雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

陽の子雨の子/豊島 ミホ

2009-01-12 | 小説
≪思いがけない夏が、いま始まる。
私立の男子中学に通う夕陽、24にしては幼く見える雪枝、15で雪枝に拾われて4年になる聡。初めて夕陽が雪枝の家を訪ねる日、押入れの中には、後ろ手に縛られた聡がいた……。不安と希望の間で揺れる、青春の物語。≫

 ちょっと浮世離れしたお話のようで、そのじつ、雪枝の抱えている不安や焦燥はとてもリアルに感じられた。
 雨の日の孤独感というか空虚感の表し方がとても巧みで、やっぱりこの作者の情景描写は素晴らしいなぁ、とあらためて思い知らされた。
 
 ただ中学男子にしてはあまりにも純粋というか潔癖すぎる夕陽にもどかしさを通り越して呆れてしまうことが多々。しかしその対称としての聡がそれによって巧く活かされていたりして、そしてこの二人の一人称で進んでいく中で浮き上がっていく雪枝像は、痛々しくて、愛おしくて・・・きっと、守ってあげたくなる人の姿が重なってくる。

 ほらね。やっぱり豊島ミホの作品を読むと、過ぎ去った青春の甘酸っぱさやほろ苦さ、胸苦しさが甦ってくるんだ。
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2 コメント

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Unknown (藍色)
2009-09-23 03:06:29
空虚感がとっても印象的でしたね。
トラックバックさせていただきました。
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Unknown ()
2009-09-27 12:34:44
思春期特有の空虚感ってやつでしょうかね?
今ではもう忘れてしまった感覚だけど、豊島さんの作品を読むとそういったものを思い出させてもらえるから好きです。
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