今回紹介するのは、数年前に某省庁とアドバイザリー契約(コンサル契約)を結びコンサルした一部の資料です。
人工知能とは、人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断をコンピューターを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたもの。
人工知能という言葉が誕生したのは、1956年にアメリカのダートマス大学で開催された研究集会の事であり、それまでは、複雑な計算や機械の制御などのために使われてきたコンピューターを「思考」に使うという方向性が打ち出された。
この1950年代からはじまった人工知能の研究は二度のブームと冬の時代を乗り越え、今、本格的に花開いている。 その立役者は「機械学習とディープラーニング」で、2010年以降に現在の第3次ブームが起こり、現在も続いている。
AIを述べるとき、統計学の話なしには語れないが、現在の統計学は、1920-1930年代に統計学者のフィッシャーネイマン、ピアソンらが推計統計学を確立し、真実は一つであるという客観性を重視した正統派の「ネイマン・ピアソン統計学」が主流である。
AIが使っている統計学は、ネイマン・ピアソン統計学とベイズ統計学の融合であるが、ベイズ統計学とは 「Aである場合、Bである確率はいくらか?」という問いを繰り返し、答えを絞ってゆき、「最も確率が高いパターンを、今、与えられた情報から考えられる真実とみなす」という主観的な確率から真実を特定する(ここには客観的真実は一つという発想はない)という極めて主観的なものである。
ベイズ統計学は、ベイズ牧師(1702-1761)が一編の論文を残したものの、長い間バッシングを受け、忘れ去られたものであるが、「無尽蔵にデータが追加されるインターネット空間では、ベイズ統計学を駆使したら、誰も知りえなかった真実にたどり着くのではないか」と考える若者がいた。
マイクロソフト社のビル・ゲイツである。 彼は2001年に「ベイズ統計学が、わが社の経営戦略である」と宣言、これ以降忘れ去られていたベイズ統計学は息を吹き返し、ネイマン・ピアソン統計学と融合し、第3次AIブームがはじまった。
ベイズ統計学の特徴は、主観的確率を用いるので、データ数が少なくても成立する事が言われているが、あくまでも主観的真実であり、客観的なものでないことは忘れてはならない。 までも膨大なデータで真実(客観的なものではない)に近づくのである。
ハードウェアの性能向上と、インターネットの発達によるビッグデータの発生により、「膨大なデータから特定のデータを探し出す」というベイズの定理の手法を駆使した多様な技術が誕生し、これにより統計学に基づくAIの発展が始まった。
ベイズ統計学は自動翻訳、音声認識、金融取引、遺伝子工学、ロボット工学、レコメンド・フィルター、医学研究、軍事、Eコマース、暗号解読など、様々な分野で利用されている。
これらが、第3次AIブームの幕開けの原動力となり、AI(人工知能)は、急速にあらゆる分野で応用されており、将棋、囲碁などのゲーム、自動翻訳、自動運転、スマート工場、スマートホーム、病気診断、医薬品開発、のみならず、AIが人間から様々な職業を奪おうとしている。 逆の言い方をするならば、AIが人間を労働から「解放」してくれようとしているとも言える。
前述した製造業へのAI適用の一つに、故障診断予知があり、これについてもベイズ統計学、またマハラノビス=タグチメソッドが使われる場合が多いが、勘違いしてはいけないのが、所詮は統計学の話であるという事である。
従来のコンピューターシミュレーションのように、確固たる確立された理論があり、それに基づいて計算しているわけではないので、100%を期待してはいけない。
一般的には信頼度約95%で推定や検定が行われるので、約5%のミスは許容範囲内である。 あくまでも大体合っていると割り切り、100%近い信頼度が欲しいなら、その先はさらなる精密な検討を行なわなければならない。
健康診断である程度の事が分かり、問題があれば医者に行き精密検査してもらわなければならないのと同じであり、社会インフラの設備(また顧客とのサプライチェーンの中で重要とされる設備)で誤検知による設備の停止は許されない。
さらにマハラノビス=タグチメソッド(MT法)に理論に潜む問題点も指摘しておく。 MT法には「正常な状態は1点しか存在しない=単一性定常仮定」と「正規分布に従わないデータの異常判定ができない=正規分布仮定」の2つの前提条件の下で成立する。
しかしながら、現実世界ではそんな単純な挙動は極めて稀である。 分かりやすく言えば、電源を止めて停止している状態、正常動作している状態、その途中での段階的状態があり、正規分布の山はいくつもあり、MT法ではそれぞれの動作作状態も、他の状態からみれば正規分布から外れ、異常判定してしまうのである。
これは、MT法はデータの確率分布が正規分布に従う場合に意味を持つ「標準偏差」でマハラノビス距離を定義することを理論的な基礎においているからである。 結局はMT法から離れて、ノンパラメトリック(前提条件を必要としない)異常検知法の開発競争となっているのが現状である。
実際、重工業のGEや日立製作所は、MT法(マハラノビス=タグチメソッド)の弱点を理解し、それを解決する独自の分析手法を開発している。
日立製作所は、機器の状態を遠隔診断し、故障につながる変化や予兆を早期に検出する「Global e-service on TWX-21/故障診断サービス」を開発。 グローバル市場で機器の製造・販売・保守を行う企業向けに2014年10月10日から販売。 独自の分析技術を用いた故障予兆診断システムをクラウドサービスとして提供し、日立のビッグデータ利活用の専門家が導入を支援している。
この中核技術は、「ベクトル量子化クラスタリング(VQC:Vector Quantization Clustering)」 または、「LSC:Local Sub-space Clssifier」 に基づく診断アルゴリズムであり、機器の特性や設置場所の違いによる使用状況の差異も踏まえた診断が可能で、より高精度な故障予知が行えるとしている。
AIの進化速度は速く、AI同士の自動交渉ができるレベルにきている。 2011年からアメリカでは、ANAC(Automated Negotiating Agents Competition)と呼ばれるAI-AI間での自動交渉のコンペが毎年開かれており、一番儲けたAIが優勝、またみんなに利益を分け与えたAIも優勝である。
近い将来、弁護士業務もAIが行うようになる事が予測されている。 さらに、自動運転車が搭載しているAI同士が交渉し、地域の交通渋滞を解消する地域課題の解決に適用する試みも進められている。
AI技術を持たない企業はどうすれば良いか? このANACと呼ばれるコンペに参加し、優秀なAIを発掘し、そのAIと組み、代理交渉をしてもらう時代なのだ。
AIの現在は、特定の問題しか解けないが、脳科学の研究により、脳を真似た汎用人工知能の研究が盛んに行われており、2030年には人間の脳と同程度の能力を持つ汎用人工知能が完成すると予測されている。
そうなると、AI(人工知能)は「未知の状況に仮説をたてる能力」を持ち、人工知能の自己改良による進化がはじまり、加速度的に能力が向上してゆき、人工知能が自分自身で猛烈な進化を続けると、人間の知能を人工知能が追い抜き、ついには「人類がその先の変化を見通せない段階まで進化する」という説がある。
この予測不能になる状況は「シンギュラリティ(Singularity)」と 呼ばれる事がある。 シンギュラリティは技術的特異点と訳され、これはアメリカの人工知能研究者であるレイ・カーツワイル博士が2005年に発表した著書「シンギュラリティは近い」によって、このような考え方が世界に知られるようになった。
カーツワイル博士は2029年にはあらゆる分野で人工知能が人間の知能を上回ると予測している。
そして、2045年には驚異的な能力をもつ人工知能によって科学技術の進歩や社会の変化が猛烈に速くなり、人類が予測不可能の状態に達する(シンギュラリティが来る)と予言している。
ちなみに、人間の脳も進化し発達するではないかという意見もあるが、人間の脳は頭蓋骨の大きさで制限されているので、それ以上に大きくなる事が出来ず、やはり機械(CPU/GPU、メモリー)の方が圧倒的な速度で進化するので、いずれはシンギュラリティを迎える事になる。
最後に、AI/ビッグデータ時代の新しい開発手法を紹介しておく。 上述の如く、統計学がネイマン・ピアソン統計学から、ベイズ統計学が主に使われ始めたように、開発手法も従来のウォーターフォール型からアジャイル型がトレンドとなっている。
いみじくも、第3次AIブームが起こったのとほぼ同時期の2001年2月に著名な開発方法論者が集まり、彼らが提唱する個々の方法論の重要な部分を「アジャイルソフトウェア開発宣言」としてまとめ、アジャイル開発の価値と定義をまとめた。
アジャイル開発の価値は、プロセスやツールよりも個人や相互作用、分かりやすいドキュメントより動くソフトウェア、契約上の駆け引きよりも顧客とのコラボレーション、計画を硬直的に守るよりも変化に対応する、などである。
分かりやすく言えば、従来のウォーターフォール型では、最初に顧客要件を詳細かつ綿密に整理し、プロジェクトの初期段階で各工程の計画をきっちりと定め、それに対する進捗を管理するという形でプロジェクト管理が進められる。
また、開発を早く進めるために、コンカレントエンジニアリングと呼ばれる、開発・設計・生産技術・製造部門などが同時進行する手法がとられてきたが、技術革新が激しく、ビッグデータから新たな知見が生まれ、顧客要求仕様もたびたび変化するので、最初にそれを見越した開発が必要となり、開発効率は悪く、かえって開発速度は遅れてしまう。
今日の日本の電気製品のように、不要な機能だらけで、コスト高、開発は遅いなど、多くの問題を抱えてしまう。
従来のウォーターフォール型の開発では各工程の終了は定義されているドキュメント類が完成し承認済みかどうかで判断される。 そのため、プロジェクトのゴール、つまりソフトウェアを完成させるという目的から見て価値の少ないものであっても定義されているものは、必ず作成する必要がある。
アジャイル開発では形式的なドキュメントよりも、コミュニケーションによりゴールを目指し、プロジェクトを運営する事を大切にし、価値が少ないドキュメント作成を極限まで省く。 アジャイル開発とは、必要最低限のことをフレキシブルに、シンプルかつ無駄なく開発する、AI/ビッグデータ時代に期待されている開発手法である。
以上
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