恐怖の土曜日 〜発狂作業とマリオの襲来〜
土曜日の早朝勤務。
それは地獄の門が開かれる瞬間。
先週、満を持して新店長に進言した。
「バイト君の研修とレジ業務の併行は無理です」
新店長は頷いていた。
あの時は確かに頷いていた。
だから、
今日は大丈夫だろうと信じていた。
しかし、現実は甘くなかった。
出勤すると、そこに新店長の姿はなかった。
察し。
バイトの天然ボーイH君が出勤するなり、一言。
「店長が、発注作業をお願いしますって云ってました」
…聞き間違えた。
「発狂作業?」
違う、これは疲れすぎている証拠だ。
新店長はやっぱり来ない。
こうして、再びH君の作業を監督しつつのレジ業務。
相変わらず、私は間違った指示を連発する。
現在、「盛りすぎチャレンジ」に挑戦中のつくね串が、
無駄にゴツくなっているにもかかわらず、
H君には普通サイズを作らせてしまった。
これを買ったお客様は、実質損をするため、店頭には出せない。
仕方なく、廃棄処分。
「H君、これ食べていいよ」
そう云うと、彼は拳を握りしめ、
「やったあ!」
と、無邪気な笑顔。
うん、かわいいな。
束の間、殺伐とした職場に癒しの風が吹く。
しかし、H君はやってくれた。
まだ3回目の厨房だというのに、
手際よく、確実に、華麗に現場を回しはじめたのだ。
彼はやればできる子だった。
私は心の中で感涙しつつ、思ったより平和に終わるのではと希望を抱いた。
だが、その希望は粉々に砕かれる。
H君が休憩に入った直後、客が、怒涛の勢いで押し寄せる。
その混沌の中、ソレは現れた。
紺のオーバーオール、キャップ、口ひげ。
配色こそ違えど、それはまさしくマリオだった。
いや、待て。何故、ここにマリオが?
コスプレなのか?
ナチュラルにマリオなのか?
そんな疑問を抱く暇もなく、私は衝動を抑えきれず、
「ブフォッ!」
と吹いた。
「イッツ ミー マーリオー!」
という彼の決め台詞が、
瞬時にして頭の中を駆け抜ける。
もうノンストップだ。
もう、ダメだ。
先日来店した、炎柱・煉獄杏寿郎(仮)に匹敵する、
いや、それを超える脅威である。
前回とは違い、次々とお客様が押し寄せるカオス状態の只中で、
笑いの波が止まらない。
必死に「花粉症でくしゃみを耐える人」を演じながら、
震える身体を抱え、カウンター内でうずくまるしかなかった。
そして、翌日も早朝勤務。
人手不足は続く。
昨日は貴重な休みだったのに、新店長からのメールが途切れない。
結果、2時間の残業を余儀なくされる。
「定時で帰れば、Sさんが11時から5時間もワンオペになる。
しかも休日の昼間…」
これは、ダメなやつだ。
そこへ、新たな希望の光が差した。
「新人さんが来るらしい!」
…しかし、新店長からの電話。
「やっぱり来ません」
無駄な期待ほど、人を疲れさせるものはない。
そして、厨房のドアには謎のメモが。
下手なドラえもんの絵とともに、
「ハラガヘッタ」
「肉が食いたい」
なんだこの魂の叫びみたいな落書きは。
そのうえ、
千円札が圧倒的に足りてない。
「クソがあ!!」
心の中で口汚く罵るが、赦してほしい。
疲労は、もはや限界を超えていた——。
土曜日の早朝勤務。
それは地獄の門が開かれる瞬間。
先週、満を持して新店長に進言した。
「バイト君の研修とレジ業務の併行は無理です」
新店長は頷いていた。
あの時は確かに頷いていた。
だから、
今日は大丈夫だろうと信じていた。
しかし、現実は甘くなかった。
出勤すると、そこに新店長の姿はなかった。
察し。
バイトの天然ボーイH君が出勤するなり、一言。
「店長が、発注作業をお願いしますって云ってました」
…聞き間違えた。
「発狂作業?」
違う、これは疲れすぎている証拠だ。
新店長はやっぱり来ない。
こうして、再びH君の作業を監督しつつのレジ業務。
相変わらず、私は間違った指示を連発する。
現在、「盛りすぎチャレンジ」に挑戦中のつくね串が、
無駄にゴツくなっているにもかかわらず、
H君には普通サイズを作らせてしまった。
これを買ったお客様は、実質損をするため、店頭には出せない。
仕方なく、廃棄処分。
「H君、これ食べていいよ」
そう云うと、彼は拳を握りしめ、
「やったあ!」
と、無邪気な笑顔。
うん、かわいいな。
束の間、殺伐とした職場に癒しの風が吹く。
しかし、H君はやってくれた。
まだ3回目の厨房だというのに、
手際よく、確実に、華麗に現場を回しはじめたのだ。
彼はやればできる子だった。
私は心の中で感涙しつつ、思ったより平和に終わるのではと希望を抱いた。
だが、その希望は粉々に砕かれる。
H君が休憩に入った直後、客が、怒涛の勢いで押し寄せる。
その混沌の中、ソレは現れた。
紺のオーバーオール、キャップ、口ひげ。
配色こそ違えど、それはまさしくマリオだった。
いや、待て。何故、ここにマリオが?
コスプレなのか?
ナチュラルにマリオなのか?
そんな疑問を抱く暇もなく、私は衝動を抑えきれず、
「ブフォッ!」
と吹いた。
「イッツ ミー マーリオー!」
という彼の決め台詞が、
瞬時にして頭の中を駆け抜ける。
もうノンストップだ。
もう、ダメだ。
先日来店した、炎柱・煉獄杏寿郎(仮)に匹敵する、
いや、それを超える脅威である。
前回とは違い、次々とお客様が押し寄せるカオス状態の只中で、
笑いの波が止まらない。
必死に「花粉症でくしゃみを耐える人」を演じながら、
震える身体を抱え、カウンター内でうずくまるしかなかった。
そして、翌日も早朝勤務。
人手不足は続く。
昨日は貴重な休みだったのに、新店長からのメールが途切れない。
結果、2時間の残業を余儀なくされる。
「定時で帰れば、Sさんが11時から5時間もワンオペになる。
しかも休日の昼間…」
これは、ダメなやつだ。
そこへ、新たな希望の光が差した。
「新人さんが来るらしい!」
…しかし、新店長からの電話。
「やっぱり来ません」
無駄な期待ほど、人を疲れさせるものはない。
そして、厨房のドアには謎のメモが。
下手なドラえもんの絵とともに、
「ハラガヘッタ」
「肉が食いたい」
なんだこの魂の叫びみたいな落書きは。
そのうえ、
千円札が圧倒的に足りてない。
「クソがあ!!」
心の中で口汚く罵るが、赦してほしい。
疲労は、もはや限界を超えていた——。