ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

餓死した英霊たち

2010-09-21 20:25:24 | Weblog
『餓死(うえじに)した英霊たち』(藤原彰著、青木書店刊)

太平洋戦争で亡くなった旧日本軍の兵士の数は、
230万人と日本政府は言っているらしい。
そして、この本によると、その過半数が餓死だったという。
なんともいたたまれない。

この本は、従軍経験もある著者が、冷徹な眼と長年の研究の結果、
旧日本軍の実態に、特に「補給」という側面から迫った力作だ。
日本人なら、必ず一度は読むべき本だと思う。

勇敢に敵陣に切り込んでいったうえでの全滅もあった。
でも、食糧も弾薬もなく、やせ衰え、降伏もゆるされず、
密林の中を彷徨い歩いた結果の餓死。これが230万人の過半数を占めるとは。

南洋には、海の上にぽっこりとブロッコリが頭を出しているような、
上陸も居住も不可能な島々がたくさんある。
富士山よりも高い山もあれば、密林にも覆われている。
そこを、中国大陸と同じように考えて、中央は作戦を立てていたらしい。

制空権もないなか、ただ兵士だけを送りつづけ、
兵士自身が最初に持って行った約1週間分の食糧が尽きたら、現地調達せよとは・・・、
ご飯もそうだけど、弾薬も薬もないなかで、
本当に銃剣だけで戦争に勝てると思っていたのだろうか。

補給がないなかで戦争をするなんて、リアルに想像することなんてできないけど、
もし、そんな状況に追い込まれたら、それは、人も鬼になる。
現地の人から略奪するだろうし、土地を荒らすだろうし、
仲間割れもするだろうし、より立場が弱い朝鮮や台湾などの軍属の人をいじめたり、
もうそれは、日本鬼子ともなるだろう。
そして、そんな本人たちを、いま私が責めることはできない。

作戦本部は、「こうだったらいいな」という夢のような作戦を立て、
補給をまったく考えず、現地の情報すら集めず、ただ兵士たちを送りつづけた。
まるでいまのテレビゲームをリアルでやっていたようなものではないか。
きっと、死者すら画面から蒸発するような意識だったんだろう。

日本の同胞に対するこの裏切りを思うと、
A級戦犯や作戦を立てていた人たちを靖国に祀るのはどうかという気がしてくる。
それもひっくるめて祀るのが日本だ、とも、頭の片隅では思うのだけど・・・。

まず、政府は遺骨収集をちゃんとやろう。
そして、餓死した人たちに向き合おう。
玉砕なんて、美しい言葉、どこにもなかった。

いまでも仕事をしていると、特に営業部なんかでは、「精神論」がアツく語られる。
確かに予測不能なことは起きうるし、
そんなときに踏みとどまって打開していくには精神力が必要だと思うけど、
最初から装備も補給もいらない、
それを超える精神力をもっててあたりまえ、ということとは違う。
会社では、いい加減な戦略と指示で、そりゃ無理だよ、ということがよくある。
いつも「なんで???」と思うのだけど、
これも日本のお家芸なのかもしれないな、と思った。