雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

造花の蜜/連城 三紀彦

2009-06-13 | 小説
≪造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。≫

 中盤までの誘拐事件の描写にはスリルを感じ、その後の事件の真相が明らかになるところではカタルシスを覚え、もうこれで充分だと思えるのに、さらにラストでどんでん返しの事件を用意している。生半可な誘拐ミステリではない。
 一応、ツッコミどころが無きにしも非ず、だが、そういうことをものともしないスリルとスピードが凄まじい。

 ぐいぐい惹き込まれるてゆく感覚は、作中登場人物の青年と思わずリンクしてしまう。
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