ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

誘惑者、絶叫

2010-12-06 21:25:58 | Weblog
今年100冊目の本はキルケゴールの『誘惑者の日記』だった。

これは恋愛小説なのか・・・。
ある種の官能小説だとは思う。
ただ、これを官能小説だと思う人は、たぶん男性がほとんどだろうと思うし、
こんな恋愛をしてみたい、と思う男性とは、たぶん付き合えないと思う。

なんとなくだけど、光源氏と若紫を思い出した。
自分のイメージそのままの、かわいらしくて美しい女性を、
ひたすら観念として愛でたいという欲求は、たぶん男性側のもので、
女性が書くと、源氏物語のように、最終的には具体的な愛になっていくと思う。

まあ、男性が落として、婚約して、捨てて、女性が自殺する、なんていう恋愛は、
いまならゲームのなかで展開されるのだろう。
別にイヤな気持ちにはならなかったけど、面白いとも思わなかったのは、
私に美女ゲーをやるセンスがないのと同じ根っこのような気がした。

そして、101冊目の本は穂村 弘さんの『絶叫委員会』。
節目にふさわしい1冊だった。

内向的な人だからといって、心の中もおとなしいとは限らない。
内面では、さまざまな面白いストーリーが展開している人はいる。

生活にあふれるいろいろな言葉を、独特の感性で切り取る。
そのネタには「そうそう、同じことを思ったことがある!」ということもあれば、
「うむむ。そんなセリフを聞くのは、あなただからでは。普通はない!」と、
思い切り突っ込みたくなるようなことなど、いろいろと広がっていく。
本を読みながら声をあげて笑ったのは、本当に久しぶりだ。

会話って面白い。
実際に耳で聞かなくても、双方向でなくても、たまに成立してしまうことがある。
でも、実際の会話も、ほとんどがそんなことの繰り返しじゃないかな、と思った。
冒険小説でも、「夢を与えます」ファンタジーでもないけど、
読んでスカッとした一冊だった。