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トランプトレードに死角は 立ち止まったバフェット氏

2024-11-09 08:08:10 | トランプ政権


第1次以上に第2次トランプ政権の政策環境は難しさを増す=ロイター

 

株式市場の経験則からみれば、米大統領選挙でトランプ前大統領勝利は異例の結果といえる。株高の環境にもかかわらず米国民が政権交代を求めたからだ。

有権者が抱える不満やひずみ。トランプ氏返り咲きに市場は楽観に傾いたが、トランプトレードに死角はないか。

 

 


「未来の歴史家は、なぜ民主党候補が圧勝できなかったか不思議がるのではないか」。

米大統領選直前、機関投資家を聴衆にした米シンクタンクのカンファレンスはそんな問題提起で始まった。

 

国内総生産(GDP)など国全体の数字でみれば米経済は堅調だ。欧州よりはるかにいい。失業率も落ち着いてみえる。なのに現政権への支持に勢いがない。有権者の不満はどこにあるのか。

交わされた議論で最大の焦点は、物価高対応の遅れだった。例にあげられたのがインフレ調整後の世帯収入。バイデン政権時代に低迷が目立ち、生活苦を鮮明に映す。第1次トランプ政権時代はその数値は良好だった。

 

加えて不法移民、米社会の「ガラスの天井」、不安定化する世界を現政権の外交の失敗とみなす視線。それらが重なり、変化を求める票を押し上げるのでは――。そして迎えた5日の投票。米国はトランプ氏を選んだ。

株式市場からみても異例だ。投票前の12カ月間の株価上昇率をみると今回は36%高。戦後の大統領選で突出して高い。ここ10回の選挙で、上昇率が10%を超える政権が負けたことはなかった。

 

 

 

株高でも敗れた例は1980年まで遡らねばならない。

物価上昇率と失業率とを足した「悲惨指数」が20ポイント台に跳ね上がっていた時代。インフレ退治を国民が求めた。

 

今回浮き上がった問題が、株高の恩恵が行き渡らない格差にあるのなら「財政はさらに拡張的にならざるをえない」(フィリップ証券の北野一チーフストラテジスト)。

トランプ氏勝利に株式市場はまず「買い」で応じた。選挙結果を巡る混乱が避けられた安堵とともに、トランプ氏が掲げる規制緩和や法人税減税へなどの期待が市場の楽観ムードを後押しした。

 

元メリルリンチの著名エコノミスト、デビッド・ローゼンバーグ氏は「ステロイドラリーだ」と評する。使いすぎると副作用を伴うとの例えだ。

中でも中国からは60%、それ以外の国からは10〜20%という関税が実現すれば、影響は広範囲に及ぶ。

 

それだけ生活者の負担になる。移民規制は労働供給を絞る。格差への不満が生んだ政権交代だが、今度は自らの政策でインフレを呼び込む副作用をはらむ。

ブラックロックは今回、米国株に強気のリスクオン姿勢を維持する。ただ同時に「インフレの高止まりと長期の高金利になればリスク心理に悪影響を及ぼす可能性がある」とも指摘する。

 

インフレは2度ベルを鳴らす――。CMEグループのチーフエコノミスト、エリック・ノーランド氏は70年代の経験をひもとく一人だ。

60年代後半に高まり始めたインフレを一度は抑えたようにみえたが、その後の米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和が行き過ぎて、もっと大きなインフレの波を招いた。「中央銀行にとってインフレ再来は悪夢のシナリオだ」

 

第1次トランプ政権はまだ金利がゼロ水準に向かっていく局面だった。今回は環境が大きく異なる。金利上昇で、米国はこれから連邦債務の利払い費が国防費を上回っていく時代にも突入する。

選挙期間中、一人の投資家の行動が話題になった。ウォーレン・バフェット氏。「宝物」とまで呼んでいたアップル株の保有を減らしたのだ。一時の3分の1にまで落とし、手元の現金は一段と積み上がった。次の使い道について公言はない。ただ少なくとも、上昇してきた株式をいったん手放し立ち止まる判断をしたとみることができる。

 

第1次以上に第2次トランプ政権の政策環境は難しさを増す。

わかりやすい成果を追い求める政策の先に、中長期には狙いと異なる波紋や望まぬ変化も起こりうる。不透明な中、それらが交錯しながら「トランプ2.0相場」が進むとみるべきだろう。

(編集委員 藤田和明)

 

 

 
 
 
 
 
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世界のマーケットを俯瞰しながら、最先端のトピックやテーマをベテラン記者が独自の視点で取材・分析するコラムです。市場の動きを通じて世界経済の今をお伝えします。

 

 

 

 

日経記事2024.11.09より引用

 

 

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