≪ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか? モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント! ≫
貫井徳郎の、所謂「社会派」的作品を読み終えると、毎回なんらかの問題意識を抱かされる。あるときは宗教だったり、あるときは未成年犯罪だったり、またあるときは、復讐だったり。とかく現代社会に蔓延る問題を濃密な筆致で描き、読む者の心根を鋭く抉る。
そしてその、最たる作品がこの『乱反射』であろう。
少なからず、誰もが犯しているであろう日常の些細なモラルの逸脱が、取り返しのつかない大罪を招く。読んでいて、心底「ゾッ」とした。まさに社会全体、人間全体を問いただす、衝撃作。
「運命の悪戯」と、一言で片付けてしまえばそれだけかも知れないが、誰かが一人でも、まっとうなモラル意識を保っていたなら、防げた事故。しかし、それも、事が起きた後だからこそ気付くジレンマ。やり切れなさの中で苦しむしかない。
もう、どうしようもないくらい苦い作品(だいたい貫井作品はそんな感じか)なのだが、小説的、エンターテーメント的見地から読めば、とにかく惹き込まれる。前半は事件の要因を担う人間たちの日常を、その中で起こすモラル違反が丹念に描写され、中程、事件が起きてからの勢いがもの凄い。被害者の父がその真相を追っていく姿、事件を引き起こした人々の身勝手極まりなさを、これでもか、と曝け出していく。もう、とにかく、終盤に向けて読む手が止まらない。
これは、正義とか悪とかの話ではない。政治や組織などの大きな話などではない。まっとうな社会生活を送るための最低限のルール、モラル、それらを我々ひとりひとりが、どう受け止めて、どう受け流しているか、という話だ。
貫井徳郎の、所謂「社会派」的作品を読み終えると、毎回なんらかの問題意識を抱かされる。あるときは宗教だったり、あるときは未成年犯罪だったり、またあるときは、復讐だったり。とかく現代社会に蔓延る問題を濃密な筆致で描き、読む者の心根を鋭く抉る。
そしてその、最たる作品がこの『乱反射』であろう。
少なからず、誰もが犯しているであろう日常の些細なモラルの逸脱が、取り返しのつかない大罪を招く。読んでいて、心底「ゾッ」とした。まさに社会全体、人間全体を問いただす、衝撃作。
「運命の悪戯」と、一言で片付けてしまえばそれだけかも知れないが、誰かが一人でも、まっとうなモラル意識を保っていたなら、防げた事故。しかし、それも、事が起きた後だからこそ気付くジレンマ。やり切れなさの中で苦しむしかない。
もう、どうしようもないくらい苦い作品(だいたい貫井作品はそんな感じか)なのだが、小説的、エンターテーメント的見地から読めば、とにかく惹き込まれる。前半は事件の要因を担う人間たちの日常を、その中で起こすモラル違反が丹念に描写され、中程、事件が起きてからの勢いがもの凄い。被害者の父がその真相を追っていく姿、事件を引き起こした人々の身勝手極まりなさを、これでもか、と曝け出していく。もう、とにかく、終盤に向けて読む手が止まらない。
これは、正義とか悪とかの話ではない。政治や組織などの大きな話などではない。まっとうな社会生活を送るための最低限のルール、モラル、それらを我々ひとりひとりが、どう受け止めて、どう受け流しているか、という話だ。
オレ的にはラストは「そこ」(コンビニおにぎり云々)で終わったほうがいいんじゃないか?と思ったよ。だけどそれじゃあ救いがないからかな?昔の貫井ならきっと「そこ」で終わってたよな。まるくなったんかな?
こういう群像小説はやっぱ筆力がものをいうね。その辺は、申し分なしだよな。