【ワシントン=八十島綾平】
日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、バイデン米大統領が中止を命じることを決断した。
米紙ワシントン・ポストが2日、政府関係者の話として報じた。同紙や米CBSテレビによると、米ホワイトハウスは早ければ3日にも正式に発表する。
日本経済新聞は米ホワイトハウスに問い合わせたが、米東部時間2日午後11時半(日本時間3日午後1時半)時点でまだ回答は得られていない。
日鉄による買収計画は、米政府の省庁横断組織「対米外国投資委員会(CFIUS)」が安全保障上のリスクがないか審査していた。省庁間の意見がまとまらず2024年12月23日にバイデン氏に判断を一任していた。
ワシントン・ポストによると、バイデン氏の側近らは日米関係への悪影響があるとして再考を求めたが、バイデン氏は最終的に中止を命じる決断をしたという。
同紙によるとCFIUSはバイデン氏に、買収後に米国内での鉄鋼生産量が減らされる恐れがあり、その場合は安全保障上のリスクがあるとの見解を示していた。買収計画は、安全保障に影響を与える可能性があるとしていた。
日鉄側は12月30日付で米政府に新たな提案を送付。USスチールの生産能力を10年間削減せず、生産能力削減の恐れがある時は米政府が拒否権を発動できるようにすることを提案したが、バイデン氏を説得することはできなかった。
日本企業のM&A(合併・買収)に対する大統領の中止命令は、実際に出れば初めてのケースになる。1月20日に就任するトランプ次期大統領も買収計画に反対しており、計画の実現は極めて難しくなった。
実際に中止命令が出た場合は、日鉄側は適正な手続きが取られなかったと主張して、米政府側を提訴する見通し。
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労組の反対が強い中の買収はそもそも無理筋でした。
選挙という政治の季節が重なり、トランプやバイデンが指摘する前にフェタマン上院議員が騒いだ瞬間で無理だと直感しました。
バイデン、そしてハリスにとって選挙公約。
一転して買収を認めるのは考えにくいことでした。
たとえそうなってもトランプがひっくり返すはずでした。
米国のビジネスと政治の間のグレーゾーンでの戦いという観点では、CFIUSに阻止勧告をさせず大統領判断に持ち込み、側近に再考を進言させただけでも大きな成果では。
政治的に無理という助言に従い日鉄とUSスチールが早期に断念していれば、鉄は安全保障という空虚な神話と産業衰退の実態をさらけ出すことはできませんでした。
阻止後にUSスチールが高炉を閉鎖すれば、政権もUSWも阻止できず鉄鋼の生産能力低下も産業劣化も止まらず安全保障上の脅威が生じるだけ。
バイデン氏もUSWも解決策は示せません。一方で米国の鉄鋼需要は旺盛。日鉄など日本の鉄鋼企業は好機は残されたままと捉え米国に再挑戦すればよいと思います。
2023年12月18日、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収すると発表しました。
買収額は約2兆円で実現すれば日米企業の大型再編となりますが、米国で政治問題となり、先行きが注目されています。最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事記事2025.1.3より引用