モリタさんは、年に四度ほど我が家を訪問する。
と、言っても、我がマンションは玄関口にセキュリティーが施されており、来訪者は玄関口のインターホンで部屋番号を指定し呼び出す仕組みで、モリタさんの来訪も毎度インターホン越しなのである。
すでに最初の訪問から四、五年は経っているのだが、お互い、姿は知らず、声のみのコミュニケーションである。
しかし、コミュニケーションといっても、そんな大したことではない。初めてモリタさんが訪問してきたときは、こんな感じであった。
ピィンポーン・・・と、インターホンが鳴り、受話器を取る私。
私「はい・・・」
モリタさん「夜分遅くすみません(今でも大抵、来訪は夜七時半から八時くらい)モリタと申しますが、少しよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・?」
モリタさん「最近の地球環境の変化について、様々な研究がなされておりますが、私たちのグループでは云々かんぬん・・・・少年少女による非行問題云々かんぬん・・・・政治の怠慢、汚職云々かんぬん・・・・それによりどんどん温暖化が云々かんぬん・・・・これらをどうにか云々かんぬん・・・・」
私「はぁ・・・?」
受話器を持ち「はぁ?」しか言わず戸惑っている私を見て、妻が「誰?」と訊く。とりあえず受話器を離し「モリタさん」と答えとく。妻は解せぬ表情で首を傾げる。
モリタさん「つきましては、この問題を詳しく記した冊子を、お宅様のポストに入れさせてもらってもよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・」
モリタさん「ありがとうございます。では、おやすみなさいませ・・・・」
ガチャリ・・・受話器を置く。この間、約五分くらいだろうか?とにかくモリタさんは現在の地球上の問題を憂いているグループの人らしい。
そう妻に説明すると、
「宗教でしょ」とバッサリ切り捨てた。
翌日、ポストの中には、ナントカの証人だか、ナンタラ教会、のような雰囲気の団体名が記入され、昨夜モリタさんが延々と話していた事柄をイラスト付きで詳細に記してある小冊子があった。
妻に「これ」と差し出すと、「ほらね」と困惑気味な表情で一瞥し、マンションのゴミ箱に捨てた。
で、それからも、大体こんな感じのやり取りが年に四回ほど、もう四、五年続いている。
私が在宅しているときは必ずインターフォンは私が取るので、いつもモリタさんの相手をするのは私だ。
何回目かで、妻が「いい加減要らないって言え」と私に指図するのだが、切実と地球の未来を案ずるモリタさんを無下に断るのも憚られる。
それに年四回程度、ほんの何分間のことである。私も適当に相槌を打っているだけで、洗脳されている訳でもないので、まぁ、いいではないか。
それに、実はモリタさん、意外と可愛らしい声をしているのだ。ええ、ここが一番重要なポイントなんです。
で、毎回、小冊子を置いていくんですが、毎日、ポストの中を見るのは妻の役目なので、私は最初の一冊しか見ていないんです。その後は全部、妻に捨てられています・・・。
妻が言うには「こういうのも資源なんだから、ちゃんと見たい人のところに配らなきゃ勿体無いでしょ?だから、ちゃんと断りなさい!」だと。
ふむ、妻よ、オマエもたまには良い事を言うじゃないか、と感心する。
が、それでもやはり、毎回私はおざなりな返事を続け、モリタさんの手を煩わす。
そんなモリタさんが、先日また、訪問してきたのだが、なんだかいつもと様子が違っていた。
ピィンポーン・・・・
私「はい?」
モリタさん「夜分遅くすみません、モリタと申しまが・・・(出だしは当初から一貫してこのセリフが続いている)
今回、重要なお知らせを持って参りましたので、お宅様のポストに入れさせてもらってもよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・?」
モリタさん「ありがとうございます、では、おやすみなさいませ・・・・」
ガチョ・・・・
私「は、早っ!」
妻「誰?」
私「モリタさん・・・なんか、重要なお知らせだって?」
妻「ふ~ん」
で、その重要なお知らせというのが、実は・・・・謎なんです。いつもどおり、妻があっけなく捨てちゃいました。アハハハ・・・・そんなワケで、ここまで読んでもらって申し訳ありませんが、オチもヘッタクレもありませんよ。
それにしても、一体何が書かれていたんでしょうね?やはり、この前の地震などで、モリタさんのグループも切羽詰まってきたのでしょうか?やけに急いでいた様子でもありましたしね。
どこか遠くへ、楽園を求めて、モリタさんたちは旅立ってしまうのでしょうか?
などと想いを巡らせつつも、また季節の変わり目になると、何事も無かったかのように、モリタさんの声が聞けるんだろうなぁ・・・とも思います。
と、言っても、我がマンションは玄関口にセキュリティーが施されており、来訪者は玄関口のインターホンで部屋番号を指定し呼び出す仕組みで、モリタさんの来訪も毎度インターホン越しなのである。
すでに最初の訪問から四、五年は経っているのだが、お互い、姿は知らず、声のみのコミュニケーションである。
しかし、コミュニケーションといっても、そんな大したことではない。初めてモリタさんが訪問してきたときは、こんな感じであった。
ピィンポーン・・・と、インターホンが鳴り、受話器を取る私。
私「はい・・・」
モリタさん「夜分遅くすみません(今でも大抵、来訪は夜七時半から八時くらい)モリタと申しますが、少しよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・?」
モリタさん「最近の地球環境の変化について、様々な研究がなされておりますが、私たちのグループでは云々かんぬん・・・・少年少女による非行問題云々かんぬん・・・・政治の怠慢、汚職云々かんぬん・・・・それによりどんどん温暖化が云々かんぬん・・・・これらをどうにか云々かんぬん・・・・」
私「はぁ・・・?」
受話器を持ち「はぁ?」しか言わず戸惑っている私を見て、妻が「誰?」と訊く。とりあえず受話器を離し「モリタさん」と答えとく。妻は解せぬ表情で首を傾げる。
モリタさん「つきましては、この問題を詳しく記した冊子を、お宅様のポストに入れさせてもらってもよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・」
モリタさん「ありがとうございます。では、おやすみなさいませ・・・・」
ガチャリ・・・受話器を置く。この間、約五分くらいだろうか?とにかくモリタさんは現在の地球上の問題を憂いているグループの人らしい。
そう妻に説明すると、
「宗教でしょ」とバッサリ切り捨てた。
翌日、ポストの中には、ナントカの証人だか、ナンタラ教会、のような雰囲気の団体名が記入され、昨夜モリタさんが延々と話していた事柄をイラスト付きで詳細に記してある小冊子があった。
妻に「これ」と差し出すと、「ほらね」と困惑気味な表情で一瞥し、マンションのゴミ箱に捨てた。
で、それからも、大体こんな感じのやり取りが年に四回ほど、もう四、五年続いている。
私が在宅しているときは必ずインターフォンは私が取るので、いつもモリタさんの相手をするのは私だ。
何回目かで、妻が「いい加減要らないって言え」と私に指図するのだが、切実と地球の未来を案ずるモリタさんを無下に断るのも憚られる。
それに年四回程度、ほんの何分間のことである。私も適当に相槌を打っているだけで、洗脳されている訳でもないので、まぁ、いいではないか。
それに、実はモリタさん、意外と可愛らしい声をしているのだ。ええ、ここが一番重要なポイントなんです。
で、毎回、小冊子を置いていくんですが、毎日、ポストの中を見るのは妻の役目なので、私は最初の一冊しか見ていないんです。その後は全部、妻に捨てられています・・・。
妻が言うには「こういうのも資源なんだから、ちゃんと見たい人のところに配らなきゃ勿体無いでしょ?だから、ちゃんと断りなさい!」だと。
ふむ、妻よ、オマエもたまには良い事を言うじゃないか、と感心する。
が、それでもやはり、毎回私はおざなりな返事を続け、モリタさんの手を煩わす。
そんなモリタさんが、先日また、訪問してきたのだが、なんだかいつもと様子が違っていた。
ピィンポーン・・・・
私「はい?」
モリタさん「夜分遅くすみません、モリタと申しまが・・・(出だしは当初から一貫してこのセリフが続いている)
今回、重要なお知らせを持って参りましたので、お宅様のポストに入れさせてもらってもよろしいでしょうか?」
私「はぁ・・・?」
モリタさん「ありがとうございます、では、おやすみなさいませ・・・・」
ガチョ・・・・
私「は、早っ!」
妻「誰?」
私「モリタさん・・・なんか、重要なお知らせだって?」
妻「ふ~ん」
で、その重要なお知らせというのが、実は・・・・謎なんです。いつもどおり、妻があっけなく捨てちゃいました。アハハハ・・・・そんなワケで、ここまで読んでもらって申し訳ありませんが、オチもヘッタクレもありませんよ。
それにしても、一体何が書かれていたんでしょうね?やはり、この前の地震などで、モリタさんのグループも切羽詰まってきたのでしょうか?やけに急いでいた様子でもありましたしね。
どこか遠くへ、楽園を求めて、モリタさんたちは旅立ってしまうのでしょうか?
などと想いを巡らせつつも、また季節の変わり目になると、何事も無かったかのように、モリタさんの声が聞けるんだろうなぁ・・・とも思います。
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