3メガバンクの25年のコース別採用は合算で665人の見通しだ
3メガバンクが新卒採用で配属先の部署を絞ったコース別の採用を増やす。こうした職種別採用は2025年に合算で665人と、新卒採用全体の4割弱に達する見通しだ。20年は13%で、およそ3倍になる。
学生の専門志向の高まりも背景に、優秀な人材の確保をめざし、ゼネラリストに偏った採用から転換する。
10年前は1割未満、三井住友・みずほは26年採用でも拡充
三菱UFJ、三井住友の両銀行とみずほフィナンシャルグループの各年の新卒採用実績、計画と内訳を調べた。
10年前の15年は1割未満だった。三井住友、みずほは26年採用でもコース別採用の拡充を予定しており、割合は今後も一段と上昇する公算が大きい。
3メガに加え、りそなグループ、三井住友信託銀行を含めた大手銀行5行でも25年計画は前年比で6ポイント程度上昇し、3割を上回る。
どの部署に行かされるかわからないといった「配属ガチャ」に抵抗感を持つ学生もいる。
総合商社やコンサルティング会社などとの採用競争が厳しくなっている中で、配属部署が決まっているコース別採用のニーズが高まっている。
金融以外では、製造業などの大企業でコース別や職種別の採用は広がってきている。
早期の英米勤務確約や学生が配属先「逆指名」
三井住友銀行は11のコース別採用のほとんどを24年以降の新卒採用で新たに設けた。
早期の米英勤務を確約する海外志望者向けやコンプライアンス(法令順守)関連部署のコースをつくった。みずほには配属先の分野を学生側が「逆指名」できる枠組みがある。
3メガが特に力を入れるのが、システム運営を含むデジタル分野だ。この分野のコース別の採用数は25年入行で100人以上いる。
個人営業に特化して支店長などの幹部候補生を育成するコースも三菱UFJなどが設けており、採用数が計100人を上回る見込みだ。
学生の間では専門性を求める志向が高まっており、コース別採用の方が優秀な学生を採りやすい事情もある。
「総合商社やコンサルティング会社と比較されており、給与の面では採用しにくい」とメガバンク幹部は話す。
コース別の採用増により、銀行の人材戦略そのものが転機を迎える可能性がある。
銀行はこれまで配属先をあらかじめ決めずに採用し、ジョブローテーションで多様なキャリアを積む過程で、各部門のトップなど経営幹部の候補を選ぶキャリアパスが一般的だった。
コース別の場合、新入行員は原則としてそのコースの枠内の部署で経験を積む。同じ部署で経験を積んだ行員がその部署の幹部になるのが基本になれば、キャリアパスや経営幹部の選び方が大きくかわってくる。
海外の金融機関では投資銀行部門をはじめ採用では事業部門の発言力が強い。人事部門が新卒など採用活動の中軸を担う邦銀の仕組みは世界的にも珍しい。
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