雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

灰色猫のフィルム /天埜 裕文

2010-02-23 | 小説
 第32回すばる文学賞。ケータイで十ヶ月かけて書き上げた、ということが凄いのかどうなのかはよく判らないが、22歳という年齢でここまで描ききる、というか、22歳だからこそ描ききれたのだろうと深く頷ける文体であった。しかし、内容的には真新しさなどはない。母親刺して、逃げて、ホームレスになって、そしてやがて……。ラストは少しグッとくるものの、やはりストーリーの波はあまりない。が、しかし、文芸作品に於いては特に問題のないことだろう。ストーリー云々よりも、その描写力、息遣い、不確かな確かさ、が際立っていた。が、やはりベタ褒めできるわけではない。
 それはたぶん、肌に合うか合わないか、くらいの問題なのだろうけれど、そこがいちばん肝心なところなので。もし二作目が出ても、自分は読まないと思う。

 先日ある文芸誌に彼のエッセイを見つけて思わず手に取った。読んでみて思ったことは、「金を払う価値のない文章だな」だった。
コメント (2)
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