

2008年11月19日 21時27分26秒 | 詩の習作
私は水槽である
決してしゃべらない魚が一匹
生きていく私のあたふたを
じっと見て尾ひれを揺らす
生きている私のアブクのような
お喋りに胸びれでバランスをとっている
言葉を覚える前のお魚である

彼は年をとらない
いつか
私のすべてが
お魚になることを
私も彼も知っている

ときどき
ピチッと
路上で跳ねてみる

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飛行機雲

2008年11月18日 23時59分16秒 | 詩の習作
僕の中で
一生だまりこむ覚悟のもの
季節の変わり目に
感じ
空を見あげては
むしろ無にあこがれるもの
倦怠と
憂鬱の青を
眉間を谷にして駈けのぼるもの

思いださないこと
夢をみないこと

パイロットのいなくなった
飛行機雲

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2008年11月17日 21時03分03秒 | 詩の習作


自分という影のなかに
しゃがんだり立ったりすることが
自分というものの逃れられない運命であると
信じていた

あなたが
光源である太陽と
影だと思っているものの間に立ったとき
不意に揺らめくものがあった
ついにわかった
影ではなくて
自分は
自分に火傷している
炎であると

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脊椎動物

2008年11月16日 13時01分13秒 | 詩の習作
空から海から森から平原から砂漠から村から都市から
彼女の音が聞こえる
彼の音が聞こえる

歯と歯
骨と骨を打ち鳴らし
火花を飛ばしながら
魚なら魚
鳥なら鳥
獣なら獣
爬虫類なら爬虫類
それぞれの種の隊列を組んで
壮絶な波状の前進の
音が聞こえる

無骨な骨は
ふくよかな肉で巻かれ
さらに美しい皮膚で装われてはいる
しかし
リズムは二拍子4拍子六拍子
二の倍数

空から海から森から平原から砂漠から村から都市から
彼女の音が聞こえる
彼の音が聞こえる
二の倍数で
彼女の音が聞こえる
彼の音が聞こえる

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隠れキリシタン

2008年11月15日 22時56分01秒 | 詩の習作
彼女は
磨いたばかりの
歯磨粉の匂いをさせながら
僕に言った

私は信仰を失った人間だけれど
死ぬとは
もう祈らないでよいことでしょう

息は
体の中を吹きまわる
風である

その時
僕は言葉ではなく
彼女の荒々しい
風をきいていた
風が何を言っているか
分からなかった

僕と彼女の歯が
まるで骸骨同士のように
カチカチ鳴った

30年後である
信仰とは
彼女のように
もう祈らないでよいことだと
僕は思うようになった
カチカチと
鳴らないけれど

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縞馬(しまうま)

2008年11月15日 22時09分51秒 | 詩の習作
一日と一日の間には
隙間がある
一行と一行の間に
隙間があるように

だから
それから
だがしかし
そして
それゆえに
やはり
ところが
つまるところ

毎日毎日
一行一行
越えていく
いや
越えたつもりでいる

それゆえ
見えるとしたら
やはり
人間の心のからだは
つまるところ
縞馬である

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「ジャパン」

2008年11月14日 02時17分35秒 | フォト日記

「ジャパン」

金魚があわ粒を
ひとつ吐くように
人形の娘は銀色の唇で
ぽつり
言いました

ジャパンは暗いわね

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ウインドウ

2008年11月14日 02時01分29秒 | フォトポエム

「ウィンドウ」

私と商品が問題なのではない
私と商品の間にあるガラスが問題なのである
私とあなたの間にあるガラスが問題なのである
あなたの住んでいるガラスにキスをするのだ

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だまっている水(決定稿)

2008年11月13日 22時57分23秒 | 詩の習作
目を覚ますと
夜明け前
カヌーの速度で
息をしている

釣り糸を垂れ
言葉を探したりは
しない

父という名の
カヌーである
父というBODYの
カヌーである

その腕を櫂(かい)にして
しかし
なんという
終わりのない航海
なんという
滑らかな水海

あなたは
何度も
星のような
美しい瞳を開き
何度も
彗星のような
涙を曳いたので
息子はあなたの瞼を
何度も
閉じなければならなかった

うん
しょっぱい


それからは

何を見ても
すべてが
顔だったよ
すべてが
夜明け前だったよ

花も花火も女も文字も

父という
カヌーの速度で
時の
水を切ってゆく

目を覚ますと
うん
だまっていいる

息をしている

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