元良親王
わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
陽成院の息子。
ただし生まれたのは陽成が退位した後。
プレイボーイとして名をはせており、特に宇多上皇の妃(御息所)である藤原褒子との恋愛が有名で、この歌も褒子にあてた歌。
実は褒子は当初、その父である関白・藤原時平が当時の天皇であった醍醐(60代)に入内させようとしたのだが、その美しさを見初めた宇多上皇が自分の妃にしてしまったという話がある。
宇多は元々臣籍降下しており、陽成に仕えていたこともあるため、即位したあと陽成に散々嫌がらせをされる。
また、宇多は菅原道真に目をつけ、官位をあげて藤原時平の対抗馬にしようとしたが、これが後の讒言につながる。
歴史的には何の役割も果たさなかった元良親王だが、兵部卿に任官されている。この役職は軍政全般をつかさどる仕事なのだが、桓武天皇の時に正規軍を廃止してしまったため、実質的には名誉職に近い。そうすると治安を守る人がいなくなるため、都に限っては検非違使という役職が作られ、時代が下るとその権能も拡大、平安末期には都内の警察権、司法権を握る重要な役職となる。鎌倉幕府が開かれると、六波羅探題がおかれたため、権限はそちらに移譲され検非違使は有名無実となる。
ちなみに検非違使というと後白河法皇が一の谷の合戦で勝利した直後の源義経を任命し、それが兄・頼朝の怒りを買ったという話が有名だが、実はその後に義経は頼朝の斡旋で妻を娶ったり、源氏にとっては特別な意味を持つ伊予守への就任も用意されていたりと、良好といえる仲だった。
ひるがえって地方は治安を守る軍隊が存在しなかったため(奥州蝦夷の最前線は例外)、荘園領主や、違法な開墾地の領主たちは自衛するしかなく、これが武士の誕生につながっていく。
百人一首の選定をしたとされる藤原定家とこの元良親王との間にはこんなエピソードがある。
鎌倉時代に入り、承久の乱に敗れた後鳥羽院(82代)は配流先の隠岐でも歌道には専念しており、ある時『時代不同歌合』という一種のアンソロジーを作った。内容は柿本人麻呂から自分の時代までの歌人から100人を選出し、1人あたり三首の歌を選んで歌合形式で並べた。歌合というのは歌道の団体戦で、両チームから1名づつが歌を詠んで、その優劣を競う競技である。この『時代不同歌合』は後鳥羽の空想の中の話なので、タイトルどおり時代を超えた対決が実現してるわけだが、定家の対戦相手がこの元良親王だった。
定家もこの本を読んだらしく、自分が元良親王とマッチングされたことに不満だったらしい。
わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
陽成院の息子。
ただし生まれたのは陽成が退位した後。
プレイボーイとして名をはせており、特に宇多上皇の妃(御息所)である藤原褒子との恋愛が有名で、この歌も褒子にあてた歌。
実は褒子は当初、その父である関白・藤原時平が当時の天皇であった醍醐(60代)に入内させようとしたのだが、その美しさを見初めた宇多上皇が自分の妃にしてしまったという話がある。
宇多は元々臣籍降下しており、陽成に仕えていたこともあるため、即位したあと陽成に散々嫌がらせをされる。
また、宇多は菅原道真に目をつけ、官位をあげて藤原時平の対抗馬にしようとしたが、これが後の讒言につながる。
歴史的には何の役割も果たさなかった元良親王だが、兵部卿に任官されている。この役職は軍政全般をつかさどる仕事なのだが、桓武天皇の時に正規軍を廃止してしまったため、実質的には名誉職に近い。そうすると治安を守る人がいなくなるため、都に限っては検非違使という役職が作られ、時代が下るとその権能も拡大、平安末期には都内の警察権、司法権を握る重要な役職となる。鎌倉幕府が開かれると、六波羅探題がおかれたため、権限はそちらに移譲され検非違使は有名無実となる。
ちなみに検非違使というと後白河法皇が一の谷の合戦で勝利した直後の源義経を任命し、それが兄・頼朝の怒りを買ったという話が有名だが、実はその後に義経は頼朝の斡旋で妻を娶ったり、源氏にとっては特別な意味を持つ伊予守への就任も用意されていたりと、良好といえる仲だった。
ひるがえって地方は治安を守る軍隊が存在しなかったため(奥州蝦夷の最前線は例外)、荘園領主や、違法な開墾地の領主たちは自衛するしかなく、これが武士の誕生につながっていく。
百人一首の選定をしたとされる藤原定家とこの元良親王との間にはこんなエピソードがある。
鎌倉時代に入り、承久の乱に敗れた後鳥羽院(82代)は配流先の隠岐でも歌道には専念しており、ある時『時代不同歌合』という一種のアンソロジーを作った。内容は柿本人麻呂から自分の時代までの歌人から100人を選出し、1人あたり三首の歌を選んで歌合形式で並べた。歌合というのは歌道の団体戦で、両チームから1名づつが歌を詠んで、その優劣を競う競技である。この『時代不同歌合』は後鳥羽の空想の中の話なので、タイトルどおり時代を超えた対決が実現してるわけだが、定家の対戦相手がこの元良親王だった。
定家もこの本を読んだらしく、自分が元良親王とマッチングされたことに不満だったらしい。