金曜日にスペイン戦があるってことは知ってたけど、朝の4時からって全く知らなかったW杯音痴の自分が情けなかった。朝起きて番組表にスペイン戦がないのを確認して、あれ?も、もしかして終わってるの?負けたんでしょ?なにー?勝ったぁ?てな感じの笑顔でワイドショーを見ている時に電話が鳴った。
最近は部屋の電話が鳴る時に重要なことだった試しがない。
「もしもし・・」男性の声が僕の名前を確認する。その人が自分の名前を名乗った。従兄弟だった。その瞬間絶対に悪い知らせと確信した。母の妹の長男から電話がかかってくることなど一度も無かったのにかかってきたって事は叔母さんの身に、入院くらいだったら電話など来ないに違いない。
「母が昨夜急逝しました。」という言葉に襲われた。
まだついこの前元気な声で母の様子を聞かれたばかりだった。
みぃが家にいる時に来て彼女と散々元気な会話を交わし笑顔の報告を受けたばかり。
お風呂で亡くなっていたという事だった。
昭和20年生まれで僕の9歳上。母の実家が僕の幼い頃の主たる居場所だったので彼女は全く僕のお姉ちゃんだった。大好きなお姉ちゃんのままな人なのでショックはかなり大きい。腰に力が入らないくらいの状態でみぃに一番に連絡した。自分の思いを抱えたまま母に知らせるべきかどうかを相談するため。やはりまだ今日は知らせず、明日になってからお通夜の準備をしながら知らせるほうがいい。と決めた。
妹に報告し、母の弟である叔父さんに改めて母への対処を知らせるべく電話した。
いつもように薬とビールとパンを持って母の部屋に行く。
変わらない母の様子。本当は知らせなくてはならない大事な事なのに僕はその言葉を何度も何度も飲み込んだ。
いつも親切にしてくれて時々覗き込んでくれる、着る物なども差し入れてくれていた優しい妹がもういない・・・
母の後ろ姿が可哀想で仕方ない。お母さんごめん。言わなきゃいかんのだけれど明日言うね。
金曜日だから部屋にあったゴミを片付けて部屋を出た。
「行ってらっしゃい」の母の声に背中を押されて涙が出る。
知らせなくちゃ・・・