25日の東京株式市場で日経平均株価が大幅続落し、3万8000円を割り込んだ。
前日終値からの下げ幅は取引時間中に一時1300円を超えた。終値は1285円(3%)安の3万7869円。前日の米ハイテク株の急落で世界的にリスクオフの様相となったことに加え、外国為替市場での円高が日本株の下落を増幅した。
前営業日比の下げ幅としては英国の欧州連合(EU)離脱が決まった国民投票翌日の2016年6月24日(1286円33銭)以来約8年1カ月ぶり、歴代9位の大きさだった。
株式市場では一般的に、直近高値からの下落率が1割を超えると「調整局面」、2割を超えると「弱気相場」とされる。
この基準で言えば、7月11日につけた史上最高値4万2224円からの下落率は1割を超えており、日本株市場は調整局面入りとなる。
「短期筋のモメンタムプレーヤーが6月末からの買いを一気に巻き戻しているということだろう」。米欧の長期投資家を主要顧客とする外資系証券トレーダーは25日の日本株の急落について冷静に分析する。
日経平均急落の背景にあるのは、前日の米国株安を受けた世界的なリスクオフの流れだ。24日にダウ工業株30種平均は1.2%安、S&P500種株価指数は2.3%安、ナスダック総合株価指数は3.6%安で終えた。ハイテク株の比率が高い株価指数ほど下げがきつかった。
震源地は電気自動車(EV)大手のテスラの決算発表。4〜6月期決算は調整後1株当たり利益が0.52ドルと、市場予想(0.61ドル)を下回った。
各国で値引き販売を進めた影響で平均単価が下がり、収益が悪化した。将来の成長分野とするロボタクシー(自動運転タクシー)の発表を2カ月延期すると表明したことも投資家の失望売りを誘い、発表翌日の24日に12%安で終えた。テスラ株の急落が市場全体の投資家心理を冷え込ませた。
米国株安の不穏な流れに輪をかけるように進んだのが為替の円高進行だ。日本株にさらなる追い打ちとなった。
まず円高は輸出企業の業績を悪化させる効果を持つため、円高が進むと日本株には逆風となりやすい。
加えて、株安自体がさらなる円高を招く構図もある。外国人が日本株に投資をする際、日本株を買うと同時に同額の「円売り・ドル買い」を行い為替変動のリスクをヘッジするケースがある。
こうした投資家は、円ベースで取引される日本株が下がればドルを売って円を買う。
つまり、大幅な円高・株安局面では、円高と株安が連鎖してダブルパンチになりやすい関係にある。
市場では「為替の円高がどこまで進むか、それを確認できないと投資家は日本株買いに動けない」(ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジスト)との声もある。
25日の東証プライムは全体の8割近くが下落するほぼ全面安の展開だったが、中でもこのところ上昇基調だった防衛関連株が大きく下げた。
川崎重工業は9%安、IHIは6%安、三菱重工業は6%安で取引を終えた。
防衛関連株は米大統領選でトランプ氏の返り咲きを見越した「トランプ・トレード」の一角で注目された銘柄群だ。
米中など国家間の緊張が高まり各国の防衛支出が増えることで、収益が拡大するとの思惑から買われていた。例えば、IHIは前週末19日時点で5695円と、証券会社のアナリストが設定する目標株価の平均値(4445円)から28%「割高」だった。
岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは「人気化していた銘柄は市場から投資マネーが抜け出るタイミングでより影響を受けやすい」と指摘する。
その上で、「防衛関連株は円安による業績押し上げも期待されていた」と話す。防衛関連株は世界的なリスクオフと急速な円高で一気に修正売りが膨らんだ。
日本株の急落を呼び込んだ円高との共振は果たして収まるか。
7月30〜31日に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定会合で為替・金利の方向感が見えてくるまでは日本株の不安定な値動きが続きそうだ。
(桝田大暉)