前回、ル形動詞の派生をさまざまに列挙して大まかな方向性を探ってきていきましたが、今回はそれをさらに具体的に詰めていきたいと思います。
「ググる」のようなル形動詞の派生をワイルドカード的な入力で捌くのには通常の動詞変化の他にも助動詞との連接で語尾が色々に変化していくものが多くありそれらについても考慮しなくてはなりません。
しかしそれらすべての変化形を書き尽くすのは困難ですので、以下に分類します動詞の活用形態をもって変化語尾に対応していきたいと思います。
説明原理としては当初は国文法に倣った未然・連用・終止・連体・仮定・命令の6つの活用形をワイルドカードに当てていましたが今回より日本語が母国語でない学習者向けに普及しているいわゆる日本語教育において使われる動詞の活用形をもとに定義を一新していきたいと思う次第でありますのでよろしくお願いします。
<各活用形を[○R][×r]キーでワイルドカード入力するときのストローク> ※[]内は別口入力
現在形 ググる ぐぐ[○R]
過去形 ググった ぐぐった ※両[R]キー伴わず、素のべた入力
テ形 ググって ぐぐっ[て]
否定形 ググらない ぐぐ[×r]ない
仮定形 ググれば ぐぐ[×r]ば
命令形 ググれ ぐぐ[×r] (終端)
可能形 ググれる ぐぐれ[○R] ※可能打ち消し「ぐぐれない」過去形「ぐぐれた」マス形「ぐぐれます」はべた入力
受身形 ググられる(尊敬・自発も)ぐぐられ[○R] ※受身打ち消し「ぐぐられない」過去形「ぐぐられた」マス形「ぐぐられます」はべた入力
使役形 ググらせる ぐぐ[×r]せる
使役受身形 ググらされる ぐぐ[×r]される・ぐぐ[×r]させられる
意思形 ググろう ぐぐ[×r]う
マス形 ググります ぐぐ[×r]ます
希望形 ググりたい ぐぐ[×r]たい
…以上がワイルドカード入力のあらましです。
初期の定義から色々と変更がありますがまず大前提になるのが
☆基本形の語尾「る」は[○R]ひとつで固定対応する、というのがあります。
まずはこれで入力受け付け兼任関係がひとつはっきりして、ユーザーは残る[×r]の方に注意を絞ることができて分かりやすくなったかと思います。
次にこの中では過去形:ググった と 受身形の過去:ググられた そして 可能形の過去:ググれた が要注意なケースで、これらの場合は語中・語尾に[×r]の入る余地がない形であるので(これから説明します)語末までそのままクラスタキーのべた入力で派生に対応します。
どういうことかというと、可能・受身・尊敬・自発 の「れる」「られる」の最初の一文字「れ」「ら」はル形動詞解釈の適用外として組み込まず結びの「る」のところでやっとワイルドカードを使うまで温存(?)するためで、
これはいわゆる未然形(否定形)からの接続「ググらない」を[ぐぐ[×r]ない]の入力からワイルドカード解釈しようとするとググらない/ググれない-両方の可能性がバッティングしてしまうため簡単のために「れる」「られる」派生の[r]成分は思い切って入力の範疇から外してしまおうということで非対称に方針を定めました。
これによって「ぐぐ[×r]ない」の解釈は「ググらない」に一意に解釈できるようになりユーザーは明確な使い分けを意識しながら入力していくことになります。
「れる」「られる」の語尾派生活用について細かく見ていくと
・「れる」の6活用形(未然・連用・終止・連体・仮定・命令)の各活用形(れ・れ・れる・れる・れれ・れろ/れよ)においては終止/連体形の「れる」の結びの「る」のところで[r]入力を受けて(ぐぐれ[×r])、仮定形では「れれ」の最後のほうの「れ」のところで、命令形では「れろ」の末尾「ろ」のところでそれぞれ[×r]入力を受けます。しかし未然/連用形の活用形の先頭部分「れ」は[r]入力は適用されません。
・「られる」6活用形の各活用形(られ・られ・られる・られる・られれ・られろ/られよ)においては終止/連体形の「られる」の結びの「る」のところで[r]入力を受けつけます。仮定形では「られれ」の最後のほうの「れ」のところで、命令形では「られろ」の末尾「ろ」のところでそれぞれ[×r]入力を受けます。同じく未然/連用形の活用形の先頭部分「られ」は[r]入力は適用されません。語末の結び(終止/連体)か掛かり(仮定)か終端部(命令)だけです。
同じように、過去の助動詞「た」の場合の活用形は特殊型で4活用形(未然・終止・連体・仮定)※(連用・命令形はナシ)がありますが各活用形(たろ・た・た・たら)においては[r]入力成分は組み込まずにすべての活用形はべた入力文字列からのものと定め、過去形「た」周りに関しては[r]入力なしで終始完結させていきます。
活用形によって[×r]入力を受けつかなかったケースでは最後の語末まで通してクラスタキーのべた入力によって文字列を構成していきます。
前置きが長くなりましたがこのような理屈により先項あげました過去形:ググった と 受身形の過去:ググられた そして 可能形の過去:ググれた のそれぞれ「た」「たり」「たら」で終わる派生は[×r]の出てくる幕がなくそのまま字面通りべた入力の文字列で入力していきます。
ここでの説明ではまるで先祖返りかのように国文法の6活用形がまた出てきてしまいましたがこの部分の説明だけはこれを使わざるを得なかったのでどうぞご容赦ください。
これら[r]成分を伴わないべた文字列の語尾派生ではマーカーとなる[r]入力がないためコンピュータのル形動詞の判断材料にはならず通常の変換プロセスとして処理します。
この場合「ル形動詞」の表記区別を察知することができないのでユーザーの意図にそぐわず「ル形動詞」表記…語幹の部分はカタカナで語尾部分をひらがなに書き分けるプロセス…が機能しないケースも考えられます。
そこのところは過去の変換データで[r]入力を伴うことのできた入力文字列があればその学習結果を反映させるという機能を提案したいと思います。
そのような機能によって過去形がらみの語尾に変化していた時も適宜対応していける仕組みがあれば多少は入力時の不備を和らげられるのではないでしょうか。ともかくアイデア頼みではありますがそういう解決法を念頭に置いています。
また打ち消し(否定)・推量(意思)・希望・使役・丁寧(マス)の助動詞の場合はそういった影響はなく、「ない」「う」「たい」「せる」「ます」の直前のr成分の段階で[×r]を入力受け付けするのでこのような区別は起こりません。
使役受身形の「ググらせる」「ググらさせられる」の形の時も語尾中の「せ」「させ」の使役成分の直前に[×r]を受け付けて最後の結びの「る」の部分での[r]入力は煩雑ですので省略可とすることにします。
さらにこれらの組み合わせでできる込み入ったモダリティ-「ググらせたくなくなる」などのような場合は最初のほうのぐぐらせ-の部分で使役成分が現れるのでそこで[×r]入力を挟んでその他の派生語尾の部分では簡単のためにこれ以上の[r]成分の付加はせず語尾を流します。
ここまでワイルドカード入力について説明してきましたが、[×r]入力を受け付けさまざまに解釈し自然な文字列に整形していくプロセスが実際どう動いていくのかに焦点を当てて掘り下げていきたいと思います。
ワイルドカード[×r]は不定語素「ら」「り」「れ」「ろ」を後続のフレーズを見ながら適宜適当なものを自動解釈して出力していくものでしたが、入力の実際の場面では解釈が複数にもとれて判断の分かれるケースも出てきます。
例えば「ググろう(終端)」の場合ぐぐ[×r]うの当該部分は「ろ」と簡単に解釈できるのでそれほど問題にはなりません。
これが「ググろうかと」のようにググ[×r]う[か][と]のように「う」の後にすぐ別口入力パーツが続いているときは[×r]部分を「ろ」と判断することができますが、「ググりうさぎ」「ググり歌」のように「う」のあとも一連に語句が続くようであれば[×r]部を「り」と解釈して後続フレーズとの関連性を反映させる柔軟性が求められます。
要は「ググりうさぎ」「ググり牛」のように動詞連用形+名詞の形で接続しているタイプの語であるとコンピュータが認識して「ぐぐろうさぎ」「ぐぐろうし」には容易にはさせない(あっても候補順位は低い)ようにする工夫です。
このほかにも「ぐぐりうらめしい」「ぐぐりうろたえて」のように+形容詞だったり連用形中止用法あるいは複合動詞的な接続もあるかもしれませんがこれらも「ろ」よりも「り」と解釈した方が自然だ、との一定の法則性をヒントに処理していくことになるでしょう。
前回記事中で列挙した「ここにググれり」や「御ググりあれ」などの例も適切な解釈が行われればうまい具合にワイルドカード出力が得られるかと思います。
このように、語彙的な情報や文法的な情報を照会することによってワイルドカードを適切に解釈して未変換文字列(まだかな漢字変換をしていない)の段階で[×r]の不定性が解消されて変換への準備段階が整っているようにさせることが理想の形であります。
ペンタクラスタキーボードでは別口入力のおかげで一回の変換文字列の量が長くなり、細切れ変換を指向していかないとの狙いがありますが、今回のこの機構で[×r]を含む不定文字列を比較的長い入力文から周辺情報のヒントをより揃えたところで変換に臨めるといったような構図がうまく出来上がれば良いなと思います。
最後にも問題はまだ残っておりますのでやや駆け足ではありますがお付き合いください。
重要な事例としてワイルドカードの解釈が文脈をみても一意に決められない以下のような例があります。
ググれかと
ググるかと
ググりかと
ググれとは
ググるとは
ググりとは
…これらの例の場合は「る」の場合は[○R]キーをあてればよいので問題ないですが「ググれ」「ググり」が文脈上でも判定困難だと思われるので何とかこれの解決策を考えなければいけません。
その結果いろいろ考えたのですが変換候補表示時に[×r]を連続して打鍵することによってトグル式に「り」「れ」(あるいは「ら」「ろ」)を切り替えていき細かく訂正していけるようにするというのが暫定的な答えということになりました。
すでに[×r]を打ち込んでしまった後に以降の文章を書き連ねているところでワイルドカードの違和感に気づいてあとから修正をする…というケースがほとんどでしょうから、
インターフェイス的には≪≫キーを使って[でにをは]パーツに挟まれたチャンクを飛び石状に移動させていって選択し、問題の[×r]箇所のところまでカーソルを移動させて修正するのではなく、そのチャンクにフォーカス範囲が選択された状態でそのまま[×r]をポンと打鍵していけば文字列中のワイルドカード語素にだけ編集作用を及ぼす形になればいいと思います。
これに似た考え方に以前すでに提案した別口入力「な」のカタカナ変換時は例えば「互角な」を「ゴカクな」にしたいときに「ごかくな」チャンクに選択範囲を持って行ったところで[カナ]キーを押せば活用語尾の「な」の部分には影響を及ぼさずに語幹の「ゴカク」だけカタカナに変換したりするという仕組みがあったり、
接頭語・接尾語を含む語句で「かくしん的」というような表記にしたいときに一度「革新的/確信的/核心的」を属性ハで変換して接頭語/接尾語の概念を経由させたのちにそこのフォーカスで[かな]キーを押してひらがなの「かくしん」に変換して「的」の部分は漢字で保たれるといった[属性ハによる無干渉型変換]のシステムとも符合するような考え方をいきわたらせるというわけです。
対象選択範囲を切り替えるのが多少面倒かもしれませんが厳格に適用範囲を指定後に派生変換をすることの延長上に、文字列一括変換後の候補選択時にオプショナルアクションとして[×r]追加入力で選べるといった措置も考えられるかもしれません。
ただこれはユーザーインターフェイスの段になってからの話なのでコンセプトを提唱しているだけの今の段階で具体的なところまで決めることは難しいかもしれませんが、今後の青写真ということで皆さんに参考程度ご提示できれば…と思います。
以上、長々と書いてみましたがよくよく考えてみればこれら[r]入力はそもそも若者ことば:例えば「タゲられて」「アピって」「ウケる」「スゴんで」「ザンギョる」などの語幹カタカナ、語尾ひらがなというスラング的表記のニュアンス感を簡単に入力できるようにするためのもので、これが通常の動詞一般の変換の用においては一切かかわりのないものであるということを一応念押ししたいと思います。
いわばコンセプトの本幹をなす基本的事項であるということはなくてあくまでしゃれっ気の一環としてこういうのもどうですか?…などといった性質の提案なのですが、思いのほかル形動詞の派生が仔細にわたったためここまでのボリュームになってしまいました。
とはいえ、文体によっては全く使われないであろうこんなニッチな要求もある意味ではぜいたくな悩みであるとも捉えることもできるので、そういった道楽めいた諸儀は多少ややこしい方が逸脱を浮き立たす意味で正しい姿なのかもしれません。
[r]入力まわりに余りにも注力しすぎてしまったせいか、通常の動詞入力においても[○R][×r]入力をしてしまうのが成り行き上一般化してしまうかもしれないという懸念もありますがここは道楽者の身の弁えとして変換候補の第一巡目には本来の目的であるル形動詞の表記に合ったものを上位に据えてあくまでも頑なに通常動詞に主客逆転することの無いよう節度を保っていければよいかと思います。
もちろんユーザー自らが訂正・選択した変換の学習履歴については忠実に反映させて「来てる」がいちいち「キテる」に誤変換してしまわないように癖をある程度チューニングできるようにする配慮は当然ながら必要ではあります。
「ググる」のようなル形動詞の派生をワイルドカード的な入力で捌くのには通常の動詞変化の他にも助動詞との連接で語尾が色々に変化していくものが多くありそれらについても考慮しなくてはなりません。
しかしそれらすべての変化形を書き尽くすのは困難ですので、以下に分類します動詞の活用形態をもって変化語尾に対応していきたいと思います。
説明原理としては当初は国文法に倣った未然・連用・終止・連体・仮定・命令の6つの活用形をワイルドカードに当てていましたが今回より日本語が母国語でない学習者向けに普及しているいわゆる日本語教育において使われる動詞の活用形をもとに定義を一新していきたいと思う次第でありますのでよろしくお願いします。
<各活用形を[○R][×r]キーでワイルドカード入力するときのストローク> ※[]内は別口入力
現在形 ググる ぐぐ[○R]
過去形 ググった ぐぐった ※両[R]キー伴わず、素のべた入力
テ形 ググって ぐぐっ[て]
否定形 ググらない ぐぐ[×r]ない
仮定形 ググれば ぐぐ[×r]ば
命令形 ググれ ぐぐ[×r] (終端)
可能形 ググれる ぐぐれ[○R] ※可能打ち消し「ぐぐれない」過去形「ぐぐれた」マス形「ぐぐれます」はべた入力
受身形 ググられる(尊敬・自発も)ぐぐられ[○R] ※受身打ち消し「ぐぐられない」過去形「ぐぐられた」マス形「ぐぐられます」はべた入力
使役形 ググらせる ぐぐ[×r]せる
使役受身形 ググらされる ぐぐ[×r]される・ぐぐ[×r]させられる
意思形 ググろう ぐぐ[×r]う
マス形 ググります ぐぐ[×r]ます
希望形 ググりたい ぐぐ[×r]たい
…以上がワイルドカード入力のあらましです。
初期の定義から色々と変更がありますがまず大前提になるのが
☆基本形の語尾「る」は[○R]ひとつで固定対応する、というのがあります。
まずはこれで入力受け付け兼任関係がひとつはっきりして、ユーザーは残る[×r]の方に注意を絞ることができて分かりやすくなったかと思います。
次にこの中では過去形:ググった と 受身形の過去:ググられた そして 可能形の過去:ググれた が要注意なケースで、これらの場合は語中・語尾に[×r]の入る余地がない形であるので(これから説明します)語末までそのままクラスタキーのべた入力で派生に対応します。
どういうことかというと、可能・受身・尊敬・自発 の「れる」「られる」の最初の一文字「れ」「ら」はル形動詞解釈の適用外として組み込まず結びの「る」のところでやっとワイルドカードを使うまで温存(?)するためで、
これはいわゆる未然形(否定形)からの接続「ググらない」を[ぐぐ[×r]ない]の入力からワイルドカード解釈しようとするとググらない/ググれない-両方の可能性がバッティングしてしまうため簡単のために「れる」「られる」派生の[r]成分は思い切って入力の範疇から外してしまおうということで非対称に方針を定めました。
これによって「ぐぐ[×r]ない」の解釈は「ググらない」に一意に解釈できるようになりユーザーは明確な使い分けを意識しながら入力していくことになります。
「れる」「られる」の語尾派生活用について細かく見ていくと
・「れる」の6活用形(未然・連用・終止・連体・仮定・命令)の各活用形(れ・れ・れる・れる・れれ・れろ/れよ)においては終止/連体形の「れる」の結びの「る」のところで[r]入力を受けて(ぐぐれ[×r])、仮定形では「れれ」の最後のほうの「れ」のところで、命令形では「れろ」の末尾「ろ」のところでそれぞれ[×r]入力を受けます。しかし未然/連用形の活用形の先頭部分「れ」は[r]入力は適用されません。
・「られる」6活用形の各活用形(られ・られ・られる・られる・られれ・られろ/られよ)においては終止/連体形の「られる」の結びの「る」のところで[r]入力を受けつけます。仮定形では「られれ」の最後のほうの「れ」のところで、命令形では「られろ」の末尾「ろ」のところでそれぞれ[×r]入力を受けます。同じく未然/連用形の活用形の先頭部分「られ」は[r]入力は適用されません。語末の結び(終止/連体)か掛かり(仮定)か終端部(命令)だけです。
同じように、過去の助動詞「た」の場合の活用形は特殊型で4活用形(未然・終止・連体・仮定)※(連用・命令形はナシ)がありますが各活用形(たろ・た・た・たら)においては[r]入力成分は組み込まずにすべての活用形はべた入力文字列からのものと定め、過去形「た」周りに関しては[r]入力なしで終始完結させていきます。
活用形によって[×r]入力を受けつかなかったケースでは最後の語末まで通してクラスタキーのべた入力によって文字列を構成していきます。
前置きが長くなりましたがこのような理屈により先項あげました過去形:ググった と 受身形の過去:ググられた そして 可能形の過去:ググれた のそれぞれ「た」「たり」「たら」で終わる派生は[×r]の出てくる幕がなくそのまま字面通りべた入力の文字列で入力していきます。
ここでの説明ではまるで先祖返りかのように国文法の6活用形がまた出てきてしまいましたがこの部分の説明だけはこれを使わざるを得なかったのでどうぞご容赦ください。
これら[r]成分を伴わないべた文字列の語尾派生ではマーカーとなる[r]入力がないためコンピュータのル形動詞の判断材料にはならず通常の変換プロセスとして処理します。
この場合「ル形動詞」の表記区別を察知することができないのでユーザーの意図にそぐわず「ル形動詞」表記…語幹の部分はカタカナで語尾部分をひらがなに書き分けるプロセス…が機能しないケースも考えられます。
そこのところは過去の変換データで[r]入力を伴うことのできた入力文字列があればその学習結果を反映させるという機能を提案したいと思います。
そのような機能によって過去形がらみの語尾に変化していた時も適宜対応していける仕組みがあれば多少は入力時の不備を和らげられるのではないでしょうか。ともかくアイデア頼みではありますがそういう解決法を念頭に置いています。
また打ち消し(否定)・推量(意思)・希望・使役・丁寧(マス)の助動詞の場合はそういった影響はなく、「ない」「う」「たい」「せる」「ます」の直前のr成分の段階で[×r]を入力受け付けするのでこのような区別は起こりません。
使役受身形の「ググらせる」「ググらさせられる」の形の時も語尾中の「せ」「させ」の使役成分の直前に[×r]を受け付けて最後の結びの「る」の部分での[r]入力は煩雑ですので省略可とすることにします。
さらにこれらの組み合わせでできる込み入ったモダリティ-「ググらせたくなくなる」などのような場合は最初のほうのぐぐらせ-の部分で使役成分が現れるのでそこで[×r]入力を挟んでその他の派生語尾の部分では簡単のためにこれ以上の[r]成分の付加はせず語尾を流します。
ここまでワイルドカード入力について説明してきましたが、[×r]入力を受け付けさまざまに解釈し自然な文字列に整形していくプロセスが実際どう動いていくのかに焦点を当てて掘り下げていきたいと思います。
ワイルドカード[×r]は不定語素「ら」「り」「れ」「ろ」を後続のフレーズを見ながら適宜適当なものを自動解釈して出力していくものでしたが、入力の実際の場面では解釈が複数にもとれて判断の分かれるケースも出てきます。
例えば「ググろう(終端)」の場合ぐぐ[×r]うの当該部分は「ろ」と簡単に解釈できるのでそれほど問題にはなりません。
これが「ググろうかと」のようにググ[×r]う[か][と]のように「う」の後にすぐ別口入力パーツが続いているときは[×r]部分を「ろ」と判断することができますが、「ググりうさぎ」「ググり歌」のように「う」のあとも一連に語句が続くようであれば[×r]部を「り」と解釈して後続フレーズとの関連性を反映させる柔軟性が求められます。
要は「ググりうさぎ」「ググり牛」のように動詞連用形+名詞の形で接続しているタイプの語であるとコンピュータが認識して「ぐぐろうさぎ」「ぐぐろうし」には容易にはさせない(あっても候補順位は低い)ようにする工夫です。
このほかにも「ぐぐりうらめしい」「ぐぐりうろたえて」のように+形容詞だったり連用形中止用法あるいは複合動詞的な接続もあるかもしれませんがこれらも「ろ」よりも「り」と解釈した方が自然だ、との一定の法則性をヒントに処理していくことになるでしょう。
前回記事中で列挙した「ここにググれり」や「御ググりあれ」などの例も適切な解釈が行われればうまい具合にワイルドカード出力が得られるかと思います。
このように、語彙的な情報や文法的な情報を照会することによってワイルドカードを適切に解釈して未変換文字列(まだかな漢字変換をしていない)の段階で[×r]の不定性が解消されて変換への準備段階が整っているようにさせることが理想の形であります。
ペンタクラスタキーボードでは別口入力のおかげで一回の変換文字列の量が長くなり、細切れ変換を指向していかないとの狙いがありますが、今回のこの機構で[×r]を含む不定文字列を比較的長い入力文から周辺情報のヒントをより揃えたところで変換に臨めるといったような構図がうまく出来上がれば良いなと思います。
最後にも問題はまだ残っておりますのでやや駆け足ではありますがお付き合いください。
重要な事例としてワイルドカードの解釈が文脈をみても一意に決められない以下のような例があります。
ググれかと
ググるかと
ググりかと
ググれとは
ググるとは
ググりとは
…これらの例の場合は「る」の場合は[○R]キーをあてればよいので問題ないですが「ググれ」「ググり」が文脈上でも判定困難だと思われるので何とかこれの解決策を考えなければいけません。
その結果いろいろ考えたのですが変換候補表示時に[×r]を連続して打鍵することによってトグル式に「り」「れ」(あるいは「ら」「ろ」)を切り替えていき細かく訂正していけるようにするというのが暫定的な答えということになりました。
すでに[×r]を打ち込んでしまった後に以降の文章を書き連ねているところでワイルドカードの違和感に気づいてあとから修正をする…というケースがほとんどでしょうから、
インターフェイス的には≪≫キーを使って[でにをは]パーツに挟まれたチャンクを飛び石状に移動させていって選択し、問題の[×r]箇所のところまでカーソルを移動させて修正するのではなく、そのチャンクにフォーカス範囲が選択された状態でそのまま[×r]をポンと打鍵していけば文字列中のワイルドカード語素にだけ編集作用を及ぼす形になればいいと思います。
これに似た考え方に以前すでに提案した別口入力「な」のカタカナ変換時は例えば「互角な」を「ゴカクな」にしたいときに「ごかくな」チャンクに選択範囲を持って行ったところで[カナ]キーを押せば活用語尾の「な」の部分には影響を及ぼさずに語幹の「ゴカク」だけカタカナに変換したりするという仕組みがあったり、
接頭語・接尾語を含む語句で「かくしん的」というような表記にしたいときに一度「革新的/確信的/核心的」を属性ハで変換して接頭語/接尾語の概念を経由させたのちにそこのフォーカスで[かな]キーを押してひらがなの「かくしん」に変換して「的」の部分は漢字で保たれるといった[属性ハによる無干渉型変換]のシステムとも符合するような考え方をいきわたらせるというわけです。
対象選択範囲を切り替えるのが多少面倒かもしれませんが厳格に適用範囲を指定後に派生変換をすることの延長上に、文字列一括変換後の候補選択時にオプショナルアクションとして[×r]追加入力で選べるといった措置も考えられるかもしれません。
ただこれはユーザーインターフェイスの段になってからの話なのでコンセプトを提唱しているだけの今の段階で具体的なところまで決めることは難しいかもしれませんが、今後の青写真ということで皆さんに参考程度ご提示できれば…と思います。
以上、長々と書いてみましたがよくよく考えてみればこれら[r]入力はそもそも若者ことば:例えば「タゲられて」「アピって」「ウケる」「スゴんで」「ザンギョる」などの語幹カタカナ、語尾ひらがなというスラング的表記のニュアンス感を簡単に入力できるようにするためのもので、これが通常の動詞一般の変換の用においては一切かかわりのないものであるということを一応念押ししたいと思います。
いわばコンセプトの本幹をなす基本的事項であるということはなくてあくまでしゃれっ気の一環としてこういうのもどうですか?…などといった性質の提案なのですが、思いのほかル形動詞の派生が仔細にわたったためここまでのボリュームになってしまいました。
とはいえ、文体によっては全く使われないであろうこんなニッチな要求もある意味ではぜいたくな悩みであるとも捉えることもできるので、そういった道楽めいた諸儀は多少ややこしい方が逸脱を浮き立たす意味で正しい姿なのかもしれません。
[r]入力まわりに余りにも注力しすぎてしまったせいか、通常の動詞入力においても[○R][×r]入力をしてしまうのが成り行き上一般化してしまうかもしれないという懸念もありますがここは道楽者の身の弁えとして変換候補の第一巡目には本来の目的であるル形動詞の表記に合ったものを上位に据えてあくまでも頑なに通常動詞に主客逆転することの無いよう節度を保っていければよいかと思います。
もちろんユーザー自らが訂正・選択した変換の学習履歴については忠実に反映させて「来てる」がいちいち「キテる」に誤変換してしまわないように癖をある程度チューニングできるようにする配慮は当然ながら必要ではあります。