オクラホマ州の小麦畑で稼働するディアの農機=ロイター
【ニューヨーク=竹内弘文】
米株式市場で、農業関連銘柄や素材株に下げ圧力がかかっている。
大統領選での当選を確実にしたトランプ前大統領がとなえる関税引き上げは中国などとの貿易戦争を引き起こす可能性が高い。報復関税が企業業績の先行き不透明を高めるとの警戒感が強まっている。
米国の産業保護や減税策を掲げるトランプ氏の勝利で、米国株への投資マネー集中が鮮明だ。ダウ工業株30種平均は8日、前日比259ドル(0.6%)高の4万3988ドルで引けた。
連日の最高値更新に沸く株式市場の一角ではトランプ氏公約の「負の影響」を吟味する動きが進む。
相場高の流れに逆らって下げが目立つのが農機や肥料のメーカーの株価だ。
農機大手ディア株は8日、前日比4%安となった。カナダの肥料大手でニューヨーク証券取引所に上場するニュートリエンは同1%安となった。事業環境の先行き不透明感が重荷だ。
「農機ディーラーは、関税に関わる穀物市場への影響を懸念していた」。
4〜6日にテネシー州ナッシュビルで開かれた農機関連イベントに参加した米シティグループの機械担当アナリスト、カイル・メンジェス氏は投資家向けメモにこう記した。
トランプ氏は選挙戦で、すべての輸入品に10〜20%の一律関税を課し、もともと高関税を課してきた中国製品についても関税を60%へ引き上げると主張してきた。実現すれば、各国が米国に対し報復関税に動く可能性は高い。
第1次トランプ政権時には中国が大豆など米国産農作物に対して報復関税を課した。
中国向けの穀物需要が低迷し、米国での作付面積にも影響するようなら農機や肥料の需要も低調となりかねない。
素材株も出遅れが鮮明だ。S&P500種株価指数の業種別指数の推移を4日終値比でみると「素材」の上昇率は1%弱にとどまる。11業種のうち10番目だった。
化学品大手デュポンは8日に3%安となった。鉄鋼大手ニューコアは前日までの急伸の反動もあり8日は1%安となった。
トランプ第1次政権の貿易摩擦では、米国内の素材産業への打撃も生じた。
中国は米国の化学品に、欧州連合(EU)は米国産鉄鋼などに報復関税を実施した。同様の事態が再び起きるリスクへの警戒が素材や農業関連株の売り材料となっている。
トランプ第1次政権下も米株相場の出だしは好調だった。世界的な景気回復にくわえ、大型減税などへの期待から17年のS&P500は年間で2割も上昇した。ただ、18年は景気懸念に加えて本格化した貿易摩擦の影響が重なり6%安に転じた。
その中でも、業種別の素材はトランプ氏がアルミや鉄鋼への関税強化を打ち出した18年3月以降徐々に出遅れ、年間では16%安と指数以上に落ち込んだ。足元の米株市場はトランプ氏への期待が先行しているだけに、負の影響への警戒が欠かせない。
ひとこと解説
株のことはよく分かりませんが、輸出国である米国が農産物の禁輸をしたり、輸入国からの報復関税で農産物輸出量が減少すると、米国の農業は確実に縮小します。
米国はこれまで二度穀物を輸出制限して痛い目に遭っています。
いずれも1970年代で、二度目は1979年、アフガン侵攻したソ連への制裁措置でした。
結果は、ソ連市場を失い、翌年制裁解除しても、農業不況は収まりませんでした。
これに懲りてアメリカは二度と輸出制限をしなくなっています。
今度は中国の報復措置ですが、中国は輸入先をブラジルに変えるだけです。余計なことかもしれませんが、ロシアの小麦は、2014年のクリミア併合以来1.5倍に増え輸出しています。
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日経記事2024.11.09より引用