時々吃驚するような旨いものにありつける機会がないわけではないが、一般的に言ってその機会はめったにない。
これは実はさっさと忘れてしまいたいことに属するが、それでも書いておく。
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出雲蕎麦
正直言ってあれほど不味い蕎麦は初めて食べた。
その店先ではよくわからなかったが、部屋に案内され、しまった、とは思ったのだ、これは団体客用の店だ、あそこで出てしまえばよかったのだ。しかしいくら何でもあれ程のものを食わせられるとは思わなかった。
寒い日だったので暖かい蕎麦が食いたかった。大体が基本的に冷たい蕎麦と暖かい蕎麦の2種類のメニュー。
出されてぎょっとなった。どんぶりの中の温かい汁の中に蕎麦らしいものは入っているが、表面はなんだか乾いている。箸を入れればふやけ切った麺が中で固まっている。これに冷たい出汁を入れて食えという。腹は減っていたし、頑張ったが完食は無理だった。こんなものを客に出せる神経が分からない。
饂飩の釜上げはあるが蕎麦の釜上げなんて知らない、仮にあったとしても表面が乾くほど放置して出すものなのか? 汁は蕎麦湯でもなくただのお湯だった。どんぶりに白湯を入れ、茹で麺を放り込んで放置したものを出されたとしか思えない。
津山で食べた温かい天ぷらの信州蕎麦は旨かったことか。津山の店は地元の常連さんが並んでいた。あんまりな違いだった。
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安来 泥鰌
名物に旨いものなし、という。
しかし安来と言えば安来節、ドジョウ掬いでしょう、始めてきたのだ、また来るかどうかわからない、と泥鰌の店を探したのだ。
安来の町中に泥鰌の店がないことで察するべきだった。
この食材は既に一見さん向けでしかないことに。動物性たんぱく源が豊富な現代の舌を楽しませるものではないことに。もう少し調理法に工夫すればマシになるのではないかと思うがいうまい。
安来ではすでに泥鰌資源は枯渇しているらしく、出てきたのは大分県の泥鰌だった。
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宍道湖 シジミ
JR松江駅エリアの和食の店、結構流行っているように見えた。蟹のセットメニューがメインのようだったが、それは避けた。
可もなく不可もない程度の刺身、宍道湖7珍というがなんだかよくわからず、また食べたいと思うほどのものもなく、その半分は既に宍道湖で入手困難とかで代替品だったがそれはいい。
しかし、シジミの小鍋と称するものは何なのだ。よくあるで固形燃料で一人分の鍋が熱せられる。「シジミには既に熱を通してあります」と言われてよくわからなかったが、蓋を取ると小さなシジミが10個ばかりすっかり開いて入っている。仕方がないので白菜等に火が入るまで待つ。
シジミはまるで出し殻の様だった。汁にはシジミの風味一つなかった。
東京でびっくりするほど美味しいシジミ汁を出されたことがある。宍道湖のシジミと聞いた。旨いものは都市に集まり、地元には残らない?
しかしこれなら家でスーパーでシジミを買ってきて普通にみそ汁にした方がマシだ。
宍道湖沿いを走りながら、シジミ汁の店はないかと思ったが見つけられなかった。