友人と映画を観に行く
~映画鑑賞という名の拷問~
専門学校時代のある日、
クラスメイトのKちゃんに映画に誘われた。
「私がファンの俳優さん主演の邦画なんだけど」
…うん、もうこの時点で帰りたい。
私はファンタジー派。
空飛ぶドラゴンや、剣を構えるイケメンエルフ、
かわいい魔法使いが出ない映画には、
毛ほども興味がなかった。
だが、誘われたからには仕方がない。
友人とはそういうものだ。
しかし、映画館に向かう道中、Kちゃんがとんでもない爆弾を投下した。
「たぶん、エッチなシーンがあるよ」
待て待て、そんな地雷情報を今さら?
お金を払って時間を奪われた上に、一体何を見せつけられるんだ?
観る前から不安しかなかった。
そして上映開始―
当然のことながら、
そこに は美しいエルフのお兄さんも、
魔法使いも、海賊も、妖精もいない。
壮大な音楽も、美しい風景もなし、
かわいい魔法動物すら出てこない。
出てきたのは…
アウトローな男が、惚れた女を殴り、
優しくし、浮気し、
さらにその浮気を見られ、女が精神崩壊する という、
なんかもう 救いのない物語。
何この地獄みたいな展開?
私はこの映画で 何を得ればいいの?
一ミリも胸がときめかないし、
癒されるどころか
胸くそ悪さでむしろ帰りたい。
せめて電柱の影に
ひっそりとゴブリンの一匹でもいれば
救いがあったかも知れないが、
それすらない。
そして、終わった。
いや、やっと終わった。
エンドロールが流れたあと、私はKちゃんに素朴な疑問をぶつけた。
私「好きな俳優さんの濡れ場を見て、どんな気分になるの?」
Kちゃん「ドキドキするよ!」
キラキラした眼で答えるKちゃん。
さらに彼女は、感動した表情で。
「ねえ、ショウちゃんも、
あの俳優さん、カッコイイと思ったでしょ?」
「男の尻は見たくなかった」なんて、口が裂けても云えなかった。
私「ああいう男がカッコイイとか思うの?」
Kちゃん「怖いところもあるけど、優しいところもあって、
そこがいいんだよ!」
違う!
女を殴った時点でアウトだよ!
永久追放レベルのクソ野郎確定案件だよ!
その上 浮気して、その現場を見られて女が崩壊するって、
むしろコントじゃん!
Kちゃん、その男性観で大丈夫?
DV男の典型的な症例じゃん。
それをカッコイイなんて、
その感性は将来、君を破滅に追いこむよ!
(まるで他人事のように思った)
しかし、恋する乙女の眼になっている彼女に、
現実的なことを、云ったら野暮というもの。
映画の余韻に浸り、まだ何か語り合いたげなKちゃんを残し、
私は そそくさと帰路についた。
だって、 話すことなど何ひとつない。
~Kちゃん、その後~
後日。
Kちゃんは 隣のクラスのとある男子 を見て叫んだ。
「あの俳優さんに似てる!!」
いや、髪型以外は、まるで似ていなかった。
しかしKちゃんは 一瞬で恋に落ち、猛アタックを開始。
そして私は、
彼女が華麗に玉砕する姿を見届けることになった。
~まさかの伏線回収~
そして時は流れ、私は驚愕することになる。
あの時、Kちゃんが狂ったように推していた俳優が 、
映画のスクリーンの中で「青島、確保だ!」と叫んでいたのだ。
Kちゃんの見る目、正しかった説浮上。
それをきっかけに、
私は 普通にその俳優のファンになった。
結局のところ、
Kちゃんの目は節穴じゃなかったのかも知れない。
~映画鑑賞という名の拷問~
専門学校時代のある日、
クラスメイトのKちゃんに映画に誘われた。
「私がファンの俳優さん主演の邦画なんだけど」
…うん、もうこの時点で帰りたい。
私はファンタジー派。
空飛ぶドラゴンや、剣を構えるイケメンエルフ、
かわいい魔法使いが出ない映画には、
毛ほども興味がなかった。
だが、誘われたからには仕方がない。
友人とはそういうものだ。
しかし、映画館に向かう道中、Kちゃんがとんでもない爆弾を投下した。
「たぶん、エッチなシーンがあるよ」
待て待て、そんな地雷情報を今さら?
お金を払って時間を奪われた上に、一体何を見せつけられるんだ?
観る前から不安しかなかった。
そして上映開始―
当然のことながら、
そこに は美しいエルフのお兄さんも、
魔法使いも、海賊も、妖精もいない。
壮大な音楽も、美しい風景もなし、
かわいい魔法動物すら出てこない。
出てきたのは…
アウトローな男が、惚れた女を殴り、
優しくし、浮気し、
さらにその浮気を見られ、女が精神崩壊する という、
なんかもう 救いのない物語。
何この地獄みたいな展開?
私はこの映画で 何を得ればいいの?
一ミリも胸がときめかないし、
癒されるどころか
胸くそ悪さでむしろ帰りたい。
せめて電柱の影に
ひっそりとゴブリンの一匹でもいれば
救いがあったかも知れないが、
それすらない。
そして、終わった。
いや、やっと終わった。
エンドロールが流れたあと、私はKちゃんに素朴な疑問をぶつけた。
私「好きな俳優さんの濡れ場を見て、どんな気分になるの?」
Kちゃん「ドキドキするよ!」
キラキラした眼で答えるKちゃん。
さらに彼女は、感動した表情で。
「ねえ、ショウちゃんも、
あの俳優さん、カッコイイと思ったでしょ?」
「男の尻は見たくなかった」なんて、口が裂けても云えなかった。
私「ああいう男がカッコイイとか思うの?」
Kちゃん「怖いところもあるけど、優しいところもあって、
そこがいいんだよ!」
違う!
女を殴った時点でアウトだよ!
永久追放レベルのクソ野郎確定案件だよ!
その上 浮気して、その現場を見られて女が崩壊するって、
むしろコントじゃん!
Kちゃん、その男性観で大丈夫?
DV男の典型的な症例じゃん。
それをカッコイイなんて、
その感性は将来、君を破滅に追いこむよ!
(まるで他人事のように思った)
しかし、恋する乙女の眼になっている彼女に、
現実的なことを、云ったら野暮というもの。
映画の余韻に浸り、まだ何か語り合いたげなKちゃんを残し、
私は そそくさと帰路についた。
だって、 話すことなど何ひとつない。
~Kちゃん、その後~
後日。
Kちゃんは 隣のクラスのとある男子 を見て叫んだ。
「あの俳優さんに似てる!!」
いや、髪型以外は、まるで似ていなかった。
しかしKちゃんは 一瞬で恋に落ち、猛アタックを開始。
そして私は、
彼女が華麗に玉砕する姿を見届けることになった。
~まさかの伏線回収~
そして時は流れ、私は驚愕することになる。
あの時、Kちゃんが狂ったように推していた俳優が 、
映画のスクリーンの中で「青島、確保だ!」と叫んでいたのだ。
Kちゃんの見る目、正しかった説浮上。
それをきっかけに、
私は 普通にその俳優のファンになった。
結局のところ、
Kちゃんの目は節穴じゃなかったのかも知れない。