豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

ミトコンドリア

2006年08月12日 | Weblog
ミトコンドリアのDNAには母の系譜が綴られている、のだそうです。

核のDNAは男女双方が複雑に交じり合うので、先祖をたどるには不都合なのだそうです。しかし、細胞にエネルギーを与える助けをするミトコンドリアのDNAは、男性側は精子とともに消滅してしまい女性側の卵子にのみ残るので、常に母系遺伝。すなわち、このDNAを遡れば女性側の先祖を辿っていくことが出来るのだそうです。NHKの子供向けの科学番組で取り上げられていた人類のルーツ探しの一節です。面白い話だなあと、その説明の明快さとともに心に残っていました。
もう一度、改めて説明しようとするとなかなか難しいですね。間違っていたら、ごめんなさい。

ともかく、このミトコンドリアのDNAの性質を利用して、母方を辿っていくと人類は一人の母に行き着くのだそうです。その名も「ミトコンドリア・イブ」。ただ、人類はこの一人の女性をのみ母としたのではなく、複数の母が想定されるようです。例えば、ヨーロッパ人は、7人の女性を母としているという具合です。

日本人のルーツも調べられていました。日本人の多くは、9人の母に辿り着くのだそうです。つまり、恵美子、由美、寧々、千恵、愛、幸、フフェイ、ガイア、イナ。この9人です。

すでに「DNAの母」を調べるシステムも整っているようです。DNAの採取キットを取り寄せてサンプルを送れば、自分の「母」が特定されるのだそうです。それにしても、いくら学術記号による命名とはいえ、フフェイさん、ガイアさんあたりがお母さんですと言われてもピンと来ないかもしれませんね。

何ゆえ、こういうことをしどろもどろ書いているのでしょう。
それは、この母系のルーツを示すともいうべき「印」が身近に存在しているのかもと思う事柄に出遭ったからなのです。
少し前に、紋付の着物を着る機会がありました。背中の中心についている小さな紋を見ていると、この紋が母の着物にも付いていたことを思い出しました。着物の紋は、代々母方の模様を娘が受け継いでいくことになっています。
つまり、私の紋は母や母の姉妹と同じものでして、父の姉妹達とは違うのです。
これは、まさに、紋がその人のミトコンドリアの種類を表す記号であることを示しているのではないでしょうか。

この風習は、尾張以西に多く見られる西日本に独特のものだそうです。「女紋(おんなもん)」と呼ぶそうです。家紋は、もともと合戦で手柄をあげたときにそれが誰によるものかをはっきり認識するために発達してきたものだそうです。女紋についてはいろいろな定義の仕方がありますが、主には女性の財産を峻別するため。また、魔よけのためなどを目的として発達してきたようです。
武家社会であった関東に対して、商家が力を持っていた西日本。娘の嫁入りに持たせる道具にこの紋を記し、嫁ぐ娘の財産であることを明確にすることに利用されてきたようです。離縁して実家に帰るときに婚家から財産を持ち出すのはご法度でしたから、最初から娘独自の財産であることを明確にしておこうという訳です。女性の立場が弱かった頃の用心とはいえ、用意のいいことではあります。

しかし、仮に女性の財産をはっきりさせるためだけだとしたら、家紋をつければ事足りたでしょうし、もっと個人的な模様でも構わなかったと思われます。
あえて女紋として独特に発達してきた模様を受け継いで行くことは、やはり、母系の絆を強調することで、揺ぎ無い安心感を娘に与え、その幸せを祈ったものであるとも考えられるのではないでしょうか。