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ビットコイン、繰り返されるバブルと崩壊の歴史 イチからわかるビットコインとバブル 暗号資産(仮想通貨)

2025-01-02 15:59:56 | 世界経済と金融


 

代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの価格が2024年、初めて10万ドルを突破しました。

急騰を演じるたびに「バブル」の3文字を思い浮かべる投資家も多いでしょう。ビットコインが誕生してからの歴史を振り返りつつ、ビットコインの価値について考えてみます。

 

 

初の決済はピザ2枚 当時と比べて3700万倍に

ビットコインは世界で初めて誕生した仮想通貨です。2008年10月にサトシ・ナカモトという人物が、ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶデータの改ざんが難しい技術を使い、電子データで決済・送金する新しい仕組みを論文で公表しました。

複数のエンジニアがこの論文を基にシステムをつくり、09年1月3日にビットコインが誕生しました。

 

ビットコインで初めて決済したものはピザでした。10年5月、エンジニアのラズロー・ハニエツ氏が1万BTC(ビットコインの単位)でピザ2枚を購入しました。

ピザの値段を基に計算すれば、1BTCは0.0025ドルになります。25年12月31日時点の価格は約9万3000ドルなので、3700万倍になった計算です。

 

この価格変動こそが投機マネーを呼び寄せ、さらに価格変動を大きくします。バブルといわれた局面は大きく3回ありました。

まず2017年。仮想通貨に財産的価値を認める改正資金決済法が日本で施行されたこの年は「仮想通貨元年」と呼ばれ、年初に1000ドル前後だったビットコインは年末にかけて2万ドル近くに駆け上がりました。

 

チャートの形状は17世紀のオランダを舞台とした「チューリップバブル」を連想させるものでした。仮想通貨で億円相当の資産を持つ「億り人」が話題になったのもこの頃です。

2つ目の山は新型コロナウイルス禍の20〜21年にかけてつくられます。世界の政府・中央銀行が経済減速を避けるために金融緩和を進めたことで、だぶついたマネーが株式や仮想通貨に流入。17年にバブルといわれた水準を大きく越え、6万ドル台をつけました。

 

 

 

3回目のうねりが足元でおこっています。

24年12月にビットコインは史上初の10万ドルを突破しました。24年1月に米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物の上場投資信託(ETF)を解禁して投資の間口が広がったことに加え、トランプ米次期大統領による仮想通貨規制の緩和への期待が強まっているためです。

 

世界で仮想通貨保有者はどのくらいいるのでしょうか。トリプルAによれば、世界で仮想通貨を保有するのは5億6200万人。前年比で34%増えています。

保有率が最も高いのはアラブ首長国連邦(UAE)25%、シンガポール24%、トルコ19%などです。日本では24年4月に仮想通貨口座数が1000万を超えました。

 

市場では強気の見方が広がっています。英銀スタンダードチャータードはビットコインの25年末の目標価格を約20万ドルに設定しました。

11月に公表したリポートでは価格が低迷していた時期の呼称「仮想通貨の冬」になぞらえる形で今の相場を「仮想通貨の夏」と呼びました。

 

ただ、上がり続ける相場はありません。

米大手資産管理会社VanEck(ヴァンエック)は「強気相場は25年1〜3月期に中期的なピークに達し、いったん下落する」と予測しています。

 

カナダの調査会社BCAリサーチのピーター・ベレジン氏は25年は世界経済が減速し、株式などから資金が流出すると予想。ビットコインは4万5000ドルに下落するとみています。

 

 

 

 

ビットコインはバブルか? 投資指標から探る

市場の価格予想に大きな差が出ているのは、裏付けとなる実物資産はなく、株式や不動産のようにキャッシュフローを生まないことから需給が価格動向を決めやすく、適正価値がわかりにくいためです。

いくつかの指標を参考にその価値を探ってみます。

 

まず、メトカーフの法則。ネットワーク通信の価値は接続されるシステムの利用者数の2乗に比例するというものです。

電話やインターネットなどネットワークの価値はつながるものが多いほど価値が上がるという説です。

 

証券アナリストのティモシー・ピーターソン氏が19年に著した「ビットコインはウイルスのように広がる」と題した論文によれば、利用者増加と米フェイスブック(現メタ)の株価上昇に連動性があるようにメトカーフの法則を使って、ビットコインの普及と価格は説明できるといいます。

この法則にのっとり、ビットコイン価格を試算したのが米資産運用会社モルガン・クリーク・キャピタル・マネジメント最高経営責任者(CEO)のマーク・ユスコ氏。ユスコ氏は24年3月の米テレビ出演で24年末のビットコイン価格が15万ドルを超えると述べています。

 

もっとも、どのアドレス(銀行でいう口座番号)数を採用するかで数字が恣意的になるとの批判もあります。

株式や債券など伝統的な金融市場にはない、仮想通貨特有の価格分析の手法に「オンチェーン分析」があります。

 

オンチェーンとはブロックチェーンに記録される取引を意味し、いつ、いくらのビットコインがどのアドレスからどこへ送付されたのかといった詳細な取引履歴を世界中の人が閲覧できます。

大手交換業ビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリストが価格分析で重視するオンチェーン指標の一つが「黒字コイン比率(PSP=Percent Supply in Profit)」です。

 

取得価格にあたる簿価と、市場についている価格である時価を比べ、市場に出回るビットコインのうち何%が含み益の状態かを測ります。価格が過去最高に達すれば100%、最安値をつけると0%となります。

黒字コイン比率(50日移動平均)とビットコイン価格を比較すると、同比率が50%を下回ると割安感が強まり価格が底入れする傾向があります。

 

相場下落で流通コインの過半が含み損状態になると、次回の上昇相場を待つ長期保有者が増えて売り圧力が低下し、押し目買いが入りやすいためです。

一方、95%を超えると過熱感から買い控えや利益確定売りが強まって相場は崩れやすくなります。3月にも95%を超えた後、調整局面入りとなりました。24年12月16日時点は97%と相場の天井を示唆しているようにもみえます。

 

 

 

 

価格の先行きを占う指標として、取引データの処理計算を請け負うマイニング(採掘)業者の収益状況に注目する市場関係者も多いです。

採掘コストは事業者によって異なるため全体の損益分岐点となる価格の算出は難しいものの、代替となる指標に「プエル倍数」があります。採掘者の収益状況から売り圧力を予測します。

 

 

 

 

プエル倍数は、採掘者の1日当たりの収入を過去365日の平均で割った値。1を下回ると採算割れで撤退する採掘業者が増え、手持ちコインを売るため相場の上値を抑えやすい。

0.3が大底との見方もあります。一方、1を大きく上回ると採掘業者の採算が高まります。24年12月16日時点では1.2。3月中旬の高値更新時(2.4)と比べ過熱感はありません。

 

大口投資家の売買動向を追う手法もあります。ビットインフォチャーツによれば、少なくとも1000BTCを保有する「クジラ」と呼ばれる資金力のある大口投資家や古参の投資家のアドレスは約2000あります。

この2000アドレスでビットコイン市場(金額ベース)の約4割を占めます。これらのアドレスから交換業者のアドレスに資金が移動になれば、大口の売却がでるとの見立てが可能になります。

 

 

ETF通じ成長するデジタルゴールド

ビットコインは投機マネーが群がる一方で、資産保全性を評価する投資家も増えてきました。

彼らはビットコインを「デジタルゴールド」と呼びます。希少性、伝統的資産と異なる値動きなどの観点から商品(コモディティー)のひとつである金(ゴールド)と機能が似ているからです。

 

希少性というのは発行量が限られているという意味です。ビットコインの発行量はあらかじめ2100万BTCという上限があります。

人類が採掘してきた金の総量は約21.2万トンといわれており、未発掘の5.9万トンと合わせても上限はほぼ決まっています。希少性ゆえに価値を感じる人がおり、価値の保存機能があるのが特徴です。

 

 

ビットコインがデジタルゴールドと呼ばれ始めたきっかけは、新型コロナウイルス禍です。世界の中央銀行が経済減速を避けるために金融緩和をおこない、ドルなど法定通貨の価値下落懸念が強まりました。

SBIホールディングスの小田玄紀常務執行役員は「金利を生まないコモディティーとしての認識が広がり、特にコロナ禍以降に価格が上昇した。米利払い費の増加などを受けたドル格下げ懸念もあり、ドルの逃避先になりやすくなっている」と指摘します。

 

 

 

伝統的な資産運用会社もビットコインを代替資産クラスとして認識し始めました。米ブラックロックは12月12日、株式・債券を中心とするポートフォリオにビットコインを1〜2%組み入れるのは妥当な比率だと示しました。

ETFを通じて市場が大きくなった点も金とビットコインは共通しています。SECは1月、ビットコインの現物を運用対象とするETFの上場申請を承認しました。

 

証券口座で購入できる点が機関投資家に受け入れられ、米国に上場する11本のビットコイン現物ETFの資産残高は12月24日時点で1015億ドルに膨らみました。

 

 

 

 

一方、金ETFは2003年3月に初めてシドニーで登場しました。04年11月に米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が「SPDRゴールド・シェア」をニューヨーク証券取引所に上場すると金ETFへの資金流入が加速。

世界の金ETFの資産残高は24年11月末時点で約2743億ドルと20年で110倍になりました。ETFになることで流動性が高まり、新たな投資家層を獲得することに成功しました。

 

金の新たな投資家として注目されるのが国家です。

国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、ロシアがウクライナ侵略を機にドル建て資産を凍結された22年以降、新興国などの中央銀行が初めて年1000トン規模で金を購入するようになりました。

 

WGC調査によると、23年時点で中銀全体が保有する外貨準備の約16%がいまや金です。金利がつかない金相場には米金利上昇が逆風になるはずですが、22年以降は金価格と金利の順相関が目立ちます。

 

 

 

 

25年はビットコインが金と同じように政府や中央銀行の準備資産として組み入れられるかが焦点になります。

発端は24年7月に米共和党のシンシア・ルミス上院議員が上院に提出した、戦略的準備金としてビットコイン保有を義務づける法案。ロシアやブラジルでも準備金の議論が広がっています。

 

米中2大国が犯罪摘発で押収したビットコインを保有しているほか、採掘事業に参入して報酬を受け取る例もあります。

ただ準備資産としてビットコインを積み立てている国はありません。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「価格変動が大きいビットコインは一般的に信用が低く、緊急時の対外債務の支払いや貿易の決済に備える外貨準備には向きにくい」と指摘しています。

(湯浅兼輔、河井優香、高山智也)

 

 

 
 
 
 

 

 

 

日経記事2025.1.2より引用

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