夏から傾注していた翻訳がようやくわたしの手を離れた。
それをまつようにして、東京は青山にある東京ドイツ文化センターヘ出かけた。
日独交流150周年メイン企画「未来のエネルギー」で上映される映画をみるためだ。
東京ドイツ文化センターがどこにあるかといえば
東京メトロ青山1丁目駅のA4番出口をでて
カナダ大使館と草月会館のあいだの道を行くと、左手に、わりとすぐ。
事前にこのブログで皆さまにもご案内させていただきたかったところなのだけれど
いかんせんわたし自身も直前のお知らせで急きょ出かけることにしたため、叶わなかった。
事後報告になってしまったけれど、上映三作品(いずれも日本語字幕つき)を以下にご紹介。
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監督:フオルカー・ザッテル ドイツ、2010年、35mm、102分
ザッテル監督の同作品は、原子力発電所の権力機構の背後をかいま見せてくれる。
まるでフィクションのような職場風景、無菌状態のコントロールルームや銀色 の防護服をまとって
この世で最も危険な物質を扱う従業員たちの姿が映し出される。
こういった原発の現場の日常を、善し悪しの評価は抜きにカメラは追う。
公式サイト:http://www.imageforum.co.jp/control/
監督:カール-A. フェヒナー ドイツ、2010年、DVD、86分
フェヒナー監督のこの作品は、再生可能なエネルギーの時代への出発を記念する作品だ。
クリーンで持続可能な脱化石燃料の長所を100%生かした国際的なプロジェクトと
新しい経営モデルが続々と紹介される。2010年、ドイツ国内外で上映された同作品は、
各地で大反響を呼び、この年のドキュメンタリー映画で最も多くの観客数をドイツで記録した。
予告編はこちらから:http://www.youtube.com/watch?v=Te1vuoOVx7s
監督:ヨアヒム・チルナー ドイツ、2005-2010年、DVD、108分
チルナー監督の「イェロー・ケーキ ― クリーンなエネルギーという嘘」というこの作品は、
これまでのウラン採掘の65年の歴史に焦点を当てる。そこにはプロパガンダあり、間違った情報あり、
そ して秘密あり。ウラン採掘がもたらした環境汚染や健康被害の問題を追うカメラは、
ナミビア、オーストラリア、カナダへと時代すらさかのぼって行く。
予告編はこちらから:http://www.youtube.com/watch?v=_FBXyvMopcI
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本当はぜんぶみたかったけれど、時間の都合で今回わたし自身は
「イエロー・ケーキ」しか鑑賞できなかった。
これは観る価値あり!…というより「必見」。できればNHKかなにかで全国放映してほしいくらい。
原発は「トイレなきマンション」と言われ続けてきたし、
それを問題視することはいくらしてもまだ足りないくらいとおもうけれど、
「とはいえ、やっぱそれ以前の問題だよね…」と思わず唸ってしまう作品だった。
ウラン核燃料製造をめぐるロードムービーとでも呼んだらいいだろうか。
それをめぐり、ドイツ・ナミビア・オーストラリア(アボリジニ)・カナダと各地で様々な人が映しだされ、
安易な分析を寄せつけない、人間たちの複雑かつ重層的で、明示的/暗示的な声に圧倒された。
誤解を恐れずにいうなら、
この国に充満する言葉は、これだけの苦悩を経てもなお、なんだか上滑りしている。
少なくともわたしにはそう感じられてしまう。
昨夜も、数年来お願いしてきた福島の米農家さんからの手紙を読んで絶句したばかり。
これ以上の苦悩なんかごめんだと、ほんとうは言いたい、それでも、
現代日本でいきることにまつわる苦悩は底が知れないのかもとも思う。
三作品はいずれも日本で劇場公開がきまったという。わたしからもお勧めしたい。