雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

坊主頭

2009-06-05 | 雑記
 会社によく出入りしている、自分と似た年齢の業者さんが丸坊主になってやってきた。夏になるといつもこうなるので別段驚いたわけでもないが、とりあえず挨拶代わりに話題をふってみた。

「ずいぶんスッキリしたね」

「いやー、もうぼさぼさだったもんですから」

 彼は坊主頭を撫でながら気恥ずかしそうに言う。

 年がら年中ぼさぼさの私は、ただ笑顔で応えるしかない。

 自分は今まで坊主にしたことなどないから多少の憧れがある。楽だろうなー、って。でも、そんな潔さというか、根性は、ない。だって、明らかに似合わないだろうし。もし自分が坊主頭になるとしたら、出家するか、刑務所で暮らすかしたときくらいだろう。

 そんなことを考えていたら、彼はクルリと後頭部を見せて「ほら、ここ。十円ハゲができちゃって」と、見事なハゲを指差す。

「あ、ホントだ」

 私は笑うわけにもいかず、対処に窮したが、すかさず彼が

「仕事のストレスっすよー」

 と笑い飛ばしたので、一緒に笑ってその場を凌いだ。だが後になって、そこは笑ってもいいところだったのか? と、考えてしまった。

 しかし、ハゲのことを考えすぎてハゲができてしまってはシャレにもならないので、やはり笑い飛ばすのが最善の策なのだろうなぁ、と結論した。

 やはり、躊躇なく坊主頭にできる潔い人は、性格も潔いのだろうなー。と思ったのも束の間、そんな潔い性格の人はストレスハゲなんてできないかぁ、とも。

 いずれにせよ彼は、いつも明るく礼儀正しいので、そのちっちゃいハゲも愛嬌のひとつになって、ますます好感度がアップしたというものだ。
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一瞬の風になれ/佐藤 多佳子

2009-06-05 | 小説
 もーう、これは、とびっきりの青春だね。

 この本読んでるときは、オレの気持ちは高校の陸上部だもん。走り出したい気持ちに駆られるけど、現実は三十過ぎたオッサンだからどうしようもなくて切なくなるけど……。

 部活っていいね! 仲間っていいね! 恋っていいね!

 0.1秒でも速く走りたいというひたむきさ、好きだからこそ告白できない純粋さ。自分の青春時代とはまるっきり真逆だけれど、だからこそ、こんな真っ直ぐで爽やかすぎる青春が、穢れた胸をキュンキュン突いてくるのかな? だな。

 知り合いの息子さんが中学の陸上部。是非ともこういう青春を送ってもらいたいものだ、と、本人からしてみるととても鬱陶しいだろうことを思ってしまった。

 まぁ、いろんな青春があるさ。
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ひとりずもう/さくら ももこ

2009-06-05 | 小説
 初潮の話から、漫画家デビューまでの、自身の青春期を描いたのほほんエッセイ。

 オシャレに目覚めたり、片想いしたり、そりゃもう青春にはつきものの話なんだけど、やはりさくらももこは一味ちがう!いや、二味くらいちがうかな…。なんか、リアルなまる子が青春体験しようとしてるなー、って感じで(いや、実際にそういうことだから)ほとほと呆れつつも無性に親しみが湧いてしまう。

 とにかく、いちいち笑えるのだが、高三の春休みから真剣に漫画家への挑戦をはじめた頃からは、読んでるこちらも思わず「ぐいっ!」と力んでしまう。

 勇気が湧いてくるとか、夢に向かう希望がもらえる、なんてことは特にないんだけれど、何事も「やらないよりはやったほうがいいんだ」ってことを再認識させてくれた。そして、「ダメなら方向転換も『アリ』だから」。

 人生の全てに身構えつつも、どこか楽観している作者の性格が実によくあらわれている一冊。
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