「フォースと共にあらんことを」の名フレーズも際立つ映画スターウォーズシリーズも遂に完結を迎えることになりましたが、この「フォース」という言葉の使い方が実に面白い。
フォースは額面通りに受け取るならば意味は「力」とか「強さ」でありますが、ここからエッセンスを利かせてジェダイや主要なキャラクターが発現する超能力として新たに意味づけされた固有の語としてもまた確立され、フィクションならではの面白い造語ですね。
このような一般語から固有語に昇華した言葉の例をいろいろ探してみたのですが、アニメ「けものフレンズ」で使われた「フレンズ」という言葉も本来の「友達」という一般概念から特殊化されて
擬人化されたアニマルガール、または「君って○○の得意なフレンズなんだね!」みたいに「その類の人」という固有の背景を持った語に主軸化しています。
あとは適用範囲に入るかどうかちょっと自信がないのですが皆川亮二のマンガ作品「ARMS」における金属生命体「ARMS」や「僕のヒーローアカデミア」に出てくる「ヴィラン連合」(ヴィランは文字通り"悪役"の意味)などもその類のものかもしれません。
これらは何らかの比喩には間違いはないのですがカテゴライズがよくわからないので仮に『偉力喩』とでも名付けておきます。
「永田町に激震が走る」こちらも有名な比喩ですが永田町自体が揺れているのではなく永田町=国会が紛糾しているさまを表現したレトリックであり単に地名をあらわしているのではない、隣接性と背景代表性の引き受けの構造をもつ「換喩」(メトニミー)と呼ばれる手法です。
にぎやかしの偽客「サクラを雇う」こちらのほうは桜がパッと咲いてサッと散ることに掛けたものということなので転義と類似性を纏った隠喩(メタファー)の一種ではないでしょうか。江戸時代ごろから使われていた慣用表現ですね。
これらは先程のフォースやフレンズと性質の似た観点ではあるかと思いますが、隣接や類似ともまた違った、ありふれた語に対してより上位の背景強化を担わせている点で偉力喩には特筆すべきものがあるかと思います。
面白い比喩はまだまだ…こんなのもあります。
「立派なギャランドゥをお持ちで」これは男性の下腹部の体毛をワイルドセクシーに言い表した言葉ですが比喩的に面白い点はと言えばもともとギャランドゥは曲名だったことを考えると換喩にしてはカテゴリの跳躍のインパクトがより強い…この一言に尽きるかと思います。
こちらも先述の例に倣って呼称するとすれば『見立て喩』とでも言いますか、湧き出るイメージ喚起力も巧みなこの表現はタイトル作詞こそもんたよしのり氏であるものの、体毛の濃いさまをあらわす表現として定着させていったのはオールナイトニッポンでの松任谷由実(ユーミン)が起源となっているのは有名な話であります。
これと似たようなものでお笑い番組「日曜芸人」からの一コマで「俺元日にディシジョンしてきた」(オードリー若林)という確信犯的に曲解した『誤読喩』というのもあります。(ちょい下ネタですいません)
もちろんディシジョンは「決定・決断」の意のビジネス用語ですがこれを門外漢のお笑い芸人が訳知り顔でニヤつきながら誤読する…という趣向です。比喩は言葉巧みなお笑い芸人の手にかかると予想外の使われ方まで飛び出してくるものですからその可能性に逆に感心してしまいます。
下ネタついでにもう一つ例を出すと「俺の股間のロドリゲス…」というのもよくある下世話な卑語かと思いきやこれは独立して『股間喩』というカテゴリを新たに作っても良いほど特殊な構造をもった比喩といってもいいかもしれません。
そのココロはズバリ「身体性の二重構造を利用した比喩」という着眼点です。股間は単に一部分なのかあるいは身体の主体そしてその源泉でもあるのか、隣接と一体の狭間にある不思議な存在としての効果。この構造は股間だけが持つユニークな二重性であります。
股間のマグナムとか股間のやじろべえとかだけではなくなんなら「俺の股間のデオキシリボ核酸が黙っちゃいないぜ」みたいなことももちろん可能でありながらそこに収まる言葉は何でも良いというのではなくやはり股間の比喩に足るなんらかのシンボル性を帯びたものだけが選ばれます。
換言すればそこに入る言葉には「何らかの人格性が宿る」という稀有な言語現象が潜んでいると思うのです。悪乗りしているつもりはなく至って真面目に力説したい比喩表現であります。
さて話は変わって昨今のIT通信社会が花開く時代において度々聞くようになってきた奇妙なフレーズ、「ギガが減る」…こちらについても違和感の元は何なのか異論各論あるかもしれませんが
当ブログなりに言葉の機能と語彙の地平からのまなざしで腑に落ちる顛末を読み解いていこうかと思います。
よく言われるのはギガは計量単位ではなくて、「単位の接頭語」なのでそこが変なのでは?という指摘です。
しかし私たちは「3キロ太った」みたいに「単位の接頭語=キロ」を当たり前のように使っています。なのでこれを覆す根本説明にはたどり着けそうもありません。まだ定着途上なので時間が経てば不自然さを感じなくなる、という言い訳も可能だからです。
もっとも「匹が揃う」「専を紐解く」「だらけが激しい」「ぶりが長い」「越しが近い」みたいな表現はちょっとあやしいですし、
「か細い」を念頭に置いて「か」が僅かすぎるよ
「御仏」を念頭に置いて「み」が尊すぎるよ…みたいなものはマザーグースの言葉遊びでもあるまいしあまり常用すると面喰ってしまうようなパラノイア的な色彩がにじみ出てきてしまいます。
要するに本来「そこに着目して文法展開する類の語ではない」成分をわざわざ言っている違和感があるのでしょう。
当記事ではここまで比喩をテーマに話を進めてきたのですが、ひょっとするとこれは比喩ではなく「短縮表現」を使った物言いであることに気づきました。おそらく、でありますが。
一昔前まではギガというのはゲームソフトのメディア容量(メガ時代からの延長)やHDDストレージ容量・メモリの容量であるとかのことを言い習わしてきた表現で、そのプロセスは増設・増量とという右肩上がりの積み上げともに歩んできていました。
そこへきてスマホが爆発的に普及して目下の悩みがモバイルの従量課金にとって代わるようになると「ギガ」を指す文脈が「増えるもの」から「減るもの」へと突然様変わりしてしまったギャップが生まれてきているまさに途上にあるところに私たちは立っているのです。
今ではauのデジラアプリのように残データ容量:残り何ギガかを確認できるアプリを活用していますし、コンビニでは(減った)データ容量をチャージできるデータカードが購入できるようになっています。
そこのところをひとくちに説明しようとするときに便利な言葉として我々はその背景をいちいち説明するのを端折って「ギガが減る」で済ませているのです。
これは「残量が減少していくところの通信料の…何ギガバイトのギガという接頭語の…いろいろ説明するのは面倒だからざっくりとそのギガを解釈してもらうとして…」のギガであり、もちろんこの文面の文字数をカウント的に縮約する意味での数的短縮でもありますが
文字数だけでなく先程話したギャップの共通認識を言外で背景理解しているとの前提を織り込んだ文脈的縮約も兼ねている…私たちが代数や方程式で何かわからないものをXとおいてとりあえず話を進める…例えるならそんなシンボル操作が含まれているハイコンテキストな到達点として「ギガが減る」についに行きついたのだと言えるでしょう。
ここまで無駄にあれこれ書き連ねてしまったのですが、要するにアレです、日本国憲法12条にでてくる「公共の福祉」というのと根は同じです。
憲法は人々の人権を守りますが、権利は好き勝手に行使しても良いのではなく他人の権利を侵害しない範囲でね…、また社会全体のためにこれを利用する責任を負うのですよ。ということを効率的に説明するために「公共の福祉」という言葉を援用している好例ですね。
つまり「ギガが減る」も「公共の福祉」というのもつまるところは「言語的代数」の導入ということで結論づけたいかと思います。
今回の記事は比喩と代数についていろいろ考察してみました。皆様の年始の暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。良い新年をお過ごしください。
ファンクションキーを利用した変換には
F6キーを連続して押すと(全かな)先頭からカタカナに(→セントうから)、
F7キーを連続して押すと(全カナ)末尾からひらがなに(マツびから←)
…できるようですが、素朴な疑問、「なるヘソ」とか「これゾン」「なぎスケ」とか末尾をカタカナにして締める単語はどうするのでしょうか。
もっといえば語の末端ではなく中途の位置のみ字種を違える厄介なパターンの固有名もいくらでも出てきます。
日本語入力は話す感覚で流れるように入力できることも大事ですがむしろリテラルな表記のこだわりが一番の勘所だと言えないでしょうか。
この記事ではこの辺にこだわってペンタクラスタキーボードのチャンク編集を掘り下げていきたいと思います。
まずこの記事の立ち位置はというと前回前々回の「キーを新設する」のくだりで触れた「際シフト(キワシフト)」「粒シフト(つぶシフト)」のうち
でにをはがらみのキワの編集操作は際シフトについて前回説明したので、今回は「粒度」というキーワードにもとづいて文字列編集の注目単位を可変させつつ粒シフトキーの組み合わせ動作として何ができるかについて考察を進めていきたいと思います。
注目編集単位は一文字単位の細かな編集スケールにはじまってでにをは以外の助詞、「より から ながら すら ながら たり つつ」などのでにをはキーでカバーできない機能語単位をうまくセパレートしてその前後の接続チャンクを編集しやすくなるようにするややスパンの広い注目スタイルまであり、
これを粒シフトを連続的に(段階的に)押すことで編集スケールを切り替えていく方式を検討しています。もしかしたらスケールの遷移も≪≫+[粒シフト]のような組み合わせ動作にした方が良いかもしれませんが未だに全体像がまだ見えてこないので操作のオペレーションについてはのちのち考えるとしてまずはこんな編集がしたいんだ、というニーズを先行して洗い出していきたいと思います。
粒シフトの操作体系すべてをここで論じるにはとてもスペースが足りなそうですので、今回の記事では数ある粒シフトの注目スケール形態のうち最初の一歩である最小単位の編集動作(一文字粒度)のスケールについて展開していこうかということでやっと本題に入ることといたします。
注目オブジェクトは「チャンク」で、これはでにをは別口要素を抜いただけにとどまらず、「より から ながら すら ながら たり つつ ばかり つまり」など複文字助詞やなにがしかの文法機能語も合わせて取り除いた下ごしらえをしたうえで、
未知語の可能性も引き受けつつ編集対象となるチャンクをフォーカスするところから始まります。
通常は変換前文字列を入力し終わって変換キーを押して、かな漢字変換が候補提示を首尾よくおこなえたフェイズに至ったところで粒シフトキーを押して該当チャンクの編集に移ります。
まあここのところの操作仕様はまだ固まっておらず暗中模索中でありますが、ひょっとしたら一文章丸々変換後ではなくあえて細切れ確定を積み上げたうえで逐次的にチャンクを出しながらで変換させたい文字列を編集させるスタイルの方が適している場合もありそうですが
細かい操作文脈の検証は今後に回していくとしまして要はタイトルや冒頭でもあらわれたある種のかな・カナ混淆表記の特異な単語の編集をするにはどうすればいいのかについて浅知恵ながら対策を考えてみましたのでまずはアウトプットしていきたいかと思います。
ここはとりあえず先にずらずらっと編集させたい語例を以下に並べるところから始めさせていただきます。
<編集したいワードの例 レベル1>
おっホイ
ちょコム
おシャレ
けもフレ
なるヘソ
しまホイ
オバしゃん
キュウべえ
バイきんぐ
ウェルかめ
マリみて
モヤさま
…このへんのワードはまだ粒シフトキーの出番はなく、キーボード盤面中央付近の[かな][カナ]キーの連続押下で語句の終端部からカナやかなに一文字ずつ混ぜ替える操作ができます。
従来のファンクションキーのF6やF7の機能では付属助詞対策のためか末尾かな保存に(先頭→/末尾←:両方のケースで)重きを置いていたような観を受けますがペンタクラスタキーボードの[かな][カナ]キーのオペレーションでは末尾かな/末尾カナに統一してかなでもカナでも語句固有のチャンクをシンプルに表記合わせしたい要請に沿った形のインターフェイスを体現しております。
なのでおっホイ・はてブ・このミスなどの末尾カタカナの語の編集に対応できていますし、バイきんぐ・コトしず・サーかばのような末尾ひらがなの語にもちろん末尾合わせでのかなカナ整えの操作が行き届いているかと思います。
<編集したいワードの例 レベル2>
あヴぁんだんど
さユり
ほしいンゴねぇ
わかったっスよ
…レベル2のこちらの例ではいよいよ粒シフトキーの出番となります。語句中途に異字種が埋め込まれているケースですね。
変換候補提示の段で粒シフトを一回押すと、まずは最小粒度のスケールでのフォーカスとなりその編集性質上の意図から文末部分の機能語・付属的チャンクの編集は避けられて当意即妙的に末尾から次に近そうな固有語あるいは叙述部分でない文構造の素材語となりそうな部分を自動的にフォーカスして編集受け付け状態に入ります。
ここでイメージしているのは、編集部分の│(キャレット)の縦棒が示されるようなカーソリングではなく、かといってドラッグしてレンジで選択されるような範囲選択でもないような第三のカーソリングスタイル…「アレンジ・リテラル・ハンド」とでもいうのでしょうか、とにかく特殊な編集状態に遷移することを強調しておきたいと思います。
ハンドhandというのはカード遊戯の手札をそろえるところからきたメタファーであり叙述・機能語ではない素材語として抜き出されたある一定の範囲(未知語含む)にフォーカスがまず移って、
例としてハンドのそれぞれの構成要素をカードと呼称することにして説明していきますと
ほしいんごねぇ に粒シフトを作用させるプロセスにおいて、まず模式的に各カードをあらわすと
▉▉▉▉▉▉ぇ のように末尾から反転選択されていき、粒シフトからの[←]キーを押すごとに
▉▉▉▉▉ね▉
▉▉▉▉ご▉▉
▉▉▉ん▉▉▉
のように各文字ごとに反転フォーカスがあたるので、ここでは「ほしい[ンゴ]ねぇ」の表記を実現するために
位置[ご]→[カナキー]→ゴ、位置[ん]→[カナキー]→ン
のように各フォーカス位置でカナキーを作用させてやることでワード中途のかな字種の張り替えを編集することができます。
デフォルトはチャンクの終端から左一文字ずつの選択ステップとなっておりますが初手で[→]を押すとそのチャンクの先頭に飛んで以下右方向への一文字ずつステップとさせ編集することも可能です。
先頭からも末尾からも容易に中途異字種編集ができるのでとりまわしは随分便利になるものだろうと踏んでいます。
これが「アレンジ・リテラル・ハンド」のチャンク編集スタイルであります。チャンクを前提にしつつも個別文字へのアクセスもトラフィックする面白いオペレーションだと思っております。
さて、ここまで導入が済んだ時点で更なるステップ、レベル3はこうです。
<編集したいワードの例 レベル3>
きみ声
水どう
ズッ友
手タレ
転売ヤー
冴えカノ
…ここからいよいよ漢字交じりのかなカナ表記のあるワードレベル3の編集にスポットを当てます。
ここまで来ておいてナンですが、ここで先程の最小粒度のスケールでの「アレンジ・リテラル・ハンド」のチャンク編集をいったん忘れてもらいまして、粒シフトキーを2回押したところのモードであります次の編集スケール、
「近視眼的食い気味粒度」--粒シフト第二段階
での編集スケールの挙動を説明したいと思います。
先程のハンド・カードの注目文字は一文字単位でしたがこちらは漢字が混ざるのでセパレーションの単位が二、三文字に広がっていきちょっと複雑になってしまうのが難点であります。
分け方はそれほど厳格ではなくむしろ前後の文脈は無視してあえて近視眼的に"ありふれ語"の語片を見たらとりあえず漢字変換するといったイージーな造りです。
文脈を見ないということはこれは通常変換の候補提示から離脱したモードとみなしておそらく文法要素のない合成・複合語だろうと決め撃ちしたバイアスでの変換に特化する味付けを意識しているからです。
もちろん通常変換でできる範囲の複合語解析を走らせたり三属性のハ万変換(接頭語・接尾語の変換)などでまっとうな複合語をひねり出す手立ては別にあるので、こちら粒シフト(2)ではそこからこぼれ落ちてしまうような、辞書ではどうにもならなそうな造語・略語の表記のフォローのためにしつらえた編集モードであります。
言葉で説明してもなかなかイメージがつかみにくいと思うのでこちらも模式的にカーソリングの挙動をテキストで表現してみますと、
例えば「水どう」に粒シフトを二段階あててみたときには(もちろん水道にはなりません)
・(すい)(どう)と漢音の特徴を鑑みて2パーツにセパレートされた注目チャンク
・(すい)【どう】:注目セパレーションはまず末端からおこなわれる([かな]キーで【どう】を変換するもよし)
・【すい】(どう):ここで←を押せば(どう)の部分はスルーして【すい】の部分を漢字にするか否かが問われる
・ここで「すい」の音には漢字候補をあれこれ選択するのではなくてあらかじめ決められた"ありふれ語"の辞書の中から「すい→水」と一意に変換しようとする
・【すい】を変換三属性の「変換ハ」(ハ万)キーを押して「水」に変換する:→Enterキーを押して決定
・変換後文字列:水どう
こんな感じになります。漢字変換が"ありふれ語"の中からしか選べないのか…と落胆させてしまったかもしれませんが、込み入った表記のものは[の][の]代表変換やトランス音訓変換、それに接頭語接尾語・ハ万での変換に任せるというのがメインですし、
これは「近視眼的食い気味粒度」のモード内のみでの変換辞書なのですから通常動作での挙動まで限定してしまうものではないのでこのへんが落としどころでしょう。
また単漢字のみだけでなく「(転売)ヤー」のような二文字ぐらいの語もひとかたまりとしてセパレートされていきますし、
動詞の連用形ほかその他活用形の「(冴え)カノ」のようなケースでも送りがな付きでひとかたまりと束ねられ出力されます。
あとは三属性変換の属性ハを押して変換していくのは、通常変換キーでのプロセスがリセットされないように継続の余地を残すためというのが1つと、
もともと接頭語接尾語だけでなく反対の意味の漢字が組み合わさった熟語(昇降とか)の変換といった機能を担っているだけでなく、対語に限らず熟語合成法則にもとづいた熟語(粘投とか寄稿とか)の変換もハ万変換の一翼を担うところまで適用範囲が広がっているのでここで念頭に置いている複合語の変換の本位はむしろ属性ハの領分にピッタリではないかとの認識があるからであります。
それではもうちょっとお付き合いください、次はレベル4です。「近視眼的食い気味粒度」はまだ続いております。
<編集したいワードの例 レベル4>
バド奥原
イタKiss熱
食べたいっスね
失敗なんてメじゃない
8時だョ!全員集合
…「ばどおくはら」このままだと「ばど億腹」みたいになってしまいかねません。なのでここでちょっとひと工夫。
まず粒シフト×2をした後に、→を押して注目カードを先頭にジャンプして「ば」→「バ」に変換、もいっちょ→を押して「ど」→「ド」に変換。ここまでOKです。
あとは残された「おくはら」に通常変換キーを作用させて「奥原」、これで無事変換できました。締めの属性ハのステップは省略されます。
次の「いたKissねつ」これはまたちょっとクセがあります。
まず粒シフト×2を押す前の変換候補提示を通常変換からではなくハ万の変換を前段にもってくるのです。
こうすれば最後の熱のところは生産力のある辞ですので接尾語と判定されて(たとえKissのようなアルファベットが挟んでいたとしても)、
とりあえす○○○熱というところまではFixできるのでここから改めて粒シフト×2に入ると実質編集文字レンジは「いたKiss」の部分になります。
ここで→を押して先頭にジャンプしてイ、タをそれぞれカナキーで変換してやる操作になります。最後はやはり属性ハのキーで締めます。
「たべたいっすね」は通常変換後(食べたい)│(っすね)のチャンクに分かれてこの場合終端が未知語ですから(っすね)にフォーカスがあたります。
そこでちょっと内容が戻りますがレベル2の「アレンジ・リテラル・ハンド」に立ち戻って「っす【ね】」のち←押し「っ【す】ね」までカードを持ってきて「す」を「ス」にカナ変換してやればよいだけです。
ここで少し欲張りを言うと未知語はデフォルトでカタカナ文字列になりますがこの場合のように一部分だけカナに直す操作が入るとユーザーの意図を賢く読み取って「それ以外はひらがななんだな」と解釈して確定後自動的に「っスね」の表記に寄せることができれば満点です。
ギミックとしては簡単なのでここまでのややこしいオペレーションが実現できるのならこの部分程度のちょっとした工夫はぜひとも実現してほしいところです。逆にカタカナ主体で一文字だけかなキーで指定してやるときには逆の挙動(つまりそれ以外はカタカナなんだなと受け取る)をしてもらえるとなおありがたいです。
「しっぱいなんてめじゃない」ここは判断の分かれるところですが「じゃない」は既知語に含めることとして都合が良いですがじゃない直前の語をまだ未確定な語と捉えることにして構える体制でいければあとは「め」の部分を「メ」に替えることで何とか乗り切れれば良いのですが…構文解析の考察も合わせてこれはのちのちの課題といたします。どうかご勘弁を。
最後の「8じだょ」については8時という数量計時接尾語というのでしょうか、まあでもハ万変換するまでもなく一般的ですから通常変換で「8時」のところまでは首尾よくいくとしまして
「(8時)【だょ】」の注目カードで「ょ」の部分を「ョ」に替えてやるだけで事足りると思います。一つ付け加えますと確定時にもちろんですが素材語/機能語/用言の判定はつかずともその都度ユーザーの手で単語登録・学習の手続きに煩わされずに適宜汲み取って逐次学習ができれば良いかなと思います。
長々と続いてしまいましたがここまで来たので最後のレベル5までやらさせていただきます。
<編集したいワードの例 レベル5>
円盤皇女ワるきゅーレ
ふぁんくラ部
皆総ダちで
かっこカワイさ
恋んトス
雨イジングスパイダーマン
このへんまで来るともう対応しきれないんじゃないかというほどのカオスな文字列ですが、
まずは「円盤皇女」ですがこれはユーフォ―プリンセスと読みます。まず変換は無理ですね。
なのでここは「えんばんこうじょ」と打ち込んでください。いくつか変換候補を拾ってとりあえず変換ができたこととします。
残りの「わるきゅーれ」部分に来たら粒シフト×2をしていよいよ料理に入ります。
今までの作法通りでいきますと最初は「わるきゅー(れ)」と「アレンジ・リテラル・ハンド」モードで末尾の「れ」に注目します。そこでカナキーを押して「れ」→「レ」です。これ自体には造作もありません。あとは→を押して単語頭にジャンプして同様に「わ」→「ワ」とすればできます。
しかし操作文脈が一度分断されておりますので残念ながら一語として単語が学習されません。なのでご面倒ではありますがサジェストから取り込めれば取り込んでそうでなければユーザー自らの手で単語登録をしなければなりません。
レアケースですが一時的ではなく頻繁にこの文字列をタイプする方は「円盤皇女ワるきゅーレ」として新規にご登録ください。あがいてみるとすればトランス音訓変換は読みが特殊すぎて使えないので[の][の]代表変換でチマチマ打ち込めばなんとかなるかも知れません。しかし操作文脈の継続性は保証できかねるやっかいな文字列であります。
続いて「ふぁんくラ部」ですがこれは「部」が接尾辞ととれるのでまず属性ハ(ハ万)で変換してそれから粒シフト×2をしてなんとか変換できないかひねり出してみます。
編集要素提示は「ふぁんくら(部)」となって部の部分はFixされています。
あとは最初に「ふぁんく【ら】」と末尾部分のカードに注目しますからそこでカナキーを押して先程の気を利かせたIMEの反転解釈もあいまってカナ以外ひらがな解釈でいくと「ふぁんくラ部」とめでたく変換されることになります。
「みなそうだちで」…これは「で」の方は別口入力でありますからそれはいいとして、みな=皆の部分は品詞は定かではありませんが確かに副詞的にはたらく機能を持っていますのでこれは通常変換でまず検知される成分です。
※関連 文末表現・付加表現の種々派生したものなどを通常変換に誘導する - P突堤2
↑の例では文末表現にとりわけスポットが当たっていましたが副詞も通常変換の誘導上重要な検知対象です。逆に言えば三属性変換では一番後回しに判断されるファクターですので「みなそうだち」このケースでは通常変換のみが正解ルートとなります。
よって「みな」は通常変換によって「皆」がFix部分と固定されるので後続に粒シフト×2をおこなってもこの不変部分は操作文脈上も保存されていきます。ここが副詞のクセのあるところです。
いろいろと前提事項がついてきましたが肝心の「そうだち」はおそらく通常変換の段で「総立ち」になっていると思われるので「立ち」の漢字部分のFixを再び解除する手続きが必要になります。
これは未知語ではないのでカタカナ提示がされないのが仇となって分解するのにひと思案必要になってきそうです。
結論から言うとここではウルトラCとして再変換を押してからの粒シフト×2はどうでしょうか?
再変換を押してからの粒シフト×2というのは「近視眼的食い気味粒度」にならず漢字確定部分も一文字ずつのカードにとらえなおした「アレンジ・リテラル・ハンド ver.2」になって「総立ち」の「立」の部分にカナキーを作用させていくとなんとこれが通ってしまって「ダ」に変換できるといく苦し紛れの思いつきです。
ただ「立」の部分がよみ:ダをあらわしているというタイプ情報が残っていればの話ですがちょっとここまでくると理論の筋立てに自信が持てないですね。自分で書いておいてスイマセン。
…さて気を取り直して「かっこカワイさ」についてですがもう忘れてしまった方もおられるかと思いますが基本別口入力から発展してさらに追加になった別口入力に「『さ・み・げ』のアソート」というのがありまして仕組みの詳説は 未定義③キーにあてる別口入力キー候補その5…[さ][み][げ] - P突堤2をお読みになっていただくとして、
接尾辞「さ」をFixさせる手立てがありますのでそこは別口入力で「かっこかわい[さ]」と打ち分けていただいたうえで通常変換→粒シフト×2に移行していってから3文字のカード(=かわい)を編集して「カワイ」にする操作を施して最終的に属性ハを押してやれば問題ないと思います。
今までやった技の延長上の組み合わせ動作です。
…あと残るは2つ、「こいんとす」これも既知語なので素直に漢字にならないかと思うのですが再変換からの粒シフト(1)そしてさらに通常変換という合わせ技で無理くり漢字に直すという芸当にチャレンジしたいと思います。
粒シフトには近視眼的な語片Fixという操作文脈が備わっているのでここであえて既知語でありながらもさらに分け入って確語片「恋」を無理くり見出して(文節伸縮←→をあえて使わないで)粒度のオペレーションで解決しようという暴挙に出てみます。
あとは「とす」の部分が「トス」なのでかな変換 そして 気の利いた反転変換(ん) さらに「恋」の漢字部分保存、と今までのエッセンスがすべて入りきったような至妙なワードあります。これでどうでしょうか。
…最後に駆け足で「あめいじんぐすぱいだーまん」について考察しますが、これも近視眼的語片Fixを駆使することによって解決を目指します。
まず既知語のチャンクとしては(あめいじんぐ)│(すぱいだーまん)の2チャンクにセパレートされます。「スパイダーマン」の方は特にいじらないので≪でスルーします。
そしてフォーカスされた「あめいじんぐ」、これに近視眼的語片Fixを施すことになります。
とにかく前のめりに語片をFixしていきますので「雨い人ぐ」とかになってしまうリスクもありますが漢字Fixされた「人」をカナキーで作用させて解除していけば何とかなりそうです。ただしここでは「気を利かせた反転変換」がはたらいて「雨いジンぐ」になってしまいかねないので「ぐ」部分も「い」部分も周到にカナに変換しておいて不具合を潰しておいてから最終的に属性ハ(ハ万)で決定するというまどろっこしい入力プロセスとなります。
…以上で数々の例にわたって長々と述べてきたのですが、正直理論的整合性だとかユーザーインターフェイスの配慮には完全に逆らってしまってとても人様にお見せできるような代物ではなかったのですが、
入力プロセス云々よりもまずは実際に数多に転がっている「問題の文字列」の存在を列挙して示せたのは火中の栗を拾うかの如く徒労に終わってしまうかもしれませんが自分の中ではやりとげた!という気分でありますし収穫だとも思っております。
まだ粒シフトの操作体系も見直さなくてはならなそうですし課題は依然として解決はしていないのですがこの記事をたたき台にして今後の考察に役立てていきたいと思っております。
かの小池一夫せンせいの著書に「年寄りは弱虫なンかがなれるもンじゃねぇ日記」というのがありますがこの面妖な文字列をシュッと変換できるようになる日はいつくるのでしょうか。奮闘は続きます。