主に形容詞などに接続する接尾辞[さ][み][げ]をアソートにして新たな別口入力の採用検討候補とする…の考察を進めていっているところですが、ペンタクラスタキーボードの基本ギミック「三属性の変換」では接頭辞・接尾辞がらみの変換は属性ハがすでに受け持っています。
なのでここへきてまた個別の接尾辞にあえて別口入力をあててしまうのは一元化できていない、整合性が保たれないのではないか…とお思いの方もいらっしゃるかと思います。
接辞がらみの語の変換では、「--的」「--性」「--化」などのような基本的な1文字の接尾辞から「--仕様」「--療法」「--狂騒曲」のような複数字にわたる複合語要素も接辞の延長とみなし、派生語を生むポテンシャルのあるものをひとくくりにして属性ハで変換していきますが、その多くは漢語からなるパーツとなっています。
生産性があるという意味では和語の接尾辞もそれなりにあるのですが「がち」「ぶり」「じみて」「まみれ」など表記的に和語のみからなる接辞成分は全部が全部とは言いませんがあまり名詞的な機能をもってはたらくということが見られにくい傾向があります。
性向・様相・動作形態のニュアンスをもった接辞派生語は漢語からなる語も同様に多数存在するのですが、漢語の場合は「--化を促進する」「--調の画風」のように主語に配置されてアジェンダ化展開する用法も容易に作ることができます。(和語でも「づくし」「つぶし」などの例はある)
議題化というのなら「寝入りばな」などでつかわれる「ばな」も和語でありますが「寝入りばな猫が布団に入ってきた」などのように場面提示を示す副詞的用法と捉えることもできます。
和語成分に総じて言えるのは漢語だけからなる複合辞に比べてやや独立性が低く、また品詞的機能的にも体言使いできる漢語と違って品詞越境的・非定性的であるように感じられます。
これは和語接辞が句接辞だったり何らかの叙述成分の一部であるせいである意味属性ハの枠に収まりきれない性質があるからだといえます。漢語接辞複合辞がそれだけで(抽象)名詞化が完全になされるのとは対照的です。
そういった背景があるためか、接辞まわりへ対応の三属性変換・属性ハは主として漢語複合辞を主眼として作られているものであり和語複合辞の用法は本質的に一筋縄ではいかなそうなのでこうして個別に別口入力を設けるということもそれなりの妥当性のあることだと思います。
またそういった中で特に「さ」「み」「げ」をピックアップしたのも理由があり、「み」「げ」はそれぞれ「味」「気」という漢字表記の語でユーザーが変換したい場合も容易に使い分けられるようにニュアンスを分けるため専用キーでおこなえるという利点があります。
和語接辞の中でも特に頻度も高いパーツだと思いますので、その都度[み⇔味]や[げ⇔気]の選択を強いられるのは面倒ですのでこうしてあらかじめ選択できる機構が備わっていることは手間をなくし非常に重宝すると思います。
もちろん別口入力で[み]を入力したときは「辛み」と変換され、べたの流れで文字を入力したときは「辛味」と変換される…といった具合です。(実際には「さ/み/げ」のアソートなのでもうひと手間あるかと思いますが)
一方「さ」も表記上漢字の使い分けがあるというわけではありませんが、こちらの場合は誤変換のもととなりやすい「差」との使い分けをはっきりさせるために明示的に別口入力することが有効な手段となると考えます。
顕著な例としては「身長差/慎重さ」の例がありますが、[さ]を別口入力したときは度合いを表す接尾辞「さ」を含む語句とはっきりするわけですから、おのずと性質を表す「慎重さ」が適切に選択されるといったカラクリです。
もちろん「さ」との接続に関する語彙情報を関連させるといったメカニズムが必要ですが、少なくともこちらから明示的に接尾辞「さ」の方だよ…とヒントを示すことができるのとできないのとでは仕組みとしては大違いです。
この考えをもう少し発展させていくのなら、助動詞「たい」「ない」と複合接続した「したさ」「なさ」も「--した差」「--な差」との区別に役立つでしょうし、ちょっとこじつけかもしれませんが(言い方として成立するかどうかは別として)他の別口入力とのカラミとして
<別口入力[な]とのカラミ>:律儀な差/律儀なさ
<別口入力[○R/×r](ル形動詞)とのカラミ>:キョドり差/キョドりさ
あるいは
怖がり差/怖がりさ (助動詞がるとの接続)
なるほど差/なるほどさ などの形容詞以外につく「さ」の用法
などが挙げられるかと思います。
どちらかといえば「な」のマーキングによる「律儀な差」は別口入力[な]の領分なので直接関係があるわけではありませんが、[さ]の別口入力と微妙に守備範囲を分ける趣き深い例ですので関連性は少しはあるかと思います。
続く「キョドりさ」や「なるほどさ」もちょっと強引な例かもしれませんがここで重要なのは接尾辞「さ」に接続するのは形容詞に限った話ではなく様態・動作などの一般的概念のあるものならどれでも接続してしまってそれが成り立つという可能性をはらんでいるものだと言えることです。
新語・造語の類はまだ法則が固まっているわけではありませんからこうした逸脱的な使用例も考えられるほど混沌としているものなのではないでしょうか。
とはいえ形容詞(あるいは形容詞型の助動詞)以外のもので接尾語「さ」のつく要素としては動詞の連用形(例:落ち込みさ)やナ形容詞(例:親切さ)のほかに村木新次郎先生の提唱した第三形容詞(例:一流さ/孤高さ)などが主たる品詞のタイプではないかと思われます。
調べていくうちに形状性名詞という言葉にも出会いましたがその意味するところはまだ理解不十分ながらも相通じるキーワードだとは薄々感じ取れます。
いずれにしても程度や状態の概念はなにも形容詞だけの専売特許というわけではありませんのでこの例のように対象を広く考慮しなければなりません。
ただこの運用法に忠実に応えようとすると、形容詞性接尾辞「ぽい」との接続によってできる「ぽさ」や同じく接辞の「らしい」との接続による「らしさ」なども律儀に別口入力[さ]を入力しなければならない手間が意外とバカにできず煩わしいので、これらの場合には別口入力を省略できる措置をとることも用意しておいた方が良いかもしれません。
「ぽさ」はほぼ「っぽさ」の文字列ですし「らしさ」「にくさ」も三文字もあるわけですから誤変換を誘発することもありませんので必須の入力とせずとも抵抗はないかと思います。
次に「げ」に着目してみますとこれも重要な役割としてはひらがなの「げ」と漢字表記の「気」との使い分けがあるかと思います。
入力は同様に別口入力[げ]の時は「大人げない」、べたの入力文字列の場合は「大人気ない」…と「気」のように漢字表記の方に変換されます。
あと場合によっては「なさげ」や「よさげ」のように[さ]-[げ]が連続してしまうケースも見られますが、これは終端部の[げ]に集約してしまって省略できるようにした方が良いでしょう。
さらに文法的特徴からの見地では「--げ」は形容詞・形容動詞だけからだけではなく先述した形状性名詞/第三形容詞/(純名詞ではない)名詞などと接続する可能性もあるというのも留意しておきたいところです。
考えられる例としましては、「満足げ」「不満げ」などのほかにもっとひねったところだと「高尚げ」「スノッブげ」「廃れげ」「虫の息げ」などもなくはありません。
ちなみに「高尚げ」を使用中のIMEで初変換したときは「交渉気」が提示されましたが、これも[げ]によるマーキングで様態状態ニュアンスと結びつくことがわかっていればスマートに「高尚げ」と変換される道筋も示されているのだといえると思います。
文中での使われ方としては形容動詞連体形の「--げな」や終止形の「--げだ」の形や副詞的機能をもつ「--げに」などが特徴的なのでこれを手掛かりに(さ/み/げ)アソートの中から自動選択できれば良いかなと思います。
小補足:「惜しげのない」のような例では別口入力[げ]を省略しても良いでしょう。
最後に昨今独自の用法で発展しtwitterでも注目度の高い接尾辞「み」ですがこれはネット各所での分析・解説も数多くあり興味深く読まさせて頂きましたのでざっとまとめていきたいかと思います。
全部を完全に咀嚼するのは無理ですので、自分的な尺度で抜き出し私見を交えつつ解説させて頂きますと、いきなり結論からになりますが以下のような用法があることがわかりました。
(1)「(○○は)~みがある」のようにイディオム先行的に配置されるもの(名詞用法) と、
(2)文末にくるあるいはそれだけをもって叙述の用をなすもの(叙述用法) と2種類の機能がある。
さらに(1)は
(1.1)存在文の主語になる名詞として
(1.2)そのような性質をもつ場所(名詞)としての用法
(2)については「残業続きでつらみ」「ねむみ」(形容詞的なもの)などの用法がある
…といったことがわかりました。
そして要点を言うと(1.1)のように従来の基本的なの使い方(甘みがある等)に加えてこれまでは結合しなかった語彙のものまで接続して名詞化するという新用法がみられるほか
(2)のように脱名詞化して叙述(主に詠嘆的?)に使われるという<接辞の付加で名詞化>という本来の機能から離れた逸脱的な用法に発展したものもありこちらも新用法である
…のように2つの新用法がネットコミュニケーションの場で生まれてきたという分析があったということです。
次に(従来の場合の)用法について掘り下げていくとともに「み」の位置づけについて今一度整理しておきたいと思います。
ここで「さ」と「み」に接続する語基の傾向について引用を交えながら整理していくと
・<まず「--さ」という派生形は、品詞の機能を形容詞から名詞に変換するだけで、表現主体の感情や感覚など、主観的なものの介入することがもっとも少ないものである。それゆえ、ほとんどすべての形容詞がこの派生形をとることができるのである。>(相原林司 1983)
のように「さ」の接続語基は圧倒的で、生産性の高い接尾辞だといえます。
他方、「み」は接続可能な語基に制限があり、規則も不規則に近いので経験的に覚えるしかありません。
さらに興味深い観点として「み」の実体性・具象性に関する記述を集めてみたところ、
・<「-み」派生名詞は元来モノの性質・状態を実体とみなしてとり扱うので、「{重み/深み/甘み/柔らかみ}{が{ある/ない}/に欠ける}」のようにその「属性の有無や存在」を論じることができる。>(湯廷池、劉懿禛 2010)
・<また、「-み」派生名詞は、「-さ」派生名詞に比べて、名詞化の程度が高いと言える。その証拠に、「-さ」派生名詞は抽象的な属性しか表せないのに対し、「-み」派生名詞は「黄み、白み、赤み、黒み」などのように具象的な実体を表すこともできる、>(湯廷池、劉懿禛 2010)
・<「『−み』という接尾辞が固有に持つ意味は『具体的な感覚』であり、ある種の感覚に言及することが必要になったときに、その感覚の原因となる属性をあらわす語に『−み』を付加することで、その感覚に名前をつける」と杉岡(2005: 79)は説明している。>(水野みのり 2017)
などの例を見つけることができました。
しかし「み」には
・<「-み」は生産性が低いが、拡張的な付加の自由度は高い。「-さ」が品詞を超えて付加されることができないのに比べると、その差異は際立っている。>(ブロガーまつともさん 2012)
のように形容詞以外の語基と接続するポテンシャルをもっているのに加え近年の「み」の新用法でも「新しい出会い」とでもいうべき野心的な接続が開拓されつつあり新たな生産性を獲得する新局面となっています。
出会った例としては「社会人み」「ファンみ」のような人物属性のようなものから「ヴィクトルみがすごい」といった人物そのものの属性感を出している例などがありました。
さらには
・<「化粧品のCM み」のような名詞句や、「ガラステーブルに座った猫を下から見た時み」のような節の末尾に「−み」を付けるという用例が調査3 で得られた。>(水野みのり 2017)
のような発展形もありその表現可能性に驚嘆させられました。これなら「トヨタみ」や「カラマーゾフの兄弟み」などといった使い方も朝飯前に思えてきます。
これは一時脚光を浴びたしょこたん語のかわゆすとかネットスラングのつらたんとかでは終助詞的な語尾デコレーションの域にとどまっていたのが「み」の場合では中盤で説明した(1.1)の用法に新たな拡張性が備わっただけではなく
(2)自体の目新しい新用法もあわせて発展しているという両面での広がりがあり可能性次第では今後標準的なものとして定着していく期待が持てるといった点で特筆すべきことだと思います。
ペンタクラスタキーボードの三属性変換からの視点では<名詞属性>⇔<叙述属性>:属性=よろづ の横断的な用法の多面性があることから、今回の検討のように目的に応じて個別の別口入力を設置して特殊性を併呑切り離し化していくといった措置も理に適うものだと思いますし、
「み」一文字から生み出されるこれだけ生産性の高いものはやはり通常の三属性変換の接辞まわりのよろづ:ハ万だけでは処理に負荷がかかりそうなので特別に別口入力させて分別するのもひとつ意味のあることだと思います。
ただし文脈解析上、かなりの率で存在文の主語としてあらわれるといった構文的特徴をもつことなどの傾向を把握しておく必要がありますし、
語彙的に共起する動詞の傾向の違い<「~さ」派生名詞:思考や伝達といった限定的な内容/「~み」派生名詞:話し手が事柄の内容を、中から外へ抽出しようとする、といった内容に限定される。>(曾寶儀 2017)
といった連接語彙特徴にも留意して適切な構文解析に活かしていくことで「み」を分離独立させた方策を有意義にさせていくメリットが出てくるものだと思います。
…以上で補足にしては長々とアソート別口入力の表記の便宜や文法背景について語っていきましたが、アソートという事で3点ワイルドカードにしなければならないという難点はあるものの、適切な構文解析の助けがあればこれらの特殊例・境界例の接辞をうまくとりまわすことができるので十分検討の余地のある案だと思います。
なお、以下に引用元・参考になった文書・URLをまとめておきたいと思います。ありがとうございました。
・「つらみ」の分析 - それより牛丼の話しようぜ!(まつともさんのはてなブログの記事 2012)
http://matchamttm.hatenablog.com/entry/2012/10/17/005558
・ネット集団語における接尾辞「-み」の語基拡張: 東京外国語大学学術成果コレクション(水野みのり 2017)
http://repository.tufs.ac.jp/handle/10108/90370
・形容詞分類の一試案 : 派生語形成の可否による(相原林司 1983)
・形容詞の名詞化接尾辞: 「-さ」・「-み」・「-め」と「-き」について(湯廷池、劉懿禛 2010)
・「~さ」 派生名詞と 「~み」 派生名詞に関する一考察 -共起表現をめぐって-(曾寶儀 2017)
なのでここへきてまた個別の接尾辞にあえて別口入力をあててしまうのは一元化できていない、整合性が保たれないのではないか…とお思いの方もいらっしゃるかと思います。
接辞がらみの語の変換では、「--的」「--性」「--化」などのような基本的な1文字の接尾辞から「--仕様」「--療法」「--狂騒曲」のような複数字にわたる複合語要素も接辞の延長とみなし、派生語を生むポテンシャルのあるものをひとくくりにして属性ハで変換していきますが、その多くは漢語からなるパーツとなっています。
生産性があるという意味では和語の接尾辞もそれなりにあるのですが「がち」「ぶり」「じみて」「まみれ」など表記的に和語のみからなる接辞成分は全部が全部とは言いませんがあまり名詞的な機能をもってはたらくということが見られにくい傾向があります。
性向・様相・動作形態のニュアンスをもった接辞派生語は漢語からなる語も同様に多数存在するのですが、漢語の場合は「--化を促進する」「--調の画風」のように主語に配置されてアジェンダ化展開する用法も容易に作ることができます。(和語でも「づくし」「つぶし」などの例はある)
議題化というのなら「寝入りばな」などでつかわれる「ばな」も和語でありますが「寝入りばな猫が布団に入ってきた」などのように場面提示を示す副詞的用法と捉えることもできます。
和語成分に総じて言えるのは漢語だけからなる複合辞に比べてやや独立性が低く、また品詞的機能的にも体言使いできる漢語と違って品詞越境的・非定性的であるように感じられます。
これは和語接辞が句接辞だったり何らかの叙述成分の一部であるせいである意味属性ハの枠に収まりきれない性質があるからだといえます。漢語接辞複合辞がそれだけで(抽象)名詞化が完全になされるのとは対照的です。
そういった背景があるためか、接辞まわりへ対応の三属性変換・属性ハは主として漢語複合辞を主眼として作られているものであり和語複合辞の用法は本質的に一筋縄ではいかなそうなのでこうして個別に別口入力を設けるということもそれなりの妥当性のあることだと思います。
またそういった中で特に「さ」「み」「げ」をピックアップしたのも理由があり、「み」「げ」はそれぞれ「味」「気」という漢字表記の語でユーザーが変換したい場合も容易に使い分けられるようにニュアンスを分けるため専用キーでおこなえるという利点があります。
和語接辞の中でも特に頻度も高いパーツだと思いますので、その都度[み⇔味]や[げ⇔気]の選択を強いられるのは面倒ですのでこうしてあらかじめ選択できる機構が備わっていることは手間をなくし非常に重宝すると思います。
もちろん別口入力で[み]を入力したときは「辛み」と変換され、べたの流れで文字を入力したときは「辛味」と変換される…といった具合です。(実際には「さ/み/げ」のアソートなのでもうひと手間あるかと思いますが)
一方「さ」も表記上漢字の使い分けがあるというわけではありませんが、こちらの場合は誤変換のもととなりやすい「差」との使い分けをはっきりさせるために明示的に別口入力することが有効な手段となると考えます。
顕著な例としては「身長差/慎重さ」の例がありますが、[さ]を別口入力したときは度合いを表す接尾辞「さ」を含む語句とはっきりするわけですから、おのずと性質を表す「慎重さ」が適切に選択されるといったカラクリです。
もちろん「さ」との接続に関する語彙情報を関連させるといったメカニズムが必要ですが、少なくともこちらから明示的に接尾辞「さ」の方だよ…とヒントを示すことができるのとできないのとでは仕組みとしては大違いです。
この考えをもう少し発展させていくのなら、助動詞「たい」「ない」と複合接続した「したさ」「なさ」も「--した差」「--な差」との区別に役立つでしょうし、ちょっとこじつけかもしれませんが(言い方として成立するかどうかは別として)他の別口入力とのカラミとして
<別口入力[な]とのカラミ>:律儀な差/律儀なさ
<別口入力[○R/×r](ル形動詞)とのカラミ>:キョドり差/キョドりさ
あるいは
怖がり差/怖がりさ (助動詞がるとの接続)
なるほど差/なるほどさ などの形容詞以外につく「さ」の用法
などが挙げられるかと思います。
どちらかといえば「な」のマーキングによる「律儀な差」は別口入力[な]の領分なので直接関係があるわけではありませんが、[さ]の別口入力と微妙に守備範囲を分ける趣き深い例ですので関連性は少しはあるかと思います。
続く「キョドりさ」や「なるほどさ」もちょっと強引な例かもしれませんがここで重要なのは接尾辞「さ」に接続するのは形容詞に限った話ではなく様態・動作などの一般的概念のあるものならどれでも接続してしまってそれが成り立つという可能性をはらんでいるものだと言えることです。
新語・造語の類はまだ法則が固まっているわけではありませんからこうした逸脱的な使用例も考えられるほど混沌としているものなのではないでしょうか。
とはいえ形容詞(あるいは形容詞型の助動詞)以外のもので接尾語「さ」のつく要素としては動詞の連用形(例:落ち込みさ)やナ形容詞(例:親切さ)のほかに村木新次郎先生の提唱した第三形容詞(例:一流さ/孤高さ)などが主たる品詞のタイプではないかと思われます。
調べていくうちに形状性名詞という言葉にも出会いましたがその意味するところはまだ理解不十分ながらも相通じるキーワードだとは薄々感じ取れます。
いずれにしても程度や状態の概念はなにも形容詞だけの専売特許というわけではありませんのでこの例のように対象を広く考慮しなければなりません。
ただこの運用法に忠実に応えようとすると、形容詞性接尾辞「ぽい」との接続によってできる「ぽさ」や同じく接辞の「らしい」との接続による「らしさ」なども律儀に別口入力[さ]を入力しなければならない手間が意外とバカにできず煩わしいので、これらの場合には別口入力を省略できる措置をとることも用意しておいた方が良いかもしれません。
「ぽさ」はほぼ「っぽさ」の文字列ですし「らしさ」「にくさ」も三文字もあるわけですから誤変換を誘発することもありませんので必須の入力とせずとも抵抗はないかと思います。
次に「げ」に着目してみますとこれも重要な役割としてはひらがなの「げ」と漢字表記の「気」との使い分けがあるかと思います。
入力は同様に別口入力[げ]の時は「大人げない」、べたの入力文字列の場合は「大人気ない」…と「気」のように漢字表記の方に変換されます。
あと場合によっては「なさげ」や「よさげ」のように[さ]-[げ]が連続してしまうケースも見られますが、これは終端部の[げ]に集約してしまって省略できるようにした方が良いでしょう。
さらに文法的特徴からの見地では「--げ」は形容詞・形容動詞だけからだけではなく先述した形状性名詞/第三形容詞/(純名詞ではない)名詞などと接続する可能性もあるというのも留意しておきたいところです。
考えられる例としましては、「満足げ」「不満げ」などのほかにもっとひねったところだと「高尚げ」「スノッブげ」「廃れげ」「虫の息げ」などもなくはありません。
ちなみに「高尚げ」を使用中のIMEで初変換したときは「交渉気」が提示されましたが、これも[げ]によるマーキングで様態状態ニュアンスと結びつくことがわかっていればスマートに「高尚げ」と変換される道筋も示されているのだといえると思います。
文中での使われ方としては形容動詞連体形の「--げな」や終止形の「--げだ」の形や副詞的機能をもつ「--げに」などが特徴的なのでこれを手掛かりに(さ/み/げ)アソートの中から自動選択できれば良いかなと思います。
小補足:「惜しげのない」のような例では別口入力[げ]を省略しても良いでしょう。
最後に昨今独自の用法で発展しtwitterでも注目度の高い接尾辞「み」ですがこれはネット各所での分析・解説も数多くあり興味深く読まさせて頂きましたのでざっとまとめていきたいかと思います。
全部を完全に咀嚼するのは無理ですので、自分的な尺度で抜き出し私見を交えつつ解説させて頂きますと、いきなり結論からになりますが以下のような用法があることがわかりました。
(1)「(○○は)~みがある」のようにイディオム先行的に配置されるもの(名詞用法) と、
(2)文末にくるあるいはそれだけをもって叙述の用をなすもの(叙述用法) と2種類の機能がある。
さらに(1)は
(1.1)存在文の主語になる名詞として
(1.2)そのような性質をもつ場所(名詞)としての用法
(2)については「残業続きでつらみ」「ねむみ」(形容詞的なもの)などの用法がある
…といったことがわかりました。
そして要点を言うと(1.1)のように従来の基本的なの使い方(甘みがある等)に加えてこれまでは結合しなかった語彙のものまで接続して名詞化するという新用法がみられるほか
(2)のように脱名詞化して叙述(主に詠嘆的?)に使われるという<接辞の付加で名詞化>という本来の機能から離れた逸脱的な用法に発展したものもありこちらも新用法である
…のように2つの新用法がネットコミュニケーションの場で生まれてきたという分析があったということです。
次に(従来の場合の)用法について掘り下げていくとともに「み」の位置づけについて今一度整理しておきたいと思います。
ここで「さ」と「み」に接続する語基の傾向について引用を交えながら整理していくと
・<まず「--さ」という派生形は、品詞の機能を形容詞から名詞に変換するだけで、表現主体の感情や感覚など、主観的なものの介入することがもっとも少ないものである。それゆえ、ほとんどすべての形容詞がこの派生形をとることができるのである。>(相原林司 1983)
のように「さ」の接続語基は圧倒的で、生産性の高い接尾辞だといえます。
他方、「み」は接続可能な語基に制限があり、規則も不規則に近いので経験的に覚えるしかありません。
さらに興味深い観点として「み」の実体性・具象性に関する記述を集めてみたところ、
・<「-み」派生名詞は元来モノの性質・状態を実体とみなしてとり扱うので、「{重み/深み/甘み/柔らかみ}{が{ある/ない}/に欠ける}」のようにその「属性の有無や存在」を論じることができる。>(湯廷池、劉懿禛 2010)
・<また、「-み」派生名詞は、「-さ」派生名詞に比べて、名詞化の程度が高いと言える。その証拠に、「-さ」派生名詞は抽象的な属性しか表せないのに対し、「-み」派生名詞は「黄み、白み、赤み、黒み」などのように具象的な実体を表すこともできる、>(湯廷池、劉懿禛 2010)
・<「『−み』という接尾辞が固有に持つ意味は『具体的な感覚』であり、ある種の感覚に言及することが必要になったときに、その感覚の原因となる属性をあらわす語に『−み』を付加することで、その感覚に名前をつける」と杉岡(2005: 79)は説明している。>(水野みのり 2017)
などの例を見つけることができました。
しかし「み」には
・<「-み」は生産性が低いが、拡張的な付加の自由度は高い。「-さ」が品詞を超えて付加されることができないのに比べると、その差異は際立っている。>(ブロガーまつともさん 2012)
のように形容詞以外の語基と接続するポテンシャルをもっているのに加え近年の「み」の新用法でも「新しい出会い」とでもいうべき野心的な接続が開拓されつつあり新たな生産性を獲得する新局面となっています。
出会った例としては「社会人み」「ファンみ」のような人物属性のようなものから「ヴィクトルみがすごい」といった人物そのものの属性感を出している例などがありました。
さらには
・<「化粧品のCM み」のような名詞句や、「ガラステーブルに座った猫を下から見た時み」のような節の末尾に「−み」を付けるという用例が調査3 で得られた。>(水野みのり 2017)
のような発展形もありその表現可能性に驚嘆させられました。これなら「トヨタみ」や「カラマーゾフの兄弟み」などといった使い方も朝飯前に思えてきます。
これは一時脚光を浴びたしょこたん語のかわゆすとかネットスラングのつらたんとかでは終助詞的な語尾デコレーションの域にとどまっていたのが「み」の場合では中盤で説明した(1.1)の用法に新たな拡張性が備わっただけではなく
(2)自体の目新しい新用法もあわせて発展しているという両面での広がりがあり可能性次第では今後標準的なものとして定着していく期待が持てるといった点で特筆すべきことだと思います。
ペンタクラスタキーボードの三属性変換からの視点では<名詞属性>⇔<叙述属性>:属性=よろづ の横断的な用法の多面性があることから、今回の検討のように目的に応じて個別の別口入力を設置して特殊性を併呑切り離し化していくといった措置も理に適うものだと思いますし、
「み」一文字から生み出されるこれだけ生産性の高いものはやはり通常の三属性変換の接辞まわりのよろづ:ハ万だけでは処理に負荷がかかりそうなので特別に別口入力させて分別するのもひとつ意味のあることだと思います。
ただし文脈解析上、かなりの率で存在文の主語としてあらわれるといった構文的特徴をもつことなどの傾向を把握しておく必要がありますし、
語彙的に共起する動詞の傾向の違い<「~さ」派生名詞:思考や伝達といった限定的な内容/「~み」派生名詞:話し手が事柄の内容を、中から外へ抽出しようとする、といった内容に限定される。>(曾寶儀 2017)
といった連接語彙特徴にも留意して適切な構文解析に活かしていくことで「み」を分離独立させた方策を有意義にさせていくメリットが出てくるものだと思います。
…以上で補足にしては長々とアソート別口入力の表記の便宜や文法背景について語っていきましたが、アソートという事で3点ワイルドカードにしなければならないという難点はあるものの、適切な構文解析の助けがあればこれらの特殊例・境界例の接辞をうまくとりまわすことができるので十分検討の余地のある案だと思います。
なお、以下に引用元・参考になった文書・URLをまとめておきたいと思います。ありがとうございました。
・「つらみ」の分析 - それより牛丼の話しようぜ!(まつともさんのはてなブログの記事 2012)
http://matchamttm.hatenablog.com/entry/2012/10/17/005558
・ネット集団語における接尾辞「-み」の語基拡張: 東京外国語大学学術成果コレクション(水野みのり 2017)
http://repository.tufs.ac.jp/handle/10108/90370
・形容詞分類の一試案 : 派生語形成の可否による(相原林司 1983)
・形容詞の名詞化接尾辞: 「-さ」・「-み」・「-め」と「-き」について(湯廷池、劉懿禛 2010)
・「~さ」 派生名詞と 「~み」 派生名詞に関する一考察 -共起表現をめぐって-(曾寶儀 2017)
「でにをは」などの助詞、あるいは形容動詞の活用語尾「だ、な」、そして「でs」やル形動詞の「○R/×r」などの区切りマーカー/機能語配置マーカーとして提案してきた別口入力ですが、
細かい点では文法上も表記上も一種独特のはたらきをする部品もあったりしますのでこの際、新設・別口入力キーの検討候補としてこれらについても考察していきたいかと思います。
今回対象とするのは複数ありまして、ひとつひとつでは採用要件には満たないかもしれないが、アソート(詰め合わせ)的にマルチにふるまう別口入力にすれば使いでもあるかな…ということで3つ要素/語素を選んでみました。
候補に挙がったのはイ形容詞を名詞化する接尾辞「さ」「み」とイ形容詞をナ形容詞化する接尾辞「げ」です。
だいたい名詞化する接尾辞といえば「さ」「み」「け」とでワンセットのように紹介されていることが多いのですが「け」は他の2つに比べると造語力もあまりなさそうですし「茶目っ気」「山っ気」のように「っけ」の形で登場する場合などは誤変換にもさほど惑わされないだろうとの思惑で決め手を欠いたためあきらめ、代わりにより生産力の高そうな「げ」を候補にもってきました。
アソートというのは「さ/み/げ」の選択を入力逐次で登場時にトグルさせるか、変換前文字列が打ち終わって最初の変換キーを押した後提示されるタイミングでその時念頭に置いていた「さ/み/げ」を随意トグルさせていくか、
あるいは変換キーを押したときに文脈を解析して適切な「さ/み/げ」をワイルドカード的にコンピュータが自動選択提示する方式で決めていくスタイルを想定しています。
もちろん一発でユーザーの意に沿った「さ/み/げ」がきちんと当てはめられない場合はさかのぼって修正/選択作業をするという手間がかかりそうですが、
「--(さ)が求められる」「--(さ)を発揮する」「意識の--(さ)がうかがえる」といった場合にはワイルドカードは「さ」を提示するが妥当ですし(語彙的ヒントからの類推)、
「とても--(み)がある」「ほのかに--(み)が感じられる」などのときには「み」を有力候補とするのが良さそうです(先行副詞との係りを考慮)。
さらに「げ」では「--(げ)な少女」「--は--(げ)だ」の形から読み取って「げ」あてるのも、ナ形容詞の前に来る・ナ形容詞あるいは助動詞「だ」の述語文-という文のタイプから導き出すこともできます(配置的・文法的に可能性のある辞を選択)。
こういった具合にうまく処理していくことができれば、あいまいなケースを除いてさらに学習効果なども加味すればいくらかは心外な誤変換に出くわすことも減ってくるかと思います。
最後はやはりトグルで微調整をするという道が残っておりますが、おまかせ気分的なユーザー心理からはトグル選択時の提示はより適切な順序でオーダーされたトグルの方が機械的に(さ→み→げ)と循環するやり方よりもスマートではないかと思います。
選択決定のインターフェイス的な細かな挙動も変換キー連続押しでの変換候補の提示を進行しつつもそれとは別系統で「さ/み/げ」の局所的なチューニングをこの3ウェイ別口入力のキーを押す限りにおいては独立して個別箇所に変換を作用させていく仕組みがあれば流れを邪魔せずにいい具合なのではないでしょうか。
それまでの変換キーでの候補提示には影響を最小限に抑えて別口入力ではあくまでも「さ/み/げ」細部の微調整にとどまるというミクロな調整です。
通常変換各々の分節フォーカスも保存しつつ、別口入力は別口入力で変換文全体に立ち返って「さ/み/げ」の該当部分だけにひと跳びで作用させてそののち再び変換候補連続押しのフェイズに入ったら何事もなかったかのように分節チャンクの適宜提示は依然として継続していく…という形、つまり別口入力も変換キーでの入力も互いに干渉することなく並行していく…
という違和感のない所までインターフェイスを作り込んでいければ何も言うことはありません。
一方、「め」が候補に入らなかったのは同じような機能をもつ「げ」にその座を譲ったためです。この二つは競合するので二つとも入れるわけにはいかないのでより注意深く吟味してより生産力の高そうな「げ」を重く見ました。
単に頻度だけからいえば「め」の方をとる方が合理的かもしれませんが「げ」には「エキサイティングげ」「アレげ」といった語幹カナ+接尾辞「げ」の形のものも表記上では十分あり得ますし、
「げ」よりわずかでも頻度の高い「め」を入力する段においてはより見かけやすいものは特段の配慮なく標準のべた入力の流れで打鍵し、ちょっとマイナーなものは意識して別口入力を伴う入力にするというのが異質な誤変換を生み出さない構えとしても至極自然な考え方だろうかと思いますのでこのような判断になりました。
ただ「げ」はその性質ゆえに同じく別口入力の「な」「だ」と連続してしまう点が地味に煩雑ではありますが、「さ」も「み」も格助詞「が」「を」にはすぐつながりますし多少の違いはあれど別口入力の連続打鍵になってしまうのは致し方ない事だろうと思います。
一応キーボード盤面左辺縁部と離れたところにキーがあるので盤面手前の親指で別口入力のキー群が並ぶ領域でごにょごにょやるわけではないのが救いといったところです。
…以上でアソートとしての別口入力[さ][み][げ]について大まかな見解を述べていきましたが、これで終わりというわけではありません。
「み」には漢字表記の方の「味」もありますし同様に「げ」も漢字表記の「気」が慣用的に適している、あるいはユーザーの指向で漢字の方を使いたい…などの使い分けが求められる場合もあります。
また語意/用法/機能の面からも微妙なニュアンスの違いであったりとか言語観の背景であったりとかの説明もさらに突っ込んで書き加えていく余地も残されています。
これらの課題・補足は追記として次回に記事をいずれ上げようかと思っておりますのでこの稿で言い足りなかった種々の考察点などをまとめていきたいかと思います。
アソートといってもどれもが機能的にも語彙的にもユニークなものですので、こうして一段別に別口入力の検討候補にのぼるにふさわしい価値をもった辞であると思います。
ですのでやはり深く掘り下げていくことが必要でしょう。追記完成までしばらくお待ちください。
細かい点では文法上も表記上も一種独特のはたらきをする部品もあったりしますのでこの際、新設・別口入力キーの検討候補としてこれらについても考察していきたいかと思います。
今回対象とするのは複数ありまして、ひとつひとつでは採用要件には満たないかもしれないが、アソート(詰め合わせ)的にマルチにふるまう別口入力にすれば使いでもあるかな…ということで3つ要素/語素を選んでみました。
候補に挙がったのはイ形容詞を名詞化する接尾辞「さ」「み」とイ形容詞をナ形容詞化する接尾辞「げ」です。
だいたい名詞化する接尾辞といえば「さ」「み」「け」とでワンセットのように紹介されていることが多いのですが「け」は他の2つに比べると造語力もあまりなさそうですし「茶目っ気」「山っ気」のように「っけ」の形で登場する場合などは誤変換にもさほど惑わされないだろうとの思惑で決め手を欠いたためあきらめ、代わりにより生産力の高そうな「げ」を候補にもってきました。
アソートというのは「さ/み/げ」の選択を入力逐次で登場時にトグルさせるか、変換前文字列が打ち終わって最初の変換キーを押した後提示されるタイミングでその時念頭に置いていた「さ/み/げ」を随意トグルさせていくか、
あるいは変換キーを押したときに文脈を解析して適切な「さ/み/げ」をワイルドカード的にコンピュータが自動選択提示する方式で決めていくスタイルを想定しています。
もちろん一発でユーザーの意に沿った「さ/み/げ」がきちんと当てはめられない場合はさかのぼって修正/選択作業をするという手間がかかりそうですが、
「--(さ)が求められる」「--(さ)を発揮する」「意識の--(さ)がうかがえる」といった場合にはワイルドカードは「さ」を提示するが妥当ですし(語彙的ヒントからの類推)、
「とても--(み)がある」「ほのかに--(み)が感じられる」などのときには「み」を有力候補とするのが良さそうです(先行副詞との係りを考慮)。
さらに「げ」では「--(げ)な少女」「--は--(げ)だ」の形から読み取って「げ」あてるのも、ナ形容詞の前に来る・ナ形容詞あるいは助動詞「だ」の述語文-という文のタイプから導き出すこともできます(配置的・文法的に可能性のある辞を選択)。
こういった具合にうまく処理していくことができれば、あいまいなケースを除いてさらに学習効果なども加味すればいくらかは心外な誤変換に出くわすことも減ってくるかと思います。
最後はやはりトグルで微調整をするという道が残っておりますが、おまかせ気分的なユーザー心理からはトグル選択時の提示はより適切な順序でオーダーされたトグルの方が機械的に(さ→み→げ)と循環するやり方よりもスマートではないかと思います。
選択決定のインターフェイス的な細かな挙動も変換キー連続押しでの変換候補の提示を進行しつつもそれとは別系統で「さ/み/げ」の局所的なチューニングをこの3ウェイ別口入力のキーを押す限りにおいては独立して個別箇所に変換を作用させていく仕組みがあれば流れを邪魔せずにいい具合なのではないでしょうか。
それまでの変換キーでの候補提示には影響を最小限に抑えて別口入力ではあくまでも「さ/み/げ」細部の微調整にとどまるというミクロな調整です。
通常変換各々の分節フォーカスも保存しつつ、別口入力は別口入力で変換文全体に立ち返って「さ/み/げ」の該当部分だけにひと跳びで作用させてそののち再び変換候補連続押しのフェイズに入ったら何事もなかったかのように分節チャンクの適宜提示は依然として継続していく…という形、つまり別口入力も変換キーでの入力も互いに干渉することなく並行していく…
という違和感のない所までインターフェイスを作り込んでいければ何も言うことはありません。
一方、「め」が候補に入らなかったのは同じような機能をもつ「げ」にその座を譲ったためです。この二つは競合するので二つとも入れるわけにはいかないのでより注意深く吟味してより生産力の高そうな「げ」を重く見ました。
単に頻度だけからいえば「め」の方をとる方が合理的かもしれませんが「げ」には「エキサイティングげ」「アレげ」といった語幹カナ+接尾辞「げ」の形のものも表記上では十分あり得ますし、
「げ」よりわずかでも頻度の高い「め」を入力する段においてはより見かけやすいものは特段の配慮なく標準のべた入力の流れで打鍵し、ちょっとマイナーなものは意識して別口入力を伴う入力にするというのが異質な誤変換を生み出さない構えとしても至極自然な考え方だろうかと思いますのでこのような判断になりました。
ただ「げ」はその性質ゆえに同じく別口入力の「な」「だ」と連続してしまう点が地味に煩雑ではありますが、「さ」も「み」も格助詞「が」「を」にはすぐつながりますし多少の違いはあれど別口入力の連続打鍵になってしまうのは致し方ない事だろうと思います。
一応キーボード盤面左辺縁部と離れたところにキーがあるので盤面手前の親指で別口入力のキー群が並ぶ領域でごにょごにょやるわけではないのが救いといったところです。
…以上でアソートとしての別口入力[さ][み][げ]について大まかな見解を述べていきましたが、これで終わりというわけではありません。
「み」には漢字表記の方の「味」もありますし同様に「げ」も漢字表記の「気」が慣用的に適している、あるいはユーザーの指向で漢字の方を使いたい…などの使い分けが求められる場合もあります。
また語意/用法/機能の面からも微妙なニュアンスの違いであったりとか言語観の背景であったりとかの説明もさらに突っ込んで書き加えていく余地も残されています。
これらの課題・補足は追記として次回に記事をいずれ上げようかと思っておりますのでこの稿で言い足りなかった種々の考察点などをまとめていきたいかと思います。
アソートといってもどれもが機能的にも語彙的にもユニークなものですので、こうして一段別に別口入力の検討候補にのぼるにふさわしい価値をもった辞であると思います。
ですのでやはり深く掘り下げていくことが必要でしょう。追記完成までしばらくお待ちください。