ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ふれあい

2010-09-07 19:52:42 | Weblog
会社からの帰り道、電車の座席に座ったら、
隣に、おそらく少し知能の発育障害がある10歳くらいの女の子が座っていた。

私の読んでいる本の行を、指でなぞりはじめたので、少し会話をした。
あまり会話はかみあわない。
ただ、彼女が「着物を着たい」というので、
私が「二十歳になったら、振袖のきれいな着物が着れるねえ」と答えると、
そしたら、彼女は少し考えた後に、
「大人になったら、どこかへ行きたい、どこへ行けるかな」と言った。

その後、私が乗り換えの駅に着き、
前髪をおさえているピンをなおしてあげ、バイバイと手を振ったら、
ハイタッチのように、手のひらを合わせてきた。
そして笑顔で「またね」と言って別れた。

彼女との会話は、とても、とりとめのないものだった。
もしかしたら、彼女の発想のなかではつながっているのかもしれないけど、
私には、前の言葉を受けて、次の言葉が続くようには思えなかった。
ただ、私の言葉を全身全霊で聞いていた。

だから、ごまかしがきかない。
ちゃんと眼を見て、私が話をしているのは、あなたですよ。
あなたに微笑みかけているのですよ。
あなたの言葉を、聞いているのですよ。
と、すべてで表現しなければならない。
そうしないと、すごく不安そうな表情を見せる。
それは一瞬で消える表情なのだけど、心の底からの、
ひたすら受動的な不安のように思えた。

ふだん誰かと話をしていると、上の空ということがある。
少しくらい失礼があっても、相手は頭の中で「いま、忙しいんだな」と補完してくれる。
トータルで、私にできる範囲において、なんとなく自己満足が得られる程度に
相手に対して誠意を尽くしていればいいと思っている。
思えば、非常に利己的な関係だ。
彼女との会話は、ある意味では、ついったーと対極にあるふれあいだった。

彼女、1人で電車に乗っていたようだけど、大丈夫だったのかな。
急に心配になってきた。