満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

天切り松 作:浅田次郎

2007-10-18 | 本の紹介


天切りとは…
家人が寝静まった頃に瓦屋根を剥いで…
猫の様にストンっと廊下に降り立ち
廊下の板の目を暗闇で見極め
抜き足差し足で寝室まで向かう

寝ている家人の寝息と呼吸を合わせ
そっとお宝を頂き、来た道を戻る
あまりに見事な泥棒さんなので
家人も盗まれた事に気付くのが遅れる
っという盗みの方法の一種である

大正ロマンの花咲く頃に
大親分の目細の安に拾われた松蔵こと天切り松が
大正・昭和・平成の世を渡り
ムショで語る人情話である

聞き手はムショに囚われたケチな野郎どもだけにあらず
房を監視する看守に…はては警察署長まで
天切り松の話を聞きたくって正座をして聞きにくる

所詮、人様に大見得切って語れる様な職業じゃ~ござんせん
が…あっしらの時代には「仁義」ってもんがあった
っと天切り松のジー様はおっしゃいますが・・・

お江戸の時代にだって盗人に仁義なんぞありゃ~しませんがな(笑)
しかし、この天切り松が語る「仁義」「礼節」「人情」には
ナゼか胸をドンっと打つ様な響きがありやす

「今の我々の時代が…
盗人に説教されて、胸にドンっと来るほど
ヒドイ世の中だって事でしょうかねぇ~」


人生、そんなに苦労もせずに悠々自適に過ごしたジー様に
説教受けても胸に来るモノなんざ~ござんせん。
泥棒や人殺しのジー様に説教受けたって同じでござんす
同じ泥棒でも極悪人から銭を盗み
困っている人に銭をばら撒く義賊だから胸にドンっと来るんでしょうかねぇ~

天切り松の話を聞いて
海千山千の極悪人達が簡単に涙を流し
改心するシーンが余りにも多く…
ウンザリしながら読む人も多いと思いやす

しても…
自分の孫くらいの歳のヤツらに
説教たれるジー様が、
本の中にしか居なくなったのも事実でやんす

そこんところ・・・
浅田次郎のマジックに酔いしれてみるのも
一興かもしれやせん(笑)