ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

久しぶりに評論を読んで

2010-09-11 23:17:26 | Weblog
久しぶりに、ぐんぐん読んだ。
『人間の消失・小説の変貌』(笠井潔著、東京創元社刊)

読みごたえがある評論は、読んでいると幸せになる。
そして、そこで語られているテーマ、この場合は本に、
すごく興味を感じて、ついつい買ってしまう。
作品のどこをどのように読み解いているのかが気になる。

そして、他の本を読んだときに、ふとその観点を思い出し、
立ち止まって考える。
これが評論のよさだと思う。

ということで、
文章のもっているひとつの価値を存分に味うことができるから
笠井潔さんの文章は好きだ。

でも、『格差社会』は厚すぎて持ち歩けないので、
自宅で集中できる環境のときしか読み進めることができず、
いっこうにページが進まない。
とてもではないけど、寝る前にうとうとしながら流し読みする本ではないし、
感性だけで飛ばすこともできない文章だから。
本を刊行するというのは、難しいと思う。

そして、笠井さんの文章を読んだあとは、
しばしミステリーブームが来る。
むかし母に、文学を読みなさい、とよく言われた。
母にとって、推理小説は文学ではなかった。
価値ある小説ではなかった。
自分でも、ホームズやルパンにハマったくせに、
それは高校時代までのことで、大人になったら違う文章を、
もっと「高尚な」文章を読むべきだと言っていた。

でも、推理小説にしか描けない現実もある。
ある意味で自己弁護だけど、いまなら母にそう言い返すことができる。
笠井さんの言葉を借りてるだけで、まだまだ自分の言葉ではないけど。