今朝は 朝ごはんも 立ったまま食べ
と云っても リンゴを1/4個食べただけ
とにかくじいの食事に時間がかかる
誤嚥防止のため 汁ものはとろみ剤で とろみをつけるのだが
これがうまくいかない
薬飲ませるのにも 水にとろみ剤
お茶にも とろみ剤
しかも 牛乳系 味噌汁系と
その他の水分は とろみ剤の種類が違っていて
かなり混乱した
だから あたふたしてる間に 料理は冷める
時間ばかりかかる
そして ヘルパーさんは時間通りに来るので 急がなきゃならない
ヘルパーさんが帰ったあと 今度は 保健所の立ち入り検査
知らない人が来た
担当が 変わったらしい
女性だったが じいに尋ねていることがどうも 的外れに聞こえてならない
「こんな病気があるって 知っていました?」
5年もたった今 それを聞いて意味があるのか?
「今は 自分がどうなるか 理解してます?」
あんた 随分と無神経なこと聞くね …
「娘さんは? 何に困ってます?」
「生活に困っています」
直球で返す。「でも 頑張れるところまでダメだったら 生活保護も考えてます」
包み隠さず云うと
「生活保護? 多分 それは 受けられませんよ」
さらりと 云われた
「こんな立派な家がある人は 受けられませんよ」
家を売れってことらしい
家を売る…
じいが 最後に築き上げたこのついの住処を 売れ?
「ああ そうなんですか生活保護は ダメなんですね」
イラッとしつつ 「じゃあ 内職でも探したいんですが ありますか」
「内職は 今の時代ないですよ」
「じゃあ 夜働きます」
「それはやめた方がいいと思います 娘さん 精神を患ってますよね 無理です」
「援助してくれる身内はいないんですか」
いねーよ
「じゃあ … 飢えて死ぬしかないじゃないですか」
「まあ そのうち娘さんがバイトしますよ 母子家庭は今が大変でも
子供が成長するにつれて どんどん楽になりますから」
バイト
バイトっていったって 学校が終わってから?
この家に帰ってくるバスがないんですけど
もう 云いたくなくなってきた
全く他人事であり 楽観的であり 思いやりのカケラもなく
「困ったことがあったら 話は聞きますから」
その人から出てくる言葉は 単に事務的なことだけ
話したところで 腹が膨らむのか?
おまえは 適切に 指導が出来るのか 人としての 最低限の心があるのか?
殴ってやらねば 判らぬようだな
その人は 絶望だけを置いて 30分で帰っていった
今まで来ていたひとは じいが今できる事
事細かに確認し 「前回の訪問のときよりも 体調は良好になっている」
という衝撃的な 決定書を送り付けてきた
進行性の病気なのに 介護度が軽くなったのだ
あれも相当いかれていると思ったが 今日のひとは そんな問診もひとつもせず
なんだったのか 全く理解不能
とにかく 「最悪 生活保護」という選択肢は消え
「飢えて死ぬ」という選択肢が残った
帰り際にそのひとは 云った
「まあ ホントに立派できれいなお家」
築20年は経ってますけどね
この家が 立派できれいに見えるんだったら それは
私が 毎日 丹念に 掃除している所為だよ 馬鹿者め
その人が帰って 私も じいも 呆然自失状態
しばらくして じいが云った
「●●●●だよ…」
それから 一時間もしないうちに入院の準備
介護タクシーがきて じいは お昼の時間に間に合った
私は近所の蕎麦屋で 昼を済ませ
病室に戻ると じいは 浣腸中
排便コントロールにも支障をきたさず
病院のスタッフは 準備万端だ
いい病院に 行きついたことは幸運だったと思う
それから じいと少し話して 最終のバスで里山に戻ることになったのだが
じいを 無事送り届けたという安堵と 昼間の衝撃と
その時の じいの言葉が よみがえってきて 頭を抱えた
「あまり 先の事まで気に病むな この家にいる限り 雨露は避けられる
正しいことをしていれば 悪い事は起こらない 思いつめたら ダメだよ…」
頭を ぐちゃぐちゃにかき混ぜて 声を 押し殺した
「生活保護は 受けられませんよ」
「協力してくれる 身内はいないんですか」
「娘さんが 助けてくれますよ」
どれも これも 気に入らない
はらわたが煮えくり返る
発狂したくなる
闇に引きずり込んで ズタズタに 引き裂いてやりたい
涙が ボロボロこぼれた
貧乏人は 死ね というのか
難病患者は もう 知らんというのか
どこまで 私たちを 馬鹿にする?
じいにも 人格的な問題がある
私にも 破局的な問題がある
でも あんなに 一生懸命生きている人間を
どうして 見捨てるようなことが 云えるんだよ!
どうして 見捨てることが できるんだよ!
あんたら それで 仕事を果たしたつもりか
それで 自分が 幸せになれるのか
ここで 必死に息をしている 父を
見捨てて 自分だけ 幸せで それでいいのかい?
地獄に 堕ちろ
私はもう おまえたちの幸せなど 考えない
ここにいる弱者を 必ず 救う
救えるのは 心だけでも もう 覚悟は 整ったよ
この手で 救いとめることができるなら どんなことだって やってやる
また 明日から 仕事が続く
今は それが救いだ。