ロシアのプーチン大統領は7日、内外有識者が参加する国際会合「ワルダイ会議」
で演説した(ロシア南部ソチ)=ロイター
ロシアのプーチン大統領は7日、米大統領選で勝利を確実にしたトランプ前大統領について「対話する用意がある」と述べた。
ロシアが続けるウクライナ侵略についてトランプ氏は戦争の終結に意欲をみせており、交渉を優位に運ぶ狙いとみられる。
プーチン氏は南部ソチで開催した有識者会合「ワルダイ会議」で発言した。
ロシアメディアによると、プーチン氏はトランプ氏が当選確実となったことを「祝福する」と述べた。トランプ氏の暗殺未遂事件への対応にも触れ「彼は勇敢な男だ」などと称賛した。
プーチン氏はトランプ氏がロシアとの関係を修復し、ウクライナでの「危機」の終結に寄与したいという考えを示していることは「少なくとも注目に値する」とも言及した。
トランプ氏は6日の演説で「戦争を止めるつもりだ」などと述べ、ロシアが侵略を続けるウクライナの問題については停戦を目指すとみられる。
かねて自身が大統領に就任した際は24時間以内にウクライナ戦争を終結させると強調してきた。来年1月の就任前にもロシア側との実質的な協議に乗り出す可能性がある。
プーチン氏はワルダイ会議で、ロシアへの経済制裁を念頭に「我々に圧力をかけても無意味だ。我々は互いの利益を考慮して交渉する用意がある」と述べ、ロシアとの交渉が重要だと強調した。
ロシアはウクライナ4州での制圧地域を拡大しており、今後の停戦交渉を優位に進めたい考えがあるとみられる。ショイグ安全保障会議書記は7日、「(前線の)情勢はウクライナに有利でない」と述べ、西側諸国は現状を認識して交渉を始めることが選択肢にあると指摘した。
プーチン氏はワルダイ会議での質疑で「包括的戦略パートナーシップ条約」を6月に締結した北朝鮮との合同軍事演習を実施する可能性があるとも述べた。
同条約は相互の軍事支援を規定している。ロシア上院は6日に批准の前提となる法案を承認していた。
プーチン氏は6月、ロシア外務省での演説でウクライナ侵略に触れ、同国との停戦の条件としてウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の撤退が必要と述べた。「ウクライナが(ロシアが併合した4州から)軍隊を撤退させ、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を放棄すれば、我々は即座に停戦し和平交渉を始める」と述べた。
プーチン氏はトランプ氏との対話に応じることで、ウクライナ侵略以前から主張していたNATOの東方拡大の動きを抑えたい狙いもあるもようだ。
ロシアは「住民投票」を経て2022年秋に東部ドネツク州などウクライナ東・南部4州を一方的に併合した。ロシア軍は東部ドネツク州などの未制圧地域に兵士の犠牲をいとわず投入し、前進を続けている。
ウクライナはロシアの侵略行為に対抗するためNATO加盟を求めている。NATOは条件が整えば受け入れる方針だが、24年のNATO首脳会議では加盟時期は明示されなかった。
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プーチン大統領の発言で、ウクライナ情勢は新しい局面を迎えたといえる。
トランプ氏は大統領に就任したら24時間以内にウクライナ戦争を終結させるとの豪言を発したが、アメリカの支援に頼り切っているゼレンスキー大統領ならともかく、ロシアを交渉に応じさせる術がアメリカにあるのかという懸念はあった。
朝鮮半島のように38度線を引いて非武装地帯を設けるのか、ウクライナのNATO加盟を凍結するのか、などの案は浮上しているものの、停戦交渉でウクライナがどこまで譲歩するかが焦点となってくる。
「トランプ新政権の時代」を迎えて、交渉にたける国が有利になり、国際情勢は交渉で動くのだと改めて感じさせられるようになった。
ロシアによる「対話の用意」自体は目新しくない。問題はその内容だ。
ロシアとしては、トランプ次期大統領の出方を見極めたいところだろう。
しかもプーチン大統領は、この戦争は米国をはじめとする西側との戦いだと強調してきたため、米大統領が交代したからといって、そう簡単に立場を変えるわけにもいかない。
トランプ政権にとっては、ウクライナに影響力を行使するのみならず、ロシアからどのような譲歩を引き出し、ウクライナや米欧が受け入れ可能な妥協点を実現させられるかが問われる。
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