雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

アレグリアとは仕事はできない/津村 記久子

2009-01-20 | 小説
 野間文芸新人賞受賞(ミュージック・ブレス・ユー!!)後第一作。

 社内の新型複合コピー機(アレグリア)。そいつに振り回され、憎悪の日々を送るミノベの周りで起こる社内のいざこざを描いた表題作『アレグリアとは仕事はできない』

 朝の通勤電車に乗り合わせた人々が遭遇したある「事件」をそれぞれの視点から描いた『地下鉄の叙事詩』

 の、中篇二本立て。

『アレグリア~』に関しては、よくまぁこんな斬新な内容が思いつくなぁ、ってか、よくまぁコピー機に対してこれほど悪態が吐けるなぁ、と。でもまぁ、とにかく面白いです。ってか、それが面白いんです。内容の斬新さもさることながら、言動の斬新さも必見です。

『地下鉄の~』に関しては、これもまた多視点で描かれていてその巧みさに感嘆しますが、それよりなにより、またこれほどまでに違う人間を使って有らん限りの悪態を放出しているなぁ、と。
 ほんとに、罵詈雑言に満ちた一冊だな。でも、それが嫌悪感につながらず、ときに理解し、ときに笑えて、つくづく津村記久子という作家の人間性に愛着を覚えてしまいます。
 どちらもとても面白くて、そしてラストではじんわり心に沁みるシーンが用意されております。


 それはそうと、先日(15日)津村記久子さん、ついに芥川賞を受賞されました。
 私は信じてましたよ。貴女の才能を。えぇ、信じてましたとも。
 太宰治賞につぎ、芥川賞までモノにするとは、まったく、底知れぬ才能を見せつけられた感じです。

 なにはともあれ、おめでとうございます。いや、別に知り合いではないんだけどね、いちファンとしてだ。

 これからの活躍が楽しみです☆
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« どつぼ | トップ | 水の時計/初野 晴 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事