雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

港町食堂/奥田 英朗

2009-03-25 | 小説
 N木賞受賞作家、奥田英朗の旅エッセイ。

 紀行文、好きなんです。旅行は好きなんだけど、貧乏ヒマなしということで、時間面、金銭面において、そうそう出かけることは叶わない。だもんで、こういう紀行文、特に好きな作家さんが書いているのは、好物。

 読んでいると、まるで自分もその場に居合わせているような……気など、もちろんマッタクするわけもないが、絶景を賞賛し、名物の絶品料理を喰らい、地元の人々との何気ないふれあい、などを羨みながら読み、自分の中の旅情をかき立てるのが、好き。とにかく、そこで描かれた土地を夢想する。たぶん、あれだ。列車の時刻表をずーっと見て色んな電車に乗った気分になる人とか、地図をずーっと眺めて色んな土地に行った気分になる人とか、いるでしょ?いるんだよ。そういう人たちの感覚と似てる。
 とにかく欲求を擬似で満たしているんだ(ハッ!?オナニーっぽい?)

 この本のコンセプトは『船』での旅。新幹線や飛行機なら一時間そこらの距離を、わざわざ何時間(時には二十一時間!)もかけて大型フェリーで行く。たいへん贅沢な(時間)を過ごす旅。船旅なので、もちろん到着するのは港。
『港』……なんとも旅情をかき立てられる響きではないか。そこにきて港町の人々のなんとも人情味の厚いこと。もう、いてもたってもいられない!けれども、船旅なんぞ、そうそう出来るこっちゃない。

 今の私に出来る精一杯は、とっととETC搭載して日帰りもしくは一泊のドライブ旅行くらいだ。だが、いつの日か、金と時間に余裕が出来たなら(できるのか?)是非とも船旅をしてみたい。とりあえず高知へ行ってカツオ、サバ、を思いっきり堪能したい!

 ま、私の旅心はいいとして、この本、奥田さんのいつもの毒舌というか偏屈さもしっかり書き込まれ、尚且つ、作家・奥田英朗の素顔が垣間見られ、ファンとしては申し分のない旅エッセイでした。
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