想い事 家族の記録

難病の父と生きる
鬱病
ふたり暮らし

これはただの言葉じゃ救えない。一番辛い決断に、おまえは動けないでいるのに、笑顔ひとつ引き出せないで、友達だなんて云えないよ。

2025-01-20 21:38:18 | 日記

今日は早朝出勤。
たった2時間しか寝てない重い身体を引きずりながら、「これで人間としての尊厳は保てているのか?」と自問しつつ、業務をなんとかやり終えた。


帰宅後、
癒しを求めて枕もとの
ぬいさんたちを一斉に日干し。
ふと目に留まるのは、
長年の相棒、
うさぎのうーちゃんだ。
この子を見るたび、思うことがある。

「この子、絶対そのうち動く」


『運命のクリスマスと、
うーちゃんのサバイバル』

うーちゃんは、
私が7歳の時のクリスマスに、
ぶたのぶーちゃんと一緒に
家にやってきた。
二匹揃って可愛いぬいさんだった。
だが時が経つにつれ、
他のぬいさんたちは
淘汰されていった。
ぶーちゃんですら
行方知れずになった。
100匹以上の住人たちが、
次々と時間の波に飲まれ
消え去った中、
うーちゃんだけが生き残った。

引っ越し?
荷物の処分?
そんな試練もものともしない。
彼女は、どんな苦難も
華麗にくぐり抜け、
私の隣に居続けた。


『伝説、始まる』

あれは、
信州のこの家に引っ越してきた
ある春の日のこと。
窓からは優しい陽射しが降り注ぎ、
平和そのものだった。
その瞬間を目撃するまでは。

うーちゃんが
歩いていたのだ。


「ちょ、 待って? 
うーちゃん、歩いてるやん!」


短い手で、
ゆらゆら揺れる
レースのカーテンを
そっと撫でながら、
なんとも軽やかな足取りで
ルンルンと歩く彼女。
呆然と立ち尽くす私に
気づいたうーちゃんは、
振り返った。
その表情は明らかに
「しまった」という顔をしていた。
そして次の瞬間、
まるで何事もなかったかのように、
パタリと廊下に倒れ、
完全に「ただのぬいさん」に
戻ったのだ。

「いやいやいや、
ごまかせると思うな!
見たぞ! 君、今、
歩いてたよな!!」

全力で抗議してみたが、
うーちゃんは黙ったまま。
完全にぬいぐるみのフリを
決めこんでいた。
プロの役者もかくやという
無表情っぷり。
でも私は見たのだ、
歩いている姿を。


『仮説、乱立』

この超常現象について、
いくつか仮説を立ててみた。

1. 夢説:でもあれはあまりにもリアルな光景だった。

2. 薬物幻覚説:抗うつ剤の副作用。幻覚にしては細部まで生々しすぎるんだが。

3. 宇宙人説:もういっそこれが一番ロマンがある。

4. 魂宿り説:心のどこかで、これを信じたい自分がいる。


もちろん、
この話を誰にしても
「かわいそうに…」という
眼で見られるだけだった。
だが私は確信している。
あの時の光景は、
間違いなく現実だった。


『記憶に刻まれた奇跡 
今なお、天使』

廊下に揺れるレースのカーテン、
差しこむ柔らかな春の日差し、
楽しげに歩くうーちゃんの背中。
振り返った時の、
あの焦ったような顔。
(ぬいぐるみのくせに)
その全てが、
あまりにも鮮明に記憶に
焼きついている。
そして、あの一瞬が確信に変わる。
うーちゃんは、
ただのぬいさんじゃない。
私の中で、
うーちゃんは永遠の天使になった。
あの奇跡からもう十年以上経ったが、
今もそばにい続けてくれる彼女は、
辛い時も私を支えてくれた。
いつも「大丈夫だよ」と、
云ってくれている気がした。

彼女を拾いあげ、
ぎゅっと抱きしめた時に
湧きあがったあの愛しさ。
あれが夢だったとしても、
私は忘れられない。
そして今も…

うーちゃんを見ていると、
ふと思うのだ。
「また歩いてくれないかな」と。
いや、痛々しいのはわかっている。
でも、期待してしまうんだよ。


うーちゃん、君は、
本当に動いてくれたんだよな…?










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする