ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

写真で見る満州全史

2010-12-21 21:00:41 | Weblog
私のことを「モンゴルで馬に乗って青龍刀でバッサバッサ切りまくっている蒼き女狼」と呼ぶ友人がいる。
決して、怒ってはいない。
戦車より馬、鉄砲より刀のほうが、私の性格には向いていると思う。
そういう問題でもないか。

その友人のご両親が旧満洲にいらして、引き揚げのときのことを文章にしている。
その影響で、ここのところずっと満洲関連の本を読んでいた。
そして、普段はあまり買わないような本を買ってみた。
『図説 写真で見る満州全史』(河出書房新社)

とにかく、どんなところだったのか、写真が見たくなった。
中国にはよく行ったけれど、まだ訪れたことがない土地、旧満洲。
いや、熱河の避暑山荘までは行ったことがある。
でも、訪れた1993年、川が氾濫してて清東陵までは行けなかった。
清東陵は、清の皇族のお墓があるところで、西太后のお墓もそこにある。
もっとも、彼女のお墓はすでに荒らされてしまったあとだけど。

この本を開いて、まず眼に飛び込んできたのが、
右手に青龍刀、左手に鉄砲を持った、モンゴルっぽい顔をした男性の写真だった。
こうして見ると、先に書いた友人のセリフはあまりにヒドい。
今度会ったら、文句のひとつでも言ってやろう。

満鉄「あじあ」号の写真もあった。
開拓団の写真も、奉天、撫順の写真、愛新覚羅溥儀の写真、そして関東軍の写真。
写真が高価だった時代のことだから、軍隊の記録写真が多いのはしょうがない。
それでも、少し、当時の町並みがうつっていた。
目抜き通りは、これまた写真でしか見たことがない銀座のようだった。

そして、たくさんの兵隊たち。
私たちの国が、本当に戦争をしたんだ、と思った。
しかも自分の国の国土ではなくて、他国において。
他国の人たちの土地や命や、自尊心や、目に見えるもの見えないもの、たくさん奪った。
そして、外国に置き去りにされ、踏みにじられた日本人がたくさんいた。

それにしても、溥儀の奥さんの婉容さんは、なんて悲しそうな顔をしているのだろう。
この人は、生きている間に、心の底から笑うような瞬間があったのだろうか。
美しいけれど、その胸を病んでいるような・・・、
満洲は、この婉容さんのようだったんだなあ、と思う。

なにをもって「全史」というかは難しいけれど、見たかったものを少し見ることができた。