バンス氏㊧はトランプ氏の対ロシア政策について説明した=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
共和党の副大統領候補であるJ・D・バンス上院議員はロシアによる侵略が続くウクライナを巡り、11月の大統領選でトランプ前大統領が返り咲いた場合の和平計画を説明した。
ウクライナがめざす北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めず、中立国になるべきだと提唱した。
12日のポッドキャスト番組のインタビューで語った。
トランプ氏は10日、民主党のハリス副大統領との討論会で「次期大統領になれば、ウクライナとロシアの戦争を大統領になる前に終わらせる」と述べた。ただ、これまで道筋については示していない。
バンス氏は7月にトランプ氏の副大統領候補に指名された。
12日のインタビューでトランプ氏が返り咲けば「交渉の席につき、ロシア、ウクライナ、欧州の人に『平和的解決とはどのようなものか、あなた方が考える必要がある』と言うだろう」と訴えた。
和平案に関しては「ロシアとウクライナの間の現在の境界線を非武装地帯にするだろう」と話した。
米紙ワシントン・ポストは13日、バンス氏の発言を巡ってウクライナがロシアに実効支配された領土の奪還を断念することにつながると伝えた。
ウクライナは和平の条件に、ロシアが実効支配しているすべての領土の返還を要求してきた。バンス氏の主張はウクライナのゼレンスキー政権や同国の軍事支援を続ける米国の方針と真っ向から対立する。
ウクライナはNATOや欧州連合(EU)への加盟をめざしている。バンス氏は「NATOや同盟機関には加盟しない」と明言。
ウクライナが独立国家として主権を維持する代わりに、米欧とロシアのどちらの陣営にも加わらない永世中立国になるべきだとの認識を示した。
NATOは「門戸開放」政策をとり、全加盟国の同意を前提に「いかなる欧州の国」も各国の判断で加盟できる方針を掲げる。ロシアのプーチン氏がウクライナ侵略を決断した背景にはウクライナの加盟を含むNATOの東方拡大への反発も一因になった。
バンス氏は世界最大のウクライナ支援国として「米国の納税者はウクライナに寛容だ」と指摘。
「欧州はこの戦争に十分な資金を提供していない。エネルギー価格の高騰を受け、この戦争を終わらせたいのだろう」と批判し、ドイツなどがウクライナの復興資金を拠出すべきだと促した。
台湾問題にも触れた。「中国が台湾に侵攻する瀬戸際にある。そうならないことを願うが、数年内に起こる可能性が高い」との見方を示した。
米政府がウクライナへの軍事支援を優先し「台湾をひどい状況に追い込んでしまった」と唱えた。台湾への武器供与の一部遅れが念頭にある。
バンス氏はウクライナ、中東、台湾を挙げ「世界には少なくとも3つの危険な地域がある。
それぞれが世界的な大規模紛争に発展する可能性を秘めている」と警鐘を鳴らした。
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バンス氏のプランはトランプ支持者の内向き志向と、トランプ氏自身の「24時間以内にウクライナの戦争を終わらせる」という発言を反映した国内政治上の産物です。
そもそも停戦・和平協議において重要な、ウクライナの意向がまったく考慮されていません。意地悪くみれば、今年の4月まで下院のトランプ派の議員が、ウクライナ支援の予算を止めてきたように、ウクライナには米国の予算を打ち切るという脅しを突き付けて、交渉のテーブルに乗せると考えているのかもしれません。
欧州が十分な資金を提供していないとも批判していますが、欧州の同盟国の意向も無視しています。世界に次期トランプ外交を懸念させるだけのものだと思います。
ドナルド・トランプ前アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、ハリス副大統領と対決します。選挙戦やトランプ氏が抱える裁判の行方など解説します。
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日経記事2024.09.16より引用