変換三属性の属性ハ=ハ万では接頭語接尾語などの他に抽象的概念をあらわす言葉に用いるとあるのですが、この"抽象的"というのがまさに抽象的で何かぼんやりとした定義なのでときに扱いに困ってしまいます。
いろんな切り口があろうかと思いますが、かろうじて「こんな性質だよ」と言えそうな具体例がありましたのでここで列挙したいと思います。
属性ハの受け持つ役割は多岐にわたるので、これをもって抽象概念モノの適用例の全てとするには言い足りない面もあるので今件ではあくまで典型的でわかりやすいとの切り口から採り上げるものとします。
とりあえず列挙しますと
<属性ハの抽象名詞の例>
旨・為・甲斐・空き・味・フリ・ネタ・ハシリ・魁・所為・表・斜(ハスに見る)・ノリ・事・筈・屑・空・誼
などがあります。それぞれの語の同音語との対照を<属性ハ:名詞>・<属性ロ:用言>・<属性ハ:抽象>の順で並べる(ない場合は飛ばします)と、
<胸/棟・無ね・旨/宗/(棟)> - 宗は旨と同様の意味です。志もあるがこれは通常変換の単漢字ぞろぞろで出します。(棟)は1棟2棟の単位系でもあるので属性ハを兼任します。
<-・溜め/貯め/矯め/タメ・為/タメ> - タメはタメ年のタメ(様態/計数的)ですので属性ロ/ハを兼任します。為は式約概念です。
<貝/会・買い/飼い/怪/下位・甲斐/解/魁/下位/改/回/会> -下位は様態でも計数的でもあるので属性ロ/ハを兼任します。属性ハには解/下位/改/回などの構造的概念が並びますが甲斐/魁/会の方は式約概念です。(魁より始めよ:物事のはじめ)
<秋/亜紀/安芸・空き/飽き/開き/厭き・空き> - 空きは用言と空きスペースの空き=式約概念なので属性ロ/ハを兼任します。
<アジ/鯵・-・味> - 味は式約概念です。
<-・振り/降り/不利・フリ/ふり/不利> - 不利は様態でもあり有利不利対義語ペア概念でもあるので属性ロ/ハを兼任します。フリは話題のフリ/~のフリをする共に式約概念です。
<ネタ・寝た・ネタ> - ネタは元来は式約概念として属性ハですが主語名詞使いもよくみられるので属性イを兼任します。
<-・走り/奔り・ハシリ> - ハシリは連用形から転じて先駆者を指す式約名詞なので属性ハです。
<さきがけ・先駆け・魁> - さきがけは政党名ですが固有名詞として属性イに所属させます。魁は式約概念です。
<セイ/生/精・/静/聖・所為/性/姓> - 属性イ:生を受けての生・木の精の精、静/聖はマイナーだが様態プロパティとしての静/聖、属性ハには性/姓などの構造概念もありますが所為は式約概念です。
<豹/雹/票・評・表/評> - 評はサ変動詞評するの評でもあり、○○評のように接尾語とも取れるので属性ロ/ハを兼任します。表は式約概念です。
<蓮・派す・ハス/斜> - 派すは派するの派す。斜に見るの斜は式約概念。
<海苔/糊・乗り/載り・ノリ/矩> - ノリはグルーヴをあらわす式約概念。矩は建築用語「矩が出ている」で使われる式約概念。直角。
<琴・糊塗/古都・事/コト> - 古都は都市の様態として属性ロ。事/コトは式約概念。言もあるが使い出があるのは「ゲン」と読ませる方。
<幡豆・恥ず/愧ず・筈/はず/ハズ> - 幡豆は地名。筈/はず/ハズは式約概念です。
<葛/九頭・クズ・屑/クズ> - クズは人物の様態の形容としてのものと、役に立たないものまたはより分けたあとの残りかすの意で式約概念。両方を兼任する。
<唐/から・辛/空・空/家ら/蚊ら> - 唐は古代中国のもの、辛は辛いの短縮、空は空いている状態でもあるが辛より順位を低く兼任、もう一方の兼任・式役概念としての空は上位。
<好美/吉見/良美等・-・誼> - 「昔の誼で…」親しい間柄をあらわす関係性の式約概念。
…説明なしにいきなり使ってしまいましたが、「式約名詞」「式約概念」というのは私の造語で文の構造上は補語や目的語になったりする主に名詞の形態をとる抽象的な語であります。
うまく説明できているか自信がありませんが犬や猫を総称して「動物」とするようなスタティック(=静的)な集約と違って、その形式のもつ提喩性を叙述の流れの中に配して単なる集約以上に形状・様態の種々性から離れて機能できるポテンシャルを持った語です。
例えば「味」には甘い、辛いなど種々のものがありますがそれを「味」としてその形式ごと論じれる一段高い作用をもつ性質がこのような語にはある、ということです。
やれしょっぱいだとか、苦いだとか個々の話題に向かうだけでは、「技術は稚拙だが味がある」のような転義した用例は決して出てきませんね。そのような表現のキーになる象徴的な言葉です。
挙げた例の中に何例か動詞の連用形から転じた(=転成名詞)ものがありますが、これらについては奥が深そうなので式約名詞とは別立ての論で臨んだ方がいいかも知れません。
これらのよろづ(≒品詞)の判別は文脈解析などの処理でどの種の文法機能をもつものかおのずと理解できている例もあるかと思いますが局所的に別用の語を選択したい時や、あえての式約名詞づかいのためにもユーザー側からの関与(=三属性キー選択)によるところも大きいといえるので三属性変換での使い分けは有用ではないかと思われます。
いろんな切り口があろうかと思いますが、かろうじて「こんな性質だよ」と言えそうな具体例がありましたのでここで列挙したいと思います。
属性ハの受け持つ役割は多岐にわたるので、これをもって抽象概念モノの適用例の全てとするには言い足りない面もあるので今件ではあくまで典型的でわかりやすいとの切り口から採り上げるものとします。
とりあえず列挙しますと
<属性ハの抽象名詞の例>
旨・為・甲斐・空き・味・フリ・ネタ・ハシリ・魁・所為・表・斜(ハスに見る)・ノリ・事・筈・屑・空・誼
などがあります。それぞれの語の同音語との対照を<属性ハ:名詞>・<属性ロ:用言>・<属性ハ:抽象>の順で並べる(ない場合は飛ばします)と、
<胸/棟・無ね・旨/宗/(棟)> - 宗は旨と同様の意味です。志もあるがこれは通常変換の単漢字ぞろぞろで出します。(棟)は1棟2棟の単位系でもあるので属性ハを兼任します。
<-・溜め/貯め/矯め/タメ・為/タメ> - タメはタメ年のタメ(様態/計数的)ですので属性ロ/ハを兼任します。為は式約概念です。
<貝/会・買い/飼い/怪/下位・甲斐/解/魁/下位/改/回/会> -下位は様態でも計数的でもあるので属性ロ/ハを兼任します。属性ハには解/下位/改/回などの構造的概念が並びますが甲斐/魁/会の方は式約概念です。(魁より始めよ:物事のはじめ)
<秋/亜紀/安芸・空き/飽き/開き/厭き・空き> - 空きは用言と空きスペースの空き=式約概念なので属性ロ/ハを兼任します。
<アジ/鯵・-・味> - 味は式約概念です。
<-・振り/降り/不利・フリ/ふり/不利> - 不利は様態でもあり有利不利対義語ペア概念でもあるので属性ロ/ハを兼任します。フリは話題のフリ/~のフリをする共に式約概念です。
<ネタ・寝た・ネタ> - ネタは元来は式約概念として属性ハですが主語名詞使いもよくみられるので属性イを兼任します。
<-・走り/奔り・ハシリ> - ハシリは連用形から転じて先駆者を指す式約名詞なので属性ハです。
<さきがけ・先駆け・魁> - さきがけは政党名ですが固有名詞として属性イに所属させます。魁は式約概念です。
<セイ/生/精・/静/聖・所為/性/姓> - 属性イ:生を受けての生・木の精の精、静/聖はマイナーだが様態プロパティとしての静/聖、属性ハには性/姓などの構造概念もありますが所為は式約概念です。
<豹/雹/票・評・表/評> - 評はサ変動詞評するの評でもあり、○○評のように接尾語とも取れるので属性ロ/ハを兼任します。表は式約概念です。
<蓮・派す・ハス/斜> - 派すは派するの派す。斜に見るの斜は式約概念。
<海苔/糊・乗り/載り・ノリ/矩> - ノリはグルーヴをあらわす式約概念。矩は建築用語「矩が出ている」で使われる式約概念。直角。
<琴・糊塗/古都・事/コト> - 古都は都市の様態として属性ロ。事/コトは式約概念。言もあるが使い出があるのは「ゲン」と読ませる方。
<幡豆・恥ず/愧ず・筈/はず/ハズ> - 幡豆は地名。筈/はず/ハズは式約概念です。
<葛/九頭・クズ・屑/クズ> - クズは人物の様態の形容としてのものと、役に立たないものまたはより分けたあとの残りかすの意で式約概念。両方を兼任する。
<唐/から・辛/空・空/家ら/蚊ら> - 唐は古代中国のもの、辛は辛いの短縮、空は空いている状態でもあるが辛より順位を低く兼任、もう一方の兼任・式役概念としての空は上位。
<好美/吉見/良美等・-・誼> - 「昔の誼で…」親しい間柄をあらわす関係性の式約概念。
…説明なしにいきなり使ってしまいましたが、「式約名詞」「式約概念」というのは私の造語で文の構造上は補語や目的語になったりする主に名詞の形態をとる抽象的な語であります。
うまく説明できているか自信がありませんが犬や猫を総称して「動物」とするようなスタティック(=静的)な集約と違って、その形式のもつ提喩性を叙述の流れの中に配して単なる集約以上に形状・様態の種々性から離れて機能できるポテンシャルを持った語です。
例えば「味」には甘い、辛いなど種々のものがありますがそれを「味」としてその形式ごと論じれる一段高い作用をもつ性質がこのような語にはある、ということです。
やれしょっぱいだとか、苦いだとか個々の話題に向かうだけでは、「技術は稚拙だが味がある」のような転義した用例は決して出てきませんね。そのような表現のキーになる象徴的な言葉です。
挙げた例の中に何例か動詞の連用形から転じた(=転成名詞)ものがありますが、これらについては奥が深そうなので式約名詞とは別立ての論で臨んだ方がいいかも知れません。
これらのよろづ(≒品詞)の判別は文脈解析などの処理でどの種の文法機能をもつものかおのずと理解できている例もあるかと思いますが局所的に別用の語を選択したい時や、あえての式約名詞づかいのためにもユーザー側からの関与(=三属性キー選択)によるところも大きいといえるので三属性変換での使い分けは有用ではないかと思われます。
デス太郎の罠
デシテヨ姫の悪夢
ゲボ爺の浅慮
と、足かけ3回にわたって突然小芝居をぶっこんでしまいましたがお楽しみいただけたでしょうか。
別口入力の直面している危機を前にして、脳内の葛藤を体現したキャラクター達がいてもたってもいられなくなりこうして解説記事の枠から飛び出して登場してもらいました。
物語のラストはテヨ姫の一言に触発されたデス太郎がペンタクラスタキーボードの新たな補助入力、[て]キーの新設をにらんで、レイアウトや基本コンセプトの修正をする決意を吐露する場面で終わりましたが、
この結末通りブログ主ぴとてつとしましても気持ちを新たにし、[て]キー新設に向けてこれから色々と思案していくことに腹を決めました。
これが単に接続詞「て」だけの問題だったのなら「で」との混用を避けるためわざわざ別口入力にすることもないかとも思いましたが、テ形は活用と不可分の変化語尾なのだという見方を知ったことにより、
[でs]キーの不備の問題で不定語素の落ち着き先がうまく整理できず抜けの多い解決案(?)となっていた状況を打破するきっかけになりました。
同じく活用語尾に別口入力キーを充てた「な」「だ」と同じ土俵のものとして処理してもいいんだと鶴の一声のように発想転換ができました。これで姫の望んでいた「でしてよ」が腑に落ちる文法解釈のもとでコンパクトに打鍵できます。
<入力方法>
でしてよ…[でs]→[て]→よ ※[て]キーは新設の別口入力キー
ここまでは良いのですが、[て]キー導入に際しては動詞テ形のいくつかの動詞は「急いで」のようにもともと「急ぎ」+「て」だったものが発音上の便宜により音便化して接続助詞の「て」が「で」にとって替わる現象があることにも留意しなくてはなりません。
確かに接続助詞「て」は語幹子音がb,m,nおよびgで終わる動詞の場合は濁音化して「で」になるので(飛ぶ・読む・死ぬ・泳ぐ)これに非対応なら整合性に欠けるとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、
これの場合別口入力「で」が使えないとみてそれなら機械の入力プロセスが動詞を判別処理して適宜「て」と「で」をワイルドカードのように文脈依存で置き換えつつタイプできるような機構も考えられなくもないと一瞬考えましたが、
どちらにも決められない反例として「書く」「嗅ぐ」のテ形の場合[かいて]/[かいで]が判別不全をおこすのでこの試みは却下されました。
なのでやはり濁音化したテ形にはあえて対応せず、清音のテ形のみ適用される[て]キーを使用していくこととしました。
ここで少し視野を広げてもう一つの特殊な別口入力、[○R]と[×r]に焦点を移してみると、若者ことば・<ル形動詞>の言い回しをする際に「ハモる」のように語幹はカタカナ、「る」の部分だけひらがなになるような表記を手軽に実現するために作られたこのキーの使い勝手があまり良くないのではないかという問題がここで浮かび上がってきます。
どういうことかというと、後に続く文脈を見ながら[○R][×r]に未然・連用・終止・連体・仮定・命令の各活用形をワイルドカード的に作用させて打鍵しル形動詞の各バリエーションに対応する目論見でしたが(ハモる・ハモらない・ハモろう・ハモります・ハモった・ハモるとき・ハモれば・ハモれ)、
[○R][×r]の2キーだけではとても捌ききれないという認識が芽生えてきたのです。
テ形の活用の一件からもわかったように、学校文法の活用分類から踏み出してテ形・タ形・受身形・可能形・否定形などの派生まで考慮に入れると言い回しによってはワイルドカードが衝突してうまく機能せずかえって混乱させる事態も懸念されるのです。
らりるれろを含む語尾片のみならず、「ハモって」「ハモった」という別の枠組みの範疇のものもありますから用途兼任負荷を抑えるために新設の別口入力で負荷を分散させることはたとえ[て]キーひとつだけであっても相当助かるのです。
さらに[○R][×r]原案の活用解説では「ググった」→ぐぐ[×r]た<連用形>としているものありますが、コケた・マセた・ノロケた のように小文字の「っ」を挟まないテ形/タ形もあり、[○R][×r]ではこのケースに全く対応できません。
今回の新設キーの導入でとりあえず[て]キーについてはこの問題を回避できるので残る[た]のケースはのちのち考えていけばいいかと思います。
[○R][×r]キーに関してはまだまだ精査が必要でありここでは長くなりそうなので話はここまでにして、話を[て]キーの考察に再び戻しますと、
今回新設した[て]キーは動詞連用形+接続助詞「て」(動詞活用テ形)を念頭に置いて設置したものですが、コピュラ別口入力[でs]との連携である「でしてよ」については少し特殊な事情があり説明が必要です。
こちらの「でしてよ」は[でs]+終助詞「て」との連結であり文法的にも接続助詞とは異なるものですが幸いなことに同様な例として基本別口入力「が」の適用要件に格助詞としての「が」だけでなく逆接の接続助詞としても使用できる例がありますので、これに倣って「て」も複数のチャネルをもつ別口入力であると解釈すれば問題は一応解決します。
これはいわゆる女性語の「でしてよ」だけにとどまらずゲボ爺のセリフ「…よかろうて。」や「…じゃて。」にみられるような終助詞用法においても同様に使っていけます。
ただ「でして」の場合だけに関してみられる重要な特徴をここで申し上げますと、[でs]→て(べたの通常かなキー)のときは「ですて」のように変換されて(そうです天才です-などの例)まずは「です」の確定に重きが置かれますが、[でs]→[て](別口入力)の場合には「でして」の形を返す変換になります。
これは[て]キーが活用まわり(テ形に限らず女性語の『て』も広くバリエーションのひとつとみなして)の受け皿とした変化パーツとして作用し、結果「て」につながるモーメントを想起させる「でして」の方を用に充てさせる措置をとったというカラクリです。
まさにこの派生に対応せんがための[て]キーの格別な機能でありますし、不定語素の行き先を後置シフトで解決する特徴的なシークエンスをうまく利用した"贅沢使い"であるといえます。
また、動詞のテ形ばかりでなく形容詞のテ形(例:広くて強くて辛くて)もありこれにも同様に[て]キーでの別口入力を対応させます。形容詞の場合はすべて清音の「て」が当てられるのが特徴です。
一方形容動詞の場合のテ形では(例:静かで微妙でお転婆で)すべてこの例示のように対照的に濁音の「で」で受けますが、こちらへの対応には別口入力[で]を充てます。
この場合の接続助詞「で」に限っては形容動詞の連用形の一部としての「で」(活用語尾)や断定の助動詞「だ」の連用形の一部である「で」と機能上類似しており活用のバリエーションのありようと不可分だともいえるので奇しくも清音のテ形においての語尾が活用と不可分とする見方とも符合する一面が垣間見れるかと思います。
とは言うもののこの処置は形容動詞の時は濁音化したテ形に対応するのに一般動詞のときの活用の時はあえて対応しないなどという一貫性に欠けるものだと指摘されても当然の事かとは思いますが以下に挙げる例を鑑みたうえで判断を俟って頂きたいということを読者の方には申し上げたいです。
<一般動詞のテ形の別口入力(濁音の場合)の適用が好ましくないとの証左になる例>
漕いで→恋で との判別不全性
跨いで→マタイで・また胃で との判別不全性
死んで→芯で との判別不全性
傷んで→異端で との判別不全性
恨んで→ウランで との判別不全性
…これらの例からもわかるように、別口入力に動詞のテ形(濁音になる方)を認めてしまうのは「で」本来の用法が非常に多岐にわたる(断定の助動詞「だ」の連用形、形容動詞の活用語尾の一部、「そうだ」「ようだ」助動詞の連用形、格助詞など)ため混同されやすく、また「で」は切れ目感が強いのに対し語尾との一体感が強いとされるテ形用法の「で」との文法機能上の違いから変換語句切り出しの不調要因となってしまうことが懸念されますので決して得策ではありません。
これら違いのある両者を同じまな板にのっけてしまうのは無理がありますし、かといって従来の別口入力「で」のほかに接続助詞専用の別口入力「で」を立ててとり捌くのは、同じ「で」が用法によって2つも出てきてしまう(ただでさえ「て」という別口入力もあるのに!)などどだい無理な話で混乱必至ですのでどうしても採用できません。
翻って別口入力「で」の使用が容認された形容動詞の場合、副作用もなさそうだとみなされているのは、形容動詞語幹がもともと名詞に準ずる類のものが多く(いわゆる形容詞性名詞)、「で」と付加入力をつけても語幹部分の自立性が高いので「で」というキーを別口入力することで生じるワード分離性があっても与し易いからなのです。
少し混乱してきたのでテ形の適用範囲をA群(音便形を含む清音のテ形(て))、B群(音便形が濁音のテ形(で))にわけて整理しますと(※清音にも音便形はあります)
<テ形およびデ形の入力対応表>
A群の場合の入力 B群の場合の入力
一般動詞 [て] べたの「で」
形容詞 [て] -(濁音のデ形はない)
形容動詞 -(清音のテ形はない) [で]
のようになることをもう一度確認したいと思います。他にも補助形容詞「ない」のテ形や打ち消しの助動詞「ない」のテ形なども考えられますが、これらについては次回以降に考察してみたいと思います。
デシテヨ姫の悪夢
ゲボ爺の浅慮
と、足かけ3回にわたって突然小芝居をぶっこんでしまいましたがお楽しみいただけたでしょうか。
別口入力の直面している危機を前にして、脳内の葛藤を体現したキャラクター達がいてもたってもいられなくなりこうして解説記事の枠から飛び出して登場してもらいました。
物語のラストはテヨ姫の一言に触発されたデス太郎がペンタクラスタキーボードの新たな補助入力、[て]キーの新設をにらんで、レイアウトや基本コンセプトの修正をする決意を吐露する場面で終わりましたが、
この結末通りブログ主ぴとてつとしましても気持ちを新たにし、[て]キー新設に向けてこれから色々と思案していくことに腹を決めました。
これが単に接続詞「て」だけの問題だったのなら「で」との混用を避けるためわざわざ別口入力にすることもないかとも思いましたが、テ形は活用と不可分の変化語尾なのだという見方を知ったことにより、
[でs]キーの不備の問題で不定語素の落ち着き先がうまく整理できず抜けの多い解決案(?)となっていた状況を打破するきっかけになりました。
同じく活用語尾に別口入力キーを充てた「な」「だ」と同じ土俵のものとして処理してもいいんだと鶴の一声のように発想転換ができました。これで姫の望んでいた「でしてよ」が腑に落ちる文法解釈のもとでコンパクトに打鍵できます。
<入力方法>
でしてよ…[でs]→[て]→よ ※[て]キーは新設の別口入力キー
ここまでは良いのですが、[て]キー導入に際しては動詞テ形のいくつかの動詞は「急いで」のようにもともと「急ぎ」+「て」だったものが発音上の便宜により音便化して接続助詞の「て」が「で」にとって替わる現象があることにも留意しなくてはなりません。
確かに接続助詞「て」は語幹子音がb,m,nおよびgで終わる動詞の場合は濁音化して「で」になるので(飛ぶ・読む・死ぬ・泳ぐ)これに非対応なら整合性に欠けるとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、
これの場合別口入力「で」が使えないとみてそれなら機械の入力プロセスが動詞を判別処理して適宜「て」と「で」をワイルドカードのように文脈依存で置き換えつつタイプできるような機構も考えられなくもないと一瞬考えましたが、
どちらにも決められない反例として「書く」「嗅ぐ」のテ形の場合[かいて]/[かいで]が判別不全をおこすのでこの試みは却下されました。
なのでやはり濁音化したテ形にはあえて対応せず、清音のテ形のみ適用される[て]キーを使用していくこととしました。
ここで少し視野を広げてもう一つの特殊な別口入力、[○R]と[×r]に焦点を移してみると、若者ことば・<ル形動詞>の言い回しをする際に「ハモる」のように語幹はカタカナ、「る」の部分だけひらがなになるような表記を手軽に実現するために作られたこのキーの使い勝手があまり良くないのではないかという問題がここで浮かび上がってきます。
どういうことかというと、後に続く文脈を見ながら[○R][×r]に未然・連用・終止・連体・仮定・命令の各活用形をワイルドカード的に作用させて打鍵しル形動詞の各バリエーションに対応する目論見でしたが(ハモる・ハモらない・ハモろう・ハモります・ハモった・ハモるとき・ハモれば・ハモれ)、
[○R][×r]の2キーだけではとても捌ききれないという認識が芽生えてきたのです。
テ形の活用の一件からもわかったように、学校文法の活用分類から踏み出してテ形・タ形・受身形・可能形・否定形などの派生まで考慮に入れると言い回しによってはワイルドカードが衝突してうまく機能せずかえって混乱させる事態も懸念されるのです。
らりるれろを含む語尾片のみならず、「ハモって」「ハモった」という別の枠組みの範疇のものもありますから用途兼任負荷を抑えるために新設の別口入力で負荷を分散させることはたとえ[て]キーひとつだけであっても相当助かるのです。
さらに[○R][×r]原案の活用解説では「ググった」→ぐぐ[×r]た<連用形>としているものありますが、コケた・マセた・ノロケた のように小文字の「っ」を挟まないテ形/タ形もあり、[○R][×r]ではこのケースに全く対応できません。
今回の新設キーの導入でとりあえず[て]キーについてはこの問題を回避できるので残る[た]のケースはのちのち考えていけばいいかと思います。
[○R][×r]キーに関してはまだまだ精査が必要でありここでは長くなりそうなので話はここまでにして、話を[て]キーの考察に再び戻しますと、
今回新設した[て]キーは動詞連用形+接続助詞「て」(動詞活用テ形)を念頭に置いて設置したものですが、コピュラ別口入力[でs]との連携である「でしてよ」については少し特殊な事情があり説明が必要です。
こちらの「でしてよ」は[でs]+終助詞「て」との連結であり文法的にも接続助詞とは異なるものですが幸いなことに同様な例として基本別口入力「が」の適用要件に格助詞としての「が」だけでなく逆接の接続助詞としても使用できる例がありますので、これに倣って「て」も複数のチャネルをもつ別口入力であると解釈すれば問題は一応解決します。
これはいわゆる女性語の「でしてよ」だけにとどまらずゲボ爺のセリフ「…よかろうて。」や「…じゃて。」にみられるような終助詞用法においても同様に使っていけます。
ただ「でして」の場合だけに関してみられる重要な特徴をここで申し上げますと、[でs]→て(べたの通常かなキー)のときは「ですて」のように変換されて(そうです天才です-などの例)まずは「です」の確定に重きが置かれますが、[でs]→[て](別口入力)の場合には「でして」の形を返す変換になります。
これは[て]キーが活用まわり(テ形に限らず女性語の『て』も広くバリエーションのひとつとみなして)の受け皿とした変化パーツとして作用し、結果「て」につながるモーメントを想起させる「でして」の方を用に充てさせる措置をとったというカラクリです。
まさにこの派生に対応せんがための[て]キーの格別な機能でありますし、不定語素の行き先を後置シフトで解決する特徴的なシークエンスをうまく利用した"贅沢使い"であるといえます。
また、動詞のテ形ばかりでなく形容詞のテ形(例:広くて強くて辛くて)もありこれにも同様に[て]キーでの別口入力を対応させます。形容詞の場合はすべて清音の「て」が当てられるのが特徴です。
一方形容動詞の場合のテ形では(例:静かで微妙でお転婆で)すべてこの例示のように対照的に濁音の「で」で受けますが、こちらへの対応には別口入力[で]を充てます。
この場合の接続助詞「で」に限っては形容動詞の連用形の一部としての「で」(活用語尾)や断定の助動詞「だ」の連用形の一部である「で」と機能上類似しており活用のバリエーションのありようと不可分だともいえるので奇しくも清音のテ形においての語尾が活用と不可分とする見方とも符合する一面が垣間見れるかと思います。
とは言うもののこの処置は形容動詞の時は濁音化したテ形に対応するのに一般動詞のときの活用の時はあえて対応しないなどという一貫性に欠けるものだと指摘されても当然の事かとは思いますが以下に挙げる例を鑑みたうえで判断を俟って頂きたいということを読者の方には申し上げたいです。
<一般動詞のテ形の別口入力(濁音の場合)の適用が好ましくないとの証左になる例>
漕いで→恋で との判別不全性
跨いで→マタイで・また胃で との判別不全性
死んで→芯で との判別不全性
傷んで→異端で との判別不全性
恨んで→ウランで との判別不全性
…これらの例からもわかるように、別口入力に動詞のテ形(濁音になる方)を認めてしまうのは「で」本来の用法が非常に多岐にわたる(断定の助動詞「だ」の連用形、形容動詞の活用語尾の一部、「そうだ」「ようだ」助動詞の連用形、格助詞など)ため混同されやすく、また「で」は切れ目感が強いのに対し語尾との一体感が強いとされるテ形用法の「で」との文法機能上の違いから変換語句切り出しの不調要因となってしまうことが懸念されますので決して得策ではありません。
これら違いのある両者を同じまな板にのっけてしまうのは無理がありますし、かといって従来の別口入力「で」のほかに接続助詞専用の別口入力「で」を立ててとり捌くのは、同じ「で」が用法によって2つも出てきてしまう(ただでさえ「て」という別口入力もあるのに!)などどだい無理な話で混乱必至ですのでどうしても採用できません。
翻って別口入力「で」の使用が容認された形容動詞の場合、副作用もなさそうだとみなされているのは、形容動詞語幹がもともと名詞に準ずる類のものが多く(いわゆる形容詞性名詞)、「で」と付加入力をつけても語幹部分の自立性が高いので「で」というキーを別口入力することで生じるワード分離性があっても与し易いからなのです。
少し混乱してきたのでテ形の適用範囲をA群(音便形を含む清音のテ形(て))、B群(音便形が濁音のテ形(で))にわけて整理しますと(※清音にも音便形はあります)
<テ形およびデ形の入力対応表>
A群の場合の入力 B群の場合の入力
一般動詞 [て] べたの「で」
形容詞 [て] -(濁音のデ形はない)
形容動詞 -(清音のテ形はない) [で]
のようになることをもう一度確認したいと思います。他にも補助形容詞「ない」のテ形や打ち消しの助動詞「ない」のテ形なども考えられますが、これらについては次回以降に考察してみたいと思います。
(前回のお話の続き)
ゲボ爺「えー、オホン…ッ! エキサイティングなところすまんが、ここはひとまず食事にせんかのう。」
「空腹で議論するとろくな結果にならない…。何かうまいものでも食べながら、じっくり話し合ってみるのもよかろうて。」
…
テヨ姫「そうね、王国のコトノハ奉行の娘…い、いえ旅芸人の片割れともあろうものが、少々取り乱してしまいましたわ。」
デス太郎「フッ…。そのしゃべり方は芸風か。」
「…駅から少しいったところに、伝説のすた丼屋があるから、俺はそこで晩飯をいただく。そちらさん達もそれでいいな?」
ゲボ爺「何じゃと、伝説とな!? この地方に伝わる料理なのか? それは楽しみじゃわい。」
デス太郎「伝説は屋号についた枕詞みたいなものだが…それはいいとして、結構ウマいからまあついてきな。」
……三人は駅の方へ向かって歩いていきました
(すた丼の店内にて)
デス太郎「俺は『すた丼の油そばセット』を。」
テヨ姫「アタシは『ミニすた丼のデザートセット』にするわ。」
ゲボ爺「ワシは『すた丼の餃子セット』にするかな。」
…
ゲボ爺「若いの、酒は飲まんのか?」
デス太郎「何かイベントや特別な祝い事の席でしか飲まない。酒には結構弱い性質(タチ)なんでね」
…
テヨ姫「にんにくをつけて食べるとまた違ったおいしさがあるわね」
デス太郎「お姫様といっても飽くなき食への探究心の方が勝ったようだな。」
…
ゲボ爺「ワシらは姫にお仕えしながらこうして諸国を旅しておるのじゃ。」
…
デス太郎「何?姫僕漫才?そいつは新しい芸風だな!はっはっは!」
…
(こうして三人は食欲も満たされ、楽しい時間が過ぎていくのでした)
デス太郎「さて、腹もいっぱいになった事だし、そろそろ行くか。」
ゲボ爺「なかなかの美味であった。しかし思いだすのう、我が城に伝わる伝説の料理を…。」
(帰路につく三人)
デス太郎「…で、それってどんな料理なんだ?」
ゲボ爺「その名も『極上の旋律を奏でしテールスープ』じゃ。さすがのすた丼の旨さもこれには敵うまい。」
ゲボ爺「…もう一度言うが『極上の旋律を奏<でしテ>ールスープ』じゃて。」
デス太郎「『でして』…ああその『でして』か…。」
「それならコピュラ動詞である『です』と違って、『奏でし』は一般動詞『奏でる』の変化したただの述部だから…別口入力には関係ないから。」
ゲボ爺「ほへっ?」
デス太郎「まっ、さぞや美味いスープなんだろうな。へへっ。」
デス太郎「…ところで、その伝説のテールスープを、実際に味わったことはあるのか?」
ゲボ爺「何を申すか?お城の書庫に眠っている古文書にはそう書かれておるのじゃぞ。それはそれは極上のスープで…」
デス太郎「いや、その書物を手に取って読んだのか?」
ゲボ爺「いや、調理長が宴会の席で大仰にのたまっていたのを好奇心で聞いておっただけだったが、あのご講説は本物じゃったですぞ。」
デス太郎「…じゃあ、それはあんたが直接見聞きしたものじゃないんだな?」
ゲボ爺「まあ…そうじゃがの。」
…それを聞いたデス太郎はやれやれと言った調子で諭すように言いました。
デス太郎「爺さんよ、それは「極上の旋律を奏で<し>テールスープ」ではなくて「極上の旋律を奏で<ける>テールスープが正しい言葉の使い方だからな。」
「…過去をあらわす助動詞『き』と『けり』には微妙な違いがあって、その使い分けがあやふやなケースがよくみられるんだよ。」
「『奏で<し>』の<し>は『き』の連体形で、『き』は自分が直接経験した過去、体験過去をあらわすのに使う。」
「一方<けり>は伝承・伝聞の過去を回想したときに使われ、その連体形は『ける』だ。」
「御大層な料理を紹介したいのならせめて事実にもとづいた発言をすべきだったな。」
ゲボ爺「うぬぅ、伝説のテールスープはあるんじゃあ…確かに存在したのじゃよ…くっ。」
デス太郎「さて、駅についたぞ。機会があったらまた会おう。」
こうして一行は駅で別れて、それぞれの帰路へと向かうのでした。
…
…
…
心地の良い涼風に吹かれながら、デス太郎はすた丼屋でのテヨ姫の一言を噛みしめるように思い出します。
…"[て]キーが無いのなら、作ってしまえばいいじゃない"
デス太郎は歩きながらひとり呟きました。
「[て]キーを新設するとなると、レイアウトとか色々帳尻合わせをしなくちゃならないな…。」
「これはまた、面倒なことになったもんだな…。フッ…。」
(お話はこれで終わりです)
ゲボ爺「えー、オホン…ッ! エキサイティングなところすまんが、ここはひとまず食事にせんかのう。」
「空腹で議論するとろくな結果にならない…。何かうまいものでも食べながら、じっくり話し合ってみるのもよかろうて。」
…
テヨ姫「そうね、王国のコトノハ奉行の娘…い、いえ旅芸人の片割れともあろうものが、少々取り乱してしまいましたわ。」
デス太郎「フッ…。そのしゃべり方は芸風か。」
「…駅から少しいったところに、伝説のすた丼屋があるから、俺はそこで晩飯をいただく。そちらさん達もそれでいいな?」
ゲボ爺「何じゃと、伝説とな!? この地方に伝わる料理なのか? それは楽しみじゃわい。」
デス太郎「伝説は屋号についた枕詞みたいなものだが…それはいいとして、結構ウマいからまあついてきな。」
……三人は駅の方へ向かって歩いていきました
(すた丼の店内にて)
デス太郎「俺は『すた丼の油そばセット』を。」
テヨ姫「アタシは『ミニすた丼のデザートセット』にするわ。」
ゲボ爺「ワシは『すた丼の餃子セット』にするかな。」
…
ゲボ爺「若いの、酒は飲まんのか?」
デス太郎「何かイベントや特別な祝い事の席でしか飲まない。酒には結構弱い性質(タチ)なんでね」
…
テヨ姫「にんにくをつけて食べるとまた違ったおいしさがあるわね」
デス太郎「お姫様といっても飽くなき食への探究心の方が勝ったようだな。」
…
ゲボ爺「ワシらは姫にお仕えしながらこうして諸国を旅しておるのじゃ。」
…
デス太郎「何?姫僕漫才?そいつは新しい芸風だな!はっはっは!」
…
(こうして三人は食欲も満たされ、楽しい時間が過ぎていくのでした)
デス太郎「さて、腹もいっぱいになった事だし、そろそろ行くか。」
ゲボ爺「なかなかの美味であった。しかし思いだすのう、我が城に伝わる伝説の料理を…。」
(帰路につく三人)
デス太郎「…で、それってどんな料理なんだ?」
ゲボ爺「その名も『極上の旋律を奏でしテールスープ』じゃ。さすがのすた丼の旨さもこれには敵うまい。」
ゲボ爺「…もう一度言うが『極上の旋律を奏<でしテ>ールスープ』じゃて。」
デス太郎「『でして』…ああその『でして』か…。」
「それならコピュラ動詞である『です』と違って、『奏でし』は一般動詞『奏でる』の変化したただの述部だから…別口入力には関係ないから。」
ゲボ爺「ほへっ?」
デス太郎「まっ、さぞや美味いスープなんだろうな。へへっ。」
デス太郎「…ところで、その伝説のテールスープを、実際に味わったことはあるのか?」
ゲボ爺「何を申すか?お城の書庫に眠っている古文書にはそう書かれておるのじゃぞ。それはそれは極上のスープで…」
デス太郎「いや、その書物を手に取って読んだのか?」
ゲボ爺「いや、調理長が宴会の席で大仰にのたまっていたのを好奇心で聞いておっただけだったが、あのご講説は本物じゃったですぞ。」
デス太郎「…じゃあ、それはあんたが直接見聞きしたものじゃないんだな?」
ゲボ爺「まあ…そうじゃがの。」
…それを聞いたデス太郎はやれやれと言った調子で諭すように言いました。
デス太郎「爺さんよ、それは「極上の旋律を奏で<し>テールスープ」ではなくて「極上の旋律を奏で<ける>テールスープが正しい言葉の使い方だからな。」
「…過去をあらわす助動詞『き』と『けり』には微妙な違いがあって、その使い分けがあやふやなケースがよくみられるんだよ。」
「『奏で<し>』の<し>は『き』の連体形で、『き』は自分が直接経験した過去、体験過去をあらわすのに使う。」
「一方<けり>は伝承・伝聞の過去を回想したときに使われ、その連体形は『ける』だ。」
「御大層な料理を紹介したいのならせめて事実にもとづいた発言をすべきだったな。」
ゲボ爺「うぬぅ、伝説のテールスープはあるんじゃあ…確かに存在したのじゃよ…くっ。」
デス太郎「さて、駅についたぞ。機会があったらまた会おう。」
こうして一行は駅で別れて、それぞれの帰路へと向かうのでした。
…
…
…
心地の良い涼風に吹かれながら、デス太郎はすた丼屋でのテヨ姫の一言を噛みしめるように思い出します。
…"[て]キーが無いのなら、作ってしまえばいいじゃない"
デス太郎は歩きながらひとり呟きました。
「[て]キーを新設するとなると、レイアウトとか色々帳尻合わせをしなくちゃならないな…。」
「これはまた、面倒なことになったもんだな…。フッ…。」
(お話はこれで終わりです)
(前回のお話の続き)
デス太郎(やれやれ、まったく面倒くさい事に巻き込まれてしまったみたいだな…)
虚を突かれたデス太郎に向かって、女性は問いかけました。
「ごめんあそばせ…アタシはデニヲハランドの旅芸人・テヨ姫といいます。」
「ところで今あなた、アタシたちを前にしてそのご様子…。よもや『面倒くさい事になったな』なんてお思いでして?」
デス太郎「面倒くさい?…ああ、確かに思ったよ。でもそれがどうしたというのか。(ああやっぱり面倒くさい奴だ)」
…それを聞いたテヨ姫は強い調子でこう返してきました。
テヨ姫「…そうよ。それよ。 面倒くさいのよ。」
デス太郎「ん…?ところでなぜ俺の考えていることがわかった?」
テヨ姫「細かい事はいいから。考えてもみなさい。」
「『-でしてよ』を入力するのにいちいち [でs]→[×r]→[てよ]って打たなきゃならないなんて、あんまりじゃないのっ!」
「『です+たい』や『です+太郎』などと違って『でして』は『です』の立派なバリエーションよ。『でし』で切るなんて考えられないわ。」
「『でした』が[でs]→[た]でスムーズに入力できるのなら、『でしてよ』も[でs]→[てよ]で入力できて当然じゃない。」
「1ストロークを甘く見ないでちょうだい。もっと配慮が必要よ。」
お供の者「まあまあ、この者は『デニヲハのいろは』も知らない無作法者のようですから、姫様…ここは穏便に。」
デス太郎「あんたの言っていることもわかるが、生憎別口入力では接続助詞の『て』の採用は見送られたんだ。あきらめるこったな。」
お供の者「うちの姫様は腹を空かせておるのじゃ、その物言い、いささか無礼であるぞ。」
テヨ姫「ゲボ爺は黙っていて」
デス太郎「…いや、待てよ。…そうか、動詞活用形『テ形』という考え方を見落としていたな。」
テヨ姫「どうやら察しの良い若者だったようね。」
デス太郎「今日まで学校文法ではなぜか頑なに忌避されてきた動詞活用形『て・フォーム』すなわちテ形…。」
「世間一般の学校文法で馴染みがあるのは『未然連用終止連体仮定命令』という呪文のようなフレーズ…。」
テヨ姫「でも実用本位の外国人向け日本語教育の現場では動詞活用形を『テ形』『マス形』『ナイ形』のように分類することが普通におこなわれているわ。」
デス太郎「語の形態に基づいた分類方法だな。」
テヨ姫「『です』に続くのは「ので・とは・から・けれど・し』といったものばかり想定していて語の変化を考えていない。活用にももっと目を向けなきゃいけないわ。」
デス太郎「しかし活用と言ったって、『テ形』はそもそも連用形に接続助詞『て』のついたものが元だから単に連結って捉えるのが国文法なんだが?」
テヨ姫「『て』は分離したパーツではなくむしろ動詞の変化した語尾と考えるのが妥当だわ。」
デス太郎「…確かに、形容動詞の活用語尾『な』『だ』に関しては別口入力が採り入れられている。」
「だが爺さんの言った『一苦労でして…』の『て』は接続助詞だからテ形でいいとして、あんたの『でしてよ』が問題だ。」
「『てよ』はいわゆる女性語で使われる終助詞『て』+語調を整える間投助詞『よ』だから、やっぱり分離しているんじゃないか?」
テヨ姫「もう、『木を見て森を見ず』みたいなこと言わないで。」
「実際にこうして不具合が生じているのだから、きちんと対処すべきよ。わかっているの!?…[○R][×r]キーだけでは解決したわけじゃないのよ!」
その時、二人の剣幕に割って入るように、従者の老人が咳ばらいをしながらこう言いました。
ゲボ爺「えー、オホン…ッ! エキサイティングなところすまんが、ここはひとまず食事にせんかのう。」
「空腹で議論するとろくな結果にならない…。何かうまいものでも食べながら、じっくり話し合ってみるのもよかろうて。」
(このお話はあともう少し続きます)
デス太郎(やれやれ、まったく面倒くさい事に巻き込まれてしまったみたいだな…)
虚を突かれたデス太郎に向かって、女性は問いかけました。
「ごめんあそばせ…アタシはデニヲハランドの旅芸人・テヨ姫といいます。」
「ところで今あなた、アタシたちを前にしてそのご様子…。よもや『面倒くさい事になったな』なんてお思いでして?」
デス太郎「面倒くさい?…ああ、確かに思ったよ。でもそれがどうしたというのか。(ああやっぱり面倒くさい奴だ)」
…それを聞いたテヨ姫は強い調子でこう返してきました。
テヨ姫「…そうよ。それよ。 面倒くさいのよ。」
デス太郎「ん…?ところでなぜ俺の考えていることがわかった?」
テヨ姫「細かい事はいいから。考えてもみなさい。」
「『-でしてよ』を入力するのにいちいち [でs]→[×r]→[てよ]って打たなきゃならないなんて、あんまりじゃないのっ!」
「『です+たい』や『です+太郎』などと違って『でして』は『です』の立派なバリエーションよ。『でし』で切るなんて考えられないわ。」
「『でした』が[でs]→[た]でスムーズに入力できるのなら、『でしてよ』も[でs]→[てよ]で入力できて当然じゃない。」
「1ストロークを甘く見ないでちょうだい。もっと配慮が必要よ。」
お供の者「まあまあ、この者は『デニヲハのいろは』も知らない無作法者のようですから、姫様…ここは穏便に。」
デス太郎「あんたの言っていることもわかるが、生憎別口入力では接続助詞の『て』の採用は見送られたんだ。あきらめるこったな。」
お供の者「うちの姫様は腹を空かせておるのじゃ、その物言い、いささか無礼であるぞ。」
テヨ姫「ゲボ爺は黙っていて」
デス太郎「…いや、待てよ。…そうか、動詞活用形『テ形』という考え方を見落としていたな。」
テヨ姫「どうやら察しの良い若者だったようね。」
デス太郎「今日まで学校文法ではなぜか頑なに忌避されてきた動詞活用形『て・フォーム』すなわちテ形…。」
「世間一般の学校文法で馴染みがあるのは『未然連用終止連体仮定命令』という呪文のようなフレーズ…。」
テヨ姫「でも実用本位の外国人向け日本語教育の現場では動詞活用形を『テ形』『マス形』『ナイ形』のように分類することが普通におこなわれているわ。」
デス太郎「語の形態に基づいた分類方法だな。」
テヨ姫「『です』に続くのは「ので・とは・から・けれど・し』といったものばかり想定していて語の変化を考えていない。活用にももっと目を向けなきゃいけないわ。」
デス太郎「しかし活用と言ったって、『テ形』はそもそも連用形に接続助詞『て』のついたものが元だから単に連結って捉えるのが国文法なんだが?」
テヨ姫「『て』は分離したパーツではなくむしろ動詞の変化した語尾と考えるのが妥当だわ。」
デス太郎「…確かに、形容動詞の活用語尾『な』『だ』に関しては別口入力が採り入れられている。」
「だが爺さんの言った『一苦労でして…』の『て』は接続助詞だからテ形でいいとして、あんたの『でしてよ』が問題だ。」
「『てよ』はいわゆる女性語で使われる終助詞『て』+語調を整える間投助詞『よ』だから、やっぱり分離しているんじゃないか?」
テヨ姫「もう、『木を見て森を見ず』みたいなこと言わないで。」
「実際にこうして不具合が生じているのだから、きちんと対処すべきよ。わかっているの!?…[○R][×r]キーだけでは解決したわけじゃないのよ!」
その時、二人の剣幕に割って入るように、従者の老人が咳ばらいをしながらこう言いました。
ゲボ爺「えー、オホン…ッ! エキサイティングなところすまんが、ここはひとまず食事にせんかのう。」
「空腹で議論するとろくな結果にならない…。何かうまいものでも食べながら、じっくり話し合ってみるのもよかろうて。」
(このお話はあともう少し続きます)