畳語・重言・オノマトペ…重ね言葉はいろいろありますが今回注目するのは
同じものを複数煎じ詰めて畳語に至るものというよりは、カタチ上複数重畳でありながらもその各要素を見ると上位範疇-下位範疇になっていたり主従関係になっていたり副詞-述語になっていたりするなど
機能的に見て各要素間で微妙に役割の異なるものが同居並列して畳語になるものをとりあげてみたいと思います。
まずわかりやすそうなところから攻めてみますと 映画映画・ブログブログ・エッセイエッセイ みたいに題目が重畳的になっているものがあげられると思います。
これは何らかのメディア=情報伝達媒体=の種別をあらわす範疇を題目と捉えての先頭要素とそれを表出するうえにおいてどのようなスタイルをとるかをあらわす後続要素が偶然にも一致するというところから面白い効果を出している例だと言えるでしょう。
同じ理屈で他にも探してみると
マンガマンガ・テレビテレビ・雑誌雑誌・カタログカタログ・小説小説・音楽音楽・美術美術・ツイートツイート・研究研究・議論議論・放送放送・地図地図・新聞新聞・演劇演劇・教育教育・ゲームゲーム・辞典辞典・カレンダーカレンダー・ソングソング・女優女優
などがあります。
単独重ねだけでは畳語として成り立ちにくそうな語であっても、適切にひと続きの引きワードが先行している場合にはその助けを借りて首尾よく重ね言葉にできるものもあります。
土佐日記日記・ラジオ体操体操・上毛かるたかるた・キューバ危機危機・タピオカ人気人気・インド支持支持・原価計算計算・心中未遂未遂
といったところでしょうか、実際見聞きするかどうかは問いませんがまあこう言えなくもないなという感じです。
さらには、ファッションファッション・不満不満・アイドルアイドルのように修飾-被修飾の関係となっていると捉えることのできるものもあります。
(うわべだけのファッションでやっている)ファッション、(実のところ不満な・寄せられた)不満、(庶民派ではなくあくまで偶像として神格化された)アイドル
みたいな読み解き方でありますが、これらはちょっと苦しい例たちでありもっとバックグラウンドの文脈を合わせて盛り込んでいかないとちょっと初見ではわかりにくい例かもしれません。
あとは副詞的な連用修飾関係になっている叙述成分の表現をひねり出してみますと、
徹底徹底・結構結構・正直正直・事実事実・通常通常・精一杯精一杯・若干若干・本日本日・無事無事・存外存外・再び再び
などがあります。副詞には「キチンと」「次第に」「決して」などのように末尾に助詞のつくものばかりでなく、漢語単体の副詞や時の副詞など助詞抜きで接続するものが少なくなくこのような洒落を生み出す素地となっているのですね。
少々固い文例が続いてしまったので最後に商品名やタイトル名などから親近感のありそうなものをモジって終わりにしたいと思います。
チョコレート効果効果
ブルーレットおくだけ置くだけ
アンメルツヨコヨコ横
のんある気分気分
鼻セレブセレブ
コーラショックショック
コアラのマーチマーチ
今日から俺は今日から俺は
あたしンちあたしンち
ダンベル何キロ持てる何キロ持てる?
おそ松さんおそ松さん
以上ちょっとクドい記事になってしまいましたがお粗末様でした。
ありえんやばい
好き止まらん
意味わからんすぎる
賞味期限過ぎすぎ
教えろください
ほしいしろ
山程あるエモい説あるエモい
ふとましい言わない
イケ散らかして
有難うましゅめる
うらやまけしからん
天然ボケにもほどがありやがるです
美味しゅうございます
おバズりあそばしてる
尊いしんどい
おまけ例:
違和感仕事しろ: 抽象概念に仕事しろというのが面白い
ぬっころす: 促音形複合動詞
…以上がWebから集めてきた、または以前から耳にする複合動詞のなかで面白いと思ったものたちであります。
複合動詞というか、複合形容詞であったりだとか、わざとちぐはぐな(教えろください)みたいな組み合わせが独特の効果を生んでいるのもあります。
こちらの方は動詞の複合というよりも、もとは別々であったパーツ2つの性急な動詞重ねの連結が結果としてひとつの連語的な複合動詞に見えなくもない一体性を獲得している様相を呈しているように見受けられます。
何かの叙述を逐次的に言い表した複文とひとつの複合動詞として一体句を形成しているのとの境界にあるようなユニークな例だと思います。
一般に、複合動詞には語彙的複合動詞と統語的複合動詞とがありますがこういった例は継次的複合動詞?立て続け複合動詞?とでもいうのでしょうか、なかなかに新しい立ち位置の複合動詞が認められつつあるかと思いますが皆様いかがでしょうか。
ところでちょっと関連薄いのかもしれませんが昨今使われる「--みある」みたいに助詞省略の一体句を作りたがる傾向が、「ある」「深い」みたいに強い叙述パーツとの結合で助詞抜き連結がみられるだけでなくて、
言い換えると[体言-用言]のパターンだけでなく[用言-用言]のパターンにも強い連結を試みてみよう、という潮流を感じる現象ですねこれは。
<2020.12/11追記事を投稿しました>
イケ散らかす派生形ほか/複合動詞ひとりごちる/ぴえんもあるよ - P突堤2
第2弾記事です。良かったらこちらものぞいてみてくださいね。