雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

横道世之介/吉田 修一

2009-10-15 | 小説
 これはおもしろかったなぁ。主人公「横道世之介」の上京物語、なんだけど時代が80年代ってのが、いいなぁ。ケータイとかない時代。あの頃は、今みたいにせせこましくなかったんだ。て、オイラは'74年生まれだから青春時代は90年代になるんだけれども、少なからず80年代の匂いも嗅ぎとっているから、やっぱ郷愁を覚える。
 その時代設定もさることながら、主人公「世之介」の人柄、というか性格。が、いい。特に、ヒーローとかではない。いうなれば、ふつうの人。だけど、なんだか、ふつうがとても心地良い。たぶん「のび太」が大学生になったらこんなカンジ? 違うか? まあ、とにかく、そんな世之介の周りに集う人たちもまた、その世之介の魅力のない魅力に、気付かないうち惹かれていく。読んでるこちらも惹かれていく。稀有な存在だ。
 そして合間合間に挿入される世之介とかかわった人たちの二十年後の話。そこから明らかになってくる現在の世之介。このへんが実に巧い。そして……。

 本当に、魅力溢れる横道世之介の世界に、読み終わったあともしばらく呆然と浸ってしまいました。
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