マイクロソフトのブラッド・スミス社長は中国を利することになると主張した
【シリコンバレー=渡辺直樹】
米マイクロソフトは27日、バイデン前米政権が1月に公表した人工知能(AI)半導体の輸出規制案を見直すようトランプ米政権に求めた。
イスラエルなど約120カ国に対し半導体の輸出数量を制限する内容のため、米テック企業の海外展開を妨げ、各国はAIのインフラ整備で中国に頼ることになると警告した。
マイクロソフトで渉外を担当するブラッド・スミス社長がブログに提言を公表した。「バイデン政権が土壇場で導入した規制がそのまま放置されれば、米国の成功の可能性が損なわれる可能性がある」と批判した。
問題視したのはバイデン前政権が1月に発表したAIに使う半導体の輸出規制案だ。輸出先を3つの階層(ティア)に分け、同盟国と敵対国を除く、友好国など第2階層(ティア2)の約120カ国に対して出荷の数量制限を課す。数量を絞ることで中国など敵対国への迂回輸出を防ぐのが狙いだ。
数量制限はスイス、ポーランド、ギリシャ、シンガポール、インド、インドネシア、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアといった国が含まれる。
AIを動かすには半導体を大量に組み込んだデータセンターが必要だ。
スミス社長は半導体の出荷数量の制限により、これらの国でインフラの能力が制限され、米国製のAIを活用する経済的機会が損なわれると主張している。
マイクロソフトは2025年6月期に計800億ドル(約12兆円)をAIに使うデータセンターに投資する計画だ。
世界各国でデータセンターを建設し、UAEでは地元のAI企業と提携した。米国製AIを各国に販売する戦略に支障が出るとして警戒感を強めた形だ。
さらにスミス社長は「各国はAIインフラとサービスを他国に求めるようになり、どこに頼らざるを得なくなるかは明らかだ」とし、規制案は「急速に拡大する中国のAI部門への贈り物になる」と指摘した。
トランプ政権下での輸出規制はまだ方向性が明確に示されていないが、急速に力を付ける中国を念頭に、AIの半導体や技術で輸出規制の見直しが進む可能性が高い。
輸出規制を担当する米商務省産業安全保障局(BIS)の次官補候補のジェフリー・ケスラー弁護士は27日、米議会上院の指名公聴会で半導体やAI技術の輸出規制について「米国の優位性の維持・強化を確実にすることが重要だ」と述べた。
バイデン政権末期に示された規則案は「非常に複雑で官僚的なルールだ」と指摘し、「このルールが思慮深く、本来あるべき形で検討されたのか分からない。正しい解決策なのかも分からない」と話し、見直しに含みを持たせた。
同規制案をめぐってはAI半導体で世界首位の米エヌビディアが「米国の競争力を弱体化させる」と反発し、業界団体も批判する声明を出していた。
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文章や画像を自動作成する生成AIに注目が高まっています。ChatGPTなど対話型AIやMidjourneyなど画像生成AIがあります。急速な拡大を背景に、国際的な規制や著作権に関わるルールなどの策定が急がれています。
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日経記事2025.2.28より引用