ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ウイグル、審判、読書の話

2010-09-02 21:20:34 | Weblog
朝の通勤電車での読書が楽しい。
朝は集中力があるから、どんどん進む。
そして、降りる駅でハッと気づく。
いつかきっと乗り過ごす。

今日の往復では、この本を読んだ。
『7.5ウイグル虐殺の真実―ウルムチで起こったことは、日本でも起きる』
イリハム・マハムティ著、宝島社新書

10年くらい前に、友人が「もうウルムチはダメらしいよ」と言っていた。
これはつまり、ウイグルらしさがなくなり、漢化されてしまった、という意味だ。
街中、漢民族があふれ、漢民族のビルが建ち並ぶ。

ウイグルの本を読むと、4月にウズベキスタンへ行ったときのことを思い出す。
ウズベクのガイドさんに「新疆ウイグル自治区」と言っても通じず、
「東トルキスタン」と言ったら、すぐにわかってくれた。
あそこは、漢民族にとっての新たな領土、名ばかりの自治区ではなくて、
シルクロードの民にとっては、「東トルキスタン」なんだ。

この本を読むと、いろいろと考えさせられる。
・日中記者交換協定のためか、中国の実態を報道できない日本のメディア。
 これは、中国にとって不利なことは報道しない、という協定で、
 マスメディアのあり方として、かなりずれている。
・外国人の参政権。
 ウイグルやチベットに漢民族が移住したように、日本に移住してきたとき、
 参政権があったらどうなるのか、ということ。
 すでに、現在、子ども手当も相当おかしいけど。
こういった、日本に直結した話がたくさんある。
ウイグルの問題もあるけれど、明日は我が身、なのかもしれない。

ここで、ふと、昨日読み終わった『審判』を思い出した。
(カフカ著、辻ヒカル訳、岩波文庫)

ここでは、原罪をもつ人間、
万能だという幻想をもちおごってしまった人間が、
存在の根本的な不安に浸食されていく姿が描かれるのだけど、
このブルジョアの塊みたいな人間の描写が、なんとも滑稽だった。

滑稽なんだけど、それを自分でも気づいているのだけど、
「これだけ社会的に成功したんだから、何が悪いんだ」という居直り。

他人や外国を見るということは、自分を知ることにつながる。
そろそろ、ちゃんと中国のことを報道してほしいものだな、と思う。
国営放送は、中国の中央電視台と蜜月を続けるのだろうからしょうがないけど、
せめて民放は・・・、お願いしたいものだ。

むかし素晴らしいと思ったドキュメンタリー「シルクロード」への幻滅が、
日々つのる。