桜木紫乃 著
ホテルだけが知っている、やわらかな孤独
湿原を背に建つ北国のラブホテル。訪れる客、経営者の家族、従業員はそれぞれに問題を抱えていた。
閉塞感のある日常の中、男と女が心をも裸に互いを求める一瞬。そのかけがえなさを瑞々しく描く。
恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。
7篇から成る連作短編集で、時間を巻き戻しながら読み進められるストーリーで、正直最初に読み始めたときは「直木賞といえども、なんだこんなもんか・・・・・」と感想を持ちましたが、読み進めるに居たり、なかなか深い話になっていき、とても面白く読ませていただきました。
なんだかラブホテルが舞台というと、下の話を連想しがちですが、それ以上に人間臭くて日々の生活感丸出しの内容に、痛々しささえ感じてしまいましたね。
それから、あまり多くを語らず、登場人物の心やその後の行動なども明記はされずとも、なんとなく察することが出来る文章は非常に好感が持てるものだと思います。
直木賞も頷けるかな