満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

水域(上・下巻):漆原友紀

2011-03-29 | 漫画紹介
 

雨が降らない。降水確率0%。
取水制限も発令され、暑い暑い夏が続く街。

毎日あきもせずに降る雨。しかし降った雨は溜まらない。
そこは、男の子とお祖父さんの2人しか住んでいない村。

この二つの世界を一人の少女「千波」が、行きつ戻りつ繋ぐ。

雨は降ったほうが良いけれど、毎日は…
日差しは注いだほうが良いけれど、やっぱり雨には降ってほしい。

そんな中庸なバランスを求めるのは人間だけなのかもしれない
人間は自分が生活し生きるために、丁度良い状態を神に願うのだが
願われた神に丁度良さなど解るはずもない。

ダムを作るために水の底へ沈んだ村と、そこで生活していた人達の話

蟲師を描いた漆原友紀の新作。本屋で見つけて、少し嬉しかった(笑)
蟲師の唐突な終わり方がなんとも腑に落ちなくって、
体調でも壊したんっじゃないかと心配してたから、新作が出たのは彼女が元気という証拠。

今回の作品も、相変わらず…湿った匂いがした(笑)
でも嫌いな匂いじゃない、湿っているけど爽やかな水の香りがする。

地震で原子力発電所のモロさと怖さをあらためて実感したが
水力発電も、大きな場所が必要になり、大勢の人が悲しい思いをするのだの。

人間っぽい中庸さを求めるのなら、火力発電が良いのかもしれないけれどこれはお金が掛かる。
危険を承知しながらも原子力に頼るしか、やっぱり道はないのだろうか

なんとなく、工事が中断されている八っ場ダムを思い浮かべてしまう
最初は、そんなにお金が掛かるのなら中断して止めた方が良いのだろうと思ったが
そこに住んでいた人達の「気持ち」を私は考えたこともなかった。

この「水域」を読み、そこに暮らしていた人達の思いに触れた気がした。
決断を迫られ、その決断を飲み込み、全員で移住したのに
家や学校や人々が工事でバラバラになったにも係らず、そこにダムが出来なかったら…
いったい自分達は何のために、あんなに考えて悩んで移動を決意したのか?っと
思わずには居られないんじゃないだろうか?

本書で雨が降らずダムの水が干上がってしまい
自分達の住んでいた家や学校が、ダムの底から見え出したときに
なんとも言えない焦燥感を感じたけれど…
また雨が降り、満々とした水が溜まったダムの姿を見て
主人公の千波の母が「こうして見ると綺麗なのよね。くやしいけれど」っと
思わず言った言葉を聞きつつ、
千波の祖母が「不思議だね こんなに近くに来たのに もう…行けないんだ
あんなに深い、水の底にあるんだ」っといった言葉が印象深い。
どちらの言葉も本音なのだろう。

自分達を苦しめたダムだけれど、自分達の苦労が誰かの役にたっていると思う自負もある
その気持ちが支えとなって、故郷は水の底だけれど、別の地でも新たに頑張れるのだと思う。
完成したダムを見たからこそ、諦めもつき、
前に前進する気持ちも生まれたのだと感じた。

それなのに八つ場ダムのように、何時までも無意味に破壊された村を見つめる日々となったら
なんとも言えない虚しさが心に重しのように何時までも残るような気がする。

ところで、関西の電圧は60ヘルツ、関東は50ヘルツ…なぜ同じ日本で違うの?
っと思ったので調べてみたところ
なんと関西はアメリカのGE社から60ヘルツの発電機を購入し
関東はドイツのAEG社から50ヘルツの発電機を購入した違いらしい。
まさかっ!?という真実にビックリした。

もちろん関西と関東で電気を送り合うことも出来るのだが、変換施設が3ヶ所しかない
EUですら他国と手を結び同じ規格にしているのに、なぜ日本はしないんだろう???

これからの電力は、作るうえで誰かを悲しませるような施設ではなく
太陽の光で使う分を自分で作るという方法が主流になるかもしれんな~。
そういえば北海道の実家では、屋根にソーラーパネルを貼っていたっけ。

実家から1時間程度の所に支笏湖という湖がある。透明度の高い湖なんだが
そこにボートを浮かべ、水底を覗くと自分が空中に浮かんでいるような錯覚がおこる
水底に沢山の樹木が見えるからだ。
ダムに溜められた水の透明度が高かったら、水底に家や道路が見えるのだろうか

そんな色々なことを考えさせてくれた漫画であった。
機会があれば是非、一読あれ~


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